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  • 2024年4月19日

日銀マイナス金利政策解除 住宅ローン変動型や固定型どうなる 預金 企業の資金調達は

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【4月19日更新】
日銀は「マイナス金利政策」を解除し、金利を引き上げることを決めました。日銀の政策転換で、生活にプラスに働くのが預金の金利が上がることですが、マイナス面として見込まれるのが、住宅ローンの金利の上昇です。また、企業にとってはお金を借りる際の金利が上昇することが見込まれます。その後の市場や住宅ローン金利の動向に加え、暮らしや企業の活動にどのような影響が考えられるのか、専門家や日銀の分析をまとめました。

マイナス金利政策は2016年から

「マイナス金利政策」は、黒田総裁時代の2016年1月、金融緩和策をより強化するため、日銀の歴史上、初めて導入することを決めました。日銀が金融機関から預かる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利をつけることで、預金が積み上がると損をする環境を生み出し、金融機関が世の中にお金を回すよう促す狙いがありました。

導入後、企業への貸し出し金利や住宅ローンの金利は大幅に低下しましたが、物価の上昇にはつながらず、金融機関の収益が圧迫されたり、年金基金の運用に悪影響が出たりするといった副作用も表面化しました。

そして日銀は、3月19日まで開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決めました。

コール市場 約8年ぶりに金利がプラスに

日銀は、金融機関から預かる当座預金の一部に適用していたマイナスの金利を21日からプラスの水準に変更し、金融機関どうしが日々の資金をやり取りする短期市場の金利「無担保コールレート」を0%から0.1%程度に促すとしています。

これを受けて、「コール市場」の取り引きを仲介する会社には21日午前中からプラスでの金利の注文が入りプラスの金利での取り引きが相次いで成立しました。

コール市場では、2016年のマイナス金利政策の導入以降、金利の平均がほぼマイナスで推移していましたが、日銀が発表した21日の金利の平均は0.074%で、およそ8年ぶりにプラスに転じました。

金利上昇を懸念 金属加工会社

中小企業などでは、金融機関からの借入金利が上がることを懸念する声が出ています。東京・大田区にある従業員15人の金属加工会社では、自動車や半導体装置の部品の加工を手がけていて技術の向上などにつなげようと設備投資に力を入れてきました。

ただ、マイナス金利政策などの解除を受けて今後、金融機関からの借入金利が上がることを懸念しています。

「極東精機製作所」鈴木亮介社長
「ライバル関係にある他社と差をつける必要があり付加価値のある設備を導入することは欠かせない。ただ、今後、借入金利が上がった場合は状況によっては設備投資をためらう可能性があると考えています」

追加投資に慎重 グランピング施設運営会社

石岡市に本社を置くグランピング施設を運営する会社は地元の金融機関から5000万円の融資を受け、去年5月に筑波山の中腹に施設をオープンしました。会社では、子どもの遊び場やサウナなどの施設を整備して事業を拡大することを検討しています。

一方、日銀の金融緩和政策の変更で金利が上昇する可能性があるのではないかと、追加で融資を受けて、投資をすることには慎重になっています。

施設運営会社 常務チメッツェレン・アマルゾルさん
「率直にいうと金利はこのまま上がって欲しくない。今後、金利が上がるとしても中小企業の声も聞いて根拠のある判断をしてほしい」

住宅ローン金利への影響も

また、マイナス面として見込まれるのが、住宅ローンの金利の上昇です。このうち金融機関が長期金利の水準などを参考に決める固定型の金利は、長期金利の上昇傾向を受けてすでに引き上げる動きが出ています。

4月17日の債券市場では日本国債を売る動きが強まりました。国債は売られると価格が下がって金利が上昇するという関係にあり、長期金利は一時、0.885%まで上昇し、去年11月以来およそ5か月ぶりの水準となりました。

一方、住宅ローン利用者の7割以上が選択している変動型は、金融機関が企業向けに貸し出す際の基準金利、「短期プライムレート」を参考に決められていますが、主な銀行の短期プライムレートは2009年1月13日以降、一度も変わっていません。

その短期プライムレートに影響を与えるのが短期の市場金利で、今回、日銀が政策金利を引き上げたことで、金融機関は、変動型の住宅ローン金利を引き上げるかどうか、今後、判断することになります。

マンション購入 変動型38年を予定の人は

東京・渋谷区にあるマンションのモデルルームに訪れた2023年12月に新築マンションの購入を決めた40代の会社員の男性は都内のマンションをおよそ6000万円で購入してこの秋から入居予定で、住宅ローンは返済期間38年の変動型を予定しています。

マンション購入の男性
「『利上げする』と言われていたのでやっぱりかという思いです。住宅ローン金利がすぐに上がっていくわけではないと思いますが、これから上昇していく流れは変わらないのかなと受け止めています。金利の動向は、自分ではどうしようもないのですが、今後住宅ローンへの影響を注視しながら、状況によっては借り換えを行うなどできる範囲の対応をしていきたいです」

不動産会社“心配取り除けるような提案も”

男性がマンションを購入した不動産会社は、現在は購入者のおよそ9割が金利の低さから変動型の住宅ローンを選んでいるということですが、今後、契約時に金利の上昇を心配する声が増えるとみています。

「オープンハウス」 赤塚晴大営業本部部長
「固定の方が金利はまだ高いので、変動型を選ぶ傾向は今後も変わらないと思いますが固定と変動を組み合わせた住宅ローンなどもあるので金利の上昇を心配する方には、心配を取り除けるような提案をしていきたい」

大手5行 4月の変動型住宅ローンの金利

大手5行は3月29日、4月、適用する金利を発表しました。それによりますと、最も優遇する場合で、三菱UFJ銀行が0.345%、三井住友銀行が0.475%、みずほ銀行が0.375%、りそな銀行が0.340%と、いずれも現在の金利を据え置きます。
また、三井住友信託銀行は現在の0.405%を0.330%に引き下げます。

据え置きや引き下げの理由について5行は、日銀の短期金利の引き上げ幅が限定的だったためだとしています。

市場金利連動 変動金利引き上げも

ネット銀行では、「楽天銀行」が4月適用する金利を0.027ポイント引き上げました。

大手と楽天銀行では変動金利を決める際に参考にする基準の金利が違っていて、大手銀行は、「短期プライムレート」というそれぞれの銀行が独自に決める金利と連動するようにしている一方で、楽天銀行は、市場の金利と連動する仕組みを取っています。

具体的には「TIBOR」という東京市場の短期金利を集計した指標で、これが急上昇したため変動金利も影響を受けたとみられます。

マイナス金利政策の解除 影響が出る分野

金融アナリストの大槻奈那さんによりますと、影響が出る分野として、預金金利、住宅ローン、円相場、企業の資金調達の4つを指摘しています。

 【預金金利】

かつて銀行は金利が上下する局面で少し状況を見ながら時間差を置いて対応を決めることが一般的だったが、今回は、もしかしたら比較的、早く、動くかもしれない。人口動態の変化で特に地方の金融機関では預金が減っているところもある。政策金利が変化した場合には比較的早い段階で政策金利に近い水準まで預金金利を上げる金融機関があっても不思議ではない。

 【円相場 外国為替市場】

為替レートは相手国と自国との金利差で動くことが多いため、もし日本の金利がさらに上がっていくと市場が思えば円を買う動きが強くなり円高に振れる可能性がある。円高が進めば輸入品の物価が下がりやすくなるが、保有する外貨建ての資産が目減りすることも考えられる。

 【住宅ローンの金利】

〇変動型金利
日銀が政策金利を引き上げてもすぐには大手の金融機関などが住宅ローンの変動型の金利を上げるには至らないと思う。政策金利が0%からもっと上がる段階になると、変動型の金利も上がるのではないか。

〇長期金利の影響を受けやすい固定型金利
日銀がマイナス金利の解除とともにイールドカーブ・コントロールと呼ばれる枠組みに手を加えた場合、長期金利が上昇するかもしれない。そうなるとこれから固定型を借りようとする人の金利は上がるのではないか。自身の住宅ローンが何に連動するのか、特に変動型の金利で借りている方々は契約書をもう一度見てみて、どういう場合に金利が上がるのかを確認してほしい。

【企業の資金調達】

企業の資金調達については「企業の借入金利は政策金利に敏感に連動するため仮に政策金利が0.1%上昇すれば借入金利も変動型で借りている企業は金利が0.1%かそれ以上に上がる可能性がある」と話しています。また、長期金利が上昇した場合には固定型の借入金利も上昇する可能性があると見ています。

その上で、大槻さんは「借入金利が上がると、企業の投資活動に対しマイナスの影響が出るおそれがあるが、業態を転換することやイノベーションを起こすことで利益率を高めていこうという動機も出てくる。金利がマイナスという異常な状態から正常化していくということは企業のあり方も変わっていく第1歩なのではないかと思う」と話していました。

利息収入と住宅ローン負担 日銀の分析

日銀は半年に1度、金融分野の課題などを「金融システムレポート」としてまとめています。4月18日に公表した報告書では、3月にマイナス金利を解除したことを受けて、金利が上昇した場合の影響について分析し試算しました。

このうち家計では、短期金利が1%上昇した場合、▼住宅ローンを組んでいない全体の7割余りの世帯では、可処分所得のうち預金の利息による収入が中央値で0.7%増えるとしています。一方で、▼住宅ローンを組んでいるおよそ2割の世帯では、可処分所得のうち、利子などの支払い負担が中央値で1.1%増加するということです。

追加の利上げは急がず

世界的にも異例な対応が続いてきた日本の金融政策は正常化に向けて大きく転換することになります。ただ、マイナス金利政策を解除しても追加の利上げは急がず当面は緩和的な環境を続ける方針です。

日銀は、賃金と物価の好循環が見通せるかを慎重に見極めた上で2007年以来、17年ぶりとなる利上げに踏み切りましたが、個人消費の弱さも指摘される中、今後、日銀の想定通りに物価や景気が推移していくかが焦点となります。

“金融政策の出口戦略 課題は山積み”

マイナス金利政策が解除されたことについて、30年余りにわたり日銀の金融政策を分析している東短リサーチの加藤出チーフエコノミストに聞きました。

東短リサーチ 加藤出チーフエコノミスト
「マイナス金利政策を解除したといっても事実上ゼロ金利だ。若干のプラス金利であって、金利のある世界に戻ってきたと言われているが、まだまだ超緩和的な状況だ。これだけ超低金利を続けると、変動金利型の住宅ローンの比率が非常に高いとか、政府も超低金利の継続を暗黙の前提にして国債を発行してきてしまったとか、どうしてもそれを前提の経済活動が累積している。その辺りをいかにバランスを取りながら長い金融政策の出口戦略を進めていくか、課題は山積みだ」

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