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インボイス制度と消費税 小規模事業者どうする 延期や中止求める声も

  • 2023年9月5日

「インボイス制度」消費税の税額控除の新しい方式で10月1日に始まります。現在、免税となっている小規模事業者も、インボイスを利用すると新たに納税の義務が生じますが、その場合の負担軽減措置も設けられています。制度の仕組みのほか、中止や延期を求める動きなどについてまとめました。

インボイス制度 中止・延期を求める動きも

「インボイス制度」をめぐり、フリーランスや小規模事業者などで作る団体は9月4日、財務省などに対し、制度の中止や延期を求める36万人分の署名を提出しました。

「インボイス」
・業者どうしの取り引きで発行される請求書やレシート
・事業者が消費税の控除や還付受けるにはインボイスの発行を受けること

年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者が、インボイスを発行する場合、消費税納付の義務が新たに発生することから、団体は、「インボイス制度は事実上の増税にあたる」と訴えています。

提出に先立ち、団体は都内で会見を開き、「廃業を考えている事業者もいる。制度は自由な商取引をゆがめ、新規参入を阻むものだ」などと訴えました。

10月制度開始 小規模事業者の選択は

インボイス制度は、食品など一部の品目で、消費税の税率を8%に据え置く軽減税率が導入されたことを受け、納税額を正確に把握するために10月1日から始まります。制度への理解を深めてもらうための説明会が、各地で開かれています。
インボイス制度に登録するかどうかは、事業者の判断に委ねられていますが、制度開始を前に小規模事業者は難しい選択を迫られています。

消費税免除から納付 負担軽減措置も

事業者は、商品の販売やサービスの提供時に受け取った消費税と、仕入れなどで取引先に払った消費税との差額を国に納めていますが、年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者については、これらを国に納付することが免除されています。

しかし新たな制度のもと、10月1日以降にインボイスを発行する事業者は、年間の売り上げが1000万円以下であっても、消費税の納付が求められることになります。

登録した小規模事業者を対象に制度開始から3年間は、納税額を売り上げで受け取った消費税の一律2割とするなどといった負担軽減措置が設けられています。

インボイス発行せず 取り引き先が…

一方、事業者が引き続き納付の免除を受ける場合は、インボイスを発行することはできません。
インボイスを発行しない場合、制度上、取り引きする相手が、その事業者に対して支払った消費税分の控除や還付を受けられなくなることから、契約の見直しなどにつながる可能性があります。

インボイス制度に登録していない事業者が、取引相手から一方的に価格の引き下げを求められるケースなどがあり、公正取引委員会は、こうした対応が独占禁止法違反などにつながるおそれがあるとして、ことし7月末までに18件の注意を行ったということです。

“理解が進んでいるとはまだ言えない”

国税庁の元職員で税務行政などに詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授に「インボイス制度」をめぐる状況について聞きました。

酒井克彦教授
「現状では、インボイス制度の意義や目的、影響などについて理解が進んでいるとはまだ言えない。公正取引委員会の注意事例は、取り引き相手への不当なプレッシャーが下請法や独占禁止法などに抵触する可能性があることすら理解されていないことを示している。国は制度の開始以降も引き続き周知を図るなど、適正な運用に向けた努力を続ける必要がある」

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