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卵高騰いつまで続く 卵不足と飼料価格高騰が要因で高値長期化か

5月平均価格350円 4か月連続最高値
  • 2023年5月31日

物価の優等生とも呼ばれている卵の価格が高い状態が続いています。

卵の卸売価格の目安となる「JA全農たまご」の5月の平均価格は350円で、去年の同じ月と比べて131円も値上がりしました。飼料価格の高騰や鳥インフルエンザの影響による卵の出荷数の減少で4か月連続の最高値となりました。

卵の流通に詳しい専門家は、卵の価格について高値の状態が長期化する見通しを示しています。

5月平均価格350円 4か月連続の最高値

卵の卸売価格の目安となる「JA全農たまご」の東京地区でのMサイズ1キロあたりの5月の平均価格は350円で、去年の同じ月と比べて131円、率にして59.8%値上がりしました。
価格は統計が公表されている1993年以降最も高くなった4月から横ばいとなり、4か月連続の最高値となりました。

農林水産省によりますと、例年、卵の価格はクリスマスケーキやおせち料理向けの需要が多い12月をピークに下がる傾向にあります。

ただ、今シーズンはロシアによるウクライナ侵攻の影響で、とうもろこしなどの飼料価格の高騰が続いています。

さらに年明け以降も鳥インフルエンザの発生が相次ぎ、今シーズン処分された、卵をとるためのニワトリは1600万羽を超えて過去最多となり、卵の出荷数が減っていることが高値が続く要因だとしています。

農林水産省によりますと、国内の養鶏場では4月8日以降、鳥インフルエンザの発生は確認されていません。また一部の養鶏業者は出荷を再開していますが、農林水産省は卵の供給が回復するまでには1年ほどかかる可能性があるとしています。

卵不足…日本だけではない

卵の供給不足は日本だけにとどまらず、世界各国に広がっています。
その原因となった鳥インフルエンザの感染は、2022年7月以降、北米やヨーロッパ、それにロシアやインドなど、世界の広い地域で確認されています。とりまとめた農林水産省は、「これまでにない規模の感染状況だ」としています。

注目は…南米 ブラジル

こうしたなか、注目を集めているのが南米・ブラジルです。
世界有数のニワトリの生産国ですが、これまでのところ、ニワトリへの鳥インフルエンザの感染は確認されていません。

このため、日本の企業の間では、ブラジルからの卵の輸入を増やす動きが相次いでいます。

食品大手のキユーピーは、近くブラジルから卵を輸入することを決め、パンや菓子などの原料となる業務用の液卵の一部に使うことにしています。

また、業務用の液卵の専業メーカーで最大手のイフジ産業は、国内だけで原料を調達するには限界があるとして、原料の8%程度をブラジル産に切り替える計画です。

財務省の貿易統計によりますと、パンや菓子などに加工される殻付きの卵のブラジルから日本への輸入量は、感染拡大前の去年4月はわずか38キロでしたが、ことし4月は、406トンあまりと大幅に増えています。

ただ、世界各国からの引き合いもあって、ブラジル産の卵の卸売価格は上昇しています。

卵の流通に詳しい専門家で「日本養鶏協会」のエグゼクティブアドバイザーを務める東京農業大学の元教授、信岡誠治さんによりますと、ことし4月のブラジル産の卵の卸売価格は、日本円で1キロあたりおよそ420円と、去年の同じ月と比べておよそ2倍に上昇しています。

この価格は、国産の卵と比べて2割ほど高い価格です。さらに、ブラジルでは、5月になって鳥インフルエンザの野鳥への感染が新たに確認されました。

今後、仮に、ニワトリへの感染が確認された場合は、輸入への影響も懸念されます。国産の卵の供給不足をブラジルからの輸入で補う手段がどこまで有効になるかは不透明となっています。

今後の見通し“高値の状態が長期化”

今後の卵の需給や価格の見通しについて、信岡誠治さんは、供給不足と高値の状態が長期化する見通しを示しています。

信岡さんは、鳥インフルエンザの世界的な感染について深刻に捉えていて、感染の広がりが長期化する可能性を指摘しました。

「日本養鶏協会」エグゼクティブアドバイザー 東京農業大学 元教授 信岡誠治さん
アメリカやヨーロッパだけですでに1億羽を超えるニワトリの処分を行っていて、鳥インフルエンザの発生が止まらない状況だ。渡り鳥が飛来する時期が過ぎても、国内にいる野鳥がウイルスを持っている状況が続くとみている。ウィズコロナではないが、どのようにしてウイルスと共存していくのか、深刻に捉えている。

また、卵の需給や価格の見通しについては、今後も高値の状況が続くと考えています。

信岡さん
処分したニワトリの供給が回復するには1年近くかかることに加えて、海外から輸入したくても十分にはできない厳しい状況が続いている。エサやエネルギーのコストが下がるめども立っていないため、以前のように1パック100円のような特売にはならず、生産者もそうした販売に耐えられる体力はない。今後も1パック300円程度の高値が続くとみている。

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