新型コロナウイルスの患者などへの支援について、厚生労働省はこれまで治療薬の公費負担など一部で継続していた支援策を今月末(3月)で終了することを正式に決めたと発表しました。
支援策のうちコロナ治療薬については、これまで自己負担額は最大9000円で処方されていました。しかし、4月からはより高額の自己負担が求められます。
例えば、治療薬の「ゾコーバ」が5日間処方された場合、薬の価格がおよそ5万2000円のため、医療費の窓口負担が3割の人は、およそ1万5500円を自己負担することになります。
新型コロナウイルスは感染症法上の位置づけが、去年(2023年)5月に「5類」になり、厚生労働省は、その後、患者や医療機関への財政支援を段階的に縮小し、ことし4月からは季節性インフルエンザと同様の対応とする方針を示していました。
厚生労働省は、感染状況などを踏まえ、予定通りに支援策を今月末(まつ)ですべて終了することを正式に決めたと発表しました。きょう(5日)自治体にも通知したということです。
支援策のうちコロナ治療薬については、これまで自己負担額は最大9000円で処方されていましたが、来月(4月)からはより高額の自己負担が求められます。
例えば、治療薬の「ゾコーバ」が5日間処方された場合、薬の価格がおよそ5万2000円のため、医療費の窓口負担が3割の人は、およそ1万5500円を自己負担することになります。
このほか、医療機関が新型コロナの入院患者の受け入れに備えて病床を空けた場合に空床補償として支払ってきた「病床確保料」や、入院医療費の特例的な補助などについても今月末で終了されます。
これで法律上の「5類」に位置づけられて以降も続けられた特例の支援は無くなり、来月から新型コロナは通常の医療体制での対応に完全に移行されます。
武見厚生労働大臣は「現在の感染状況などを踏まえ、予定通り措置を終了することにした。引き続き丁寧な情報発信に努めていきたい」としています。
コロナの診療にあたる地域のクリニックからは、自己負担額が上がると治療薬を使わない患者が増え、重症化や後遺症のリスクが高まることを懸念する声が聞かれました。
東京・渋谷区にある「みいクリニック」では、発熱外来を設けて新型コロナの疑いのある人の検査や診察を続けています。クリニックではこの冬、新型コロナとインフルエンザの同時流行もあり、多い日は発熱外来におよそ50人の患者が訪れ、1日に5人程度が新型コロナと診断されていたということです。
2月下旬ごろからは、新型コロナの患者数は減少傾向になっているということです。
一方で、懸念しているのが治療薬の処方を希望する患者の割合が減少していることだといいます。
治療薬は、去年10月にコロナの支援策が見直される前までは年齢などにかかわらず無料で処方されていましたが、10月以降は最大で9000円の自己負担が求められるようになりました。
クリニックでは、重症化リスクの高い患者には新型コロナの治療薬を処方していて、重症化リスクが低い若い世代に対しても、治療薬を使うことで後遺症が発症するリスクが抑えられるというデータもあることから、服用を提案しています。
10月までは7割程度の患者が使用を希望していたということですが、自己負担が求められるようになるとその割合はおよそ半数未満まで減少したということです。
さらに来月(4月)からは自己負担額が上がり、高い人で1万円台から2万円台の負担が求められることから、処方を希望する人がさらに減り、重症化のリスクや、後遺症に悩まされる人が増える恐れがあると懸念しているということです。
みいクリニックの宮田俊男理事長
「長引く咳や倦怠感などの後遺症の症状を訴える患者が多いほか、重症化リスクの高い高齢者の感染も確認されていてコロナが恐ろしい感染症であることには変わりない。自己負担額が増えると治療薬の利用希望者が減ることが予想されるが、患者に接する医師として薬の効果やメリットを丁寧に説明して患者に納得してもらった上で判断してもらえるようにしたい」
政府の委員として新型コロナウイルス対策に当たってきた川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「新型コロナが登場した当初は未知のウイルスの情報を得るとともに感染を広げないため、重症者や死者を出さないために検査や治療代が公費負担となっていたが、この4年で治療法や感染対策が確立してきた。医療者としては、患者の費用負担は少ない方がいいが、治療費がかかる病気がほかにもある中で、コロナの診療費だけを国が負担し続けるのは難しく、特例的な公費負担の終了は、やむを得ない」と話しました。
その上で、次のように指摘しました。
岡部信彦 所長
「今はオミクロン株が主流となり当初よりも重症化しにくくなっているが今後、変異によって強毒なウイルスが出現する可能性もある。その場合は、公費負担を再開するなど、柔軟に制度を運用していく必要がある。変異ウイルスが国内で発生していないか、丁寧に監視することも重要だ」
さらに「新型コロナが医療費上、通常の病気と見なされるようになったとはいえ、インフルエンザと比べると、重症化する人の割合は高く、引き続き注意すべき感染症であることには変わりない。なるべく感染しないよう、手洗いや人混みでのマスクの着用など基本的な感染対策は続けて欲しい」と話していました。
来月(4月)以降、これまで全額公費負担だった新型コロナワクチンの接種は、原則費用の一部自己負担を求める「定期接種」で行われます。
これについて、ワクチンに関係する学会などで作る団体、予防接種推進専門協議会は、先月(2月)考え方を示し、ワクチンによって重症化や感染した後の後遺症を抑えられるなどとして、「XBB.1.5」に対応したワクチンの接種を受けていない人は、なるべく早く接種を受けることを強く推奨するとしています。