【4月1日更新】
「PFAS」は、有機フッ素化合物の総称で、このうち有害性が指摘される「PFOS」と「PFOA」は各地の河川や水道水で高い濃度で検出されるケースが相次いでいることから、国は水質について1リットルあたり50ナノグラムという暫定的な目標値を定めています。「PFAS」の東京都内全域を対象にした都の地下水の調査が完了し、全体のおよそ3分の1にあたる21の自治体で、国の暫定の目標値を上回る値が検出されていたことがわかりました。全国の状況とあわせてまとめました。
都は、令和3年度から、「PFOS」や「PFOA」が地下水にどの程度含まれているか島しょ部を除く都内全域で調査を行ってきましたが、当初の予定を1年前倒しして、今月(3月)調査を終えました。
関係者によりますと、これまでの調査の結果、都内のすべての自治体のおよそ3分の1にあたる21の自治体で、国の暫定の目標値を上回る値が検出されたということです。昨年度までの調査では、目標値を上回る値が検出されたのは17自治体でしたが、新たに、足立区、台東区、八王子市、小平市の4つの自治体で検出されたということです。
国の暫定目標値を超える値を検出(昨年度までの調査)
文京区、大田区、渋谷区、練馬区、世田谷区、立川市、武蔵野市、青梅市、府中市、調布市、小金井市、日野市、国分寺市、国立市、狛江市、西東京市、武蔵村山市
都は、都内の広い範囲で検出されているとして、新年度も同じ規模の調査を行って実態を把握し今後の対策を検討するとしています。
こうした中、都内の自治体では、独自の対策に乗り出しているところもあります。武蔵野市では2023年6月、市内の小中学校18校の井戸で「PFAS」の値を調べたところ、このうち7か所から国の暫定的な目標値を上回る値が検出されました。
18校は、災害時の避難所となっていて、井戸の水を飲み水として利用することも想定されていることから、市は「PFAS」を取り除く浄水機を用意しました。災害が起きた際には、井戸水をためたタンクにポンプを入れて浄化するということです。
武蔵野市防災課 椙田大翔主事
「水質検査をしていても、井戸水を実際に使うときにはPFASがどのような状態になるのかは、正直わからないところもある。浄水機を導入したことで、みなさんが安心して水を飲めるようになった」
このほか、立川市や調布市は、都の調査とは別に、独自に地下水などの調査を行っていて、結果をホームページで公表しています。
京都大学大学院 原田浩二准教授
「都内でも発生源が複数、存在しうることが分かった。PFOSやPFOAは、これまで、泡消火剤や半導体の製造、フッ素樹脂の製造などのため使われてきたこともあり、使用されていた場所で、何らかの流出が起こったのではないか。地下水から検出された場所のまわりに、発生源がどのようなものがあるかを調べ、さらにその周辺の場所にも調査を広げることが望まれる。また、地下水の調査のみではなく、周辺の事業者などの協力を得てPFASなどの使用履歴を確認していくことも必要だ。各自治体と連携し、実態の把握と対策に向けた取り組みを進めていくことが重要だ」
一方、原田准教授は、都内の水道水からは、高い濃度は検出されていないとしたうえで、「井戸から地下水を使用する人は注意が必要で、自治体から周知してほしい」と話していました。
PFASについて環境省は令和4年度の調査の結果を公表しました。調査は38都道府県の河川や地下水など1258地点で行われ、このうち16都府県の111地点で1リットルあたりのPFASの濃度が50ナノグラムとする国の値を超えていたことが分かりました。
環境省によりますと、111地点のうち、PFASの排出源が特定できているのは、過去にPFASを取り扱っていた大分市の工場敷地内の井戸の2地点のみで、残りの109地点は不明だということです。
また、国の値を超えた河川で水道水が取水されている地点はないということですが、値を超えた井戸水については摂取しないよう住民への呼びかけを自治体に求めています。
「PFAS」をめぐっては、2023年11月にはWHO=世界保健機関のがんの研究機関が、有害性が指摘される「PFOA」と「PFOS」の2種類について、発がん性があるなどと評価していますが、国はこれまで、科学的な知見が十分ではなく、健康への明確な影響は不明としてきました。
しかし、国内での「PFAS」に対する不安が高まっていることから、環境省は健康への影響を明らかにするため新年度から大学など3つのグループに委託して研究を本格的に始めます。