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H3ロケット打ち上げ失敗 原因や今後は? “宇宙のまち”など各地の反応

  • 2023年3月8日

日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機が発射後、2段目のエンジンに着火せず、打ち上げに失敗しました。
JAXA=宇宙航空研究開発機構は、着火の信号を送る一連の動作に問題がなかったかを中心に、飛行時のデータを分析するなどして、詳しい原因を調べる方針です。
「宇宙のまち」を掲げるさいたま市など、各地の反応をまとめました。

H3ロケット打ち上げ失敗

日本の新たな主力ロケット「H3」初号機は、7日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。

初号機は、計画どおり飛行していましたが、1段目と2段目のロケット分離後2段目のエンジンが着火せず、搭載した地球観測衛星「だいち3号」を予定の軌道に投入できる見込みがないとして、発射からおよそ14分後にロケットを破壊する信号を送り、打ち上げは失敗しました。

飛行時のデータ分析し原因調査

JAXAによりますと、2段目のエンジンは、運用中のロケット「H2A」でも使われていますが「H3」用に改良され、着火の信号を送る機器などが従来と異なるということです。JAXAは、着火の信号を送る一連の動作に問題がなかったかを中心に、飛行時のデータを分析するなどして詳しい原因を調べる方針です。

「H3」は、国家プロジェクトとして9年前から開発が始まり、2度の年度をまたぐ延期を経て2月、打ち上げに臨みましたが、発射直前、ロケットの1段目の装置で異常が発生し、打ち上げが中止されました。

JAXA 山川宏理事長(7日の会見)
「組織の長として重く受け止めている。われわれの責務として透明性を持って速やかに原因を徹底究明し、対策を打つことが最優先の課題だ」

「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、パワー増強とコストダウンの両立を目指す新しい大型ロケットとして開発が進められていますが、今後の原因究明や対策次第では、日本の宇宙開発が海外から大きく後れをとることが懸念されます。

専門家「信頼性にダメージ」

宇宙開発に詳しい笹川平和財団の角南篤理事長は、「H3」の打ち上げ失敗について「期待が高かっただけに失敗のインパクトが大きい。宇宙やその関連技術は信頼性が一番大切であり、それに対する大きなダメージは避けられない」と指摘しました。

その上で、アメリカなどが人類の宇宙進出の足がかりとして月を探査する「アルテミス計画」など、「H3」の使用が計画されているミッションへの影響については、次のように指摘しました。

笹川平和財団 角南篤理事長
「人工衛星などを宇宙へ運ぶ輸送機の提供が遅れる。宇宙開発はいろいろな産業にとって重要で後れを取ると、日本の産業界や民間利用などに影響が出ると考えられる。年内には『H3』の打ち上げのめどをつけてほしい。

新しい技術を実証する上で失敗は必ずしも珍しいことではないが、失敗の後の対応が最も重要だ。失敗の原因を速やかに解明するとともに、各段階で公開しながら透明性をもって信頼を回復することが重要で時間がかかればかかるほどダメージは大きくなる」

宇宙のまち さいたまでは

いまのさいたま市は、日本人で最多となる5回の宇宙飛行を行い、日本人として初めて宇宙ステーションの「船長」を務めた経験もある宇宙飛行士の若田光一さんの出身地であることから、「宇宙のまち」を掲げています。

若田さんは、ISS=国際宇宙ステーションに滞在していて、2月17日、「H3」の打ち上げが中止されたあと、宇宙からの会見で「ロケット開発はこれまでも多くの困難を乗り越えてきた。今回も必ず国民の期待に応えられると信じている」と話していました。

一方、さいたま市には、若田さんが名誉館長を務める宇宙科学館があり、宇宙服や宇宙船の模型、それに銀河系を解説したパネルのほか、若田さんが実際に着ていた訓練服なども展示されていて、宇宙や科学を学ぶことができます。

この科学館も、子どもたちが宇宙への関心を高めることなどにつながることから、7日の「H3」の初号機の打ち上げが成功することを期待していました。

さいたま市青少年宇宙科学館 安藤紘子主任指導主事
「打ち上げの失敗はショックですが、若田さんも困難を乗り越えることが、次の成功につながると話しているので、今後、ミッションが成功することを祈っています」

部品メーカーは

日本の新たな主力ロケット、「H3」の初号機に使われるナットなどの部品を開発した長野県坂城町の会社からは、7日の打ち上げの失敗について、「残念でたまらない」という声があがる一方、次に向けた意気込みも聞かれました。

長野県坂城町には、振動しても緩みにくい特徴が評価されて「H3」の初号機に使われたナットやワッシャーと呼ばれる部品を開発した金属部品の加工会社があります。

7日は会社の応接室に社長や社員が集まり、インターネットの中継で「H3」の打ち上げを見守り、ロケットが順調に上昇すると一斉に拍手や歓声が沸き起こりました。

しかし、2段目のエンジンの点火が確認できずロケットを爆破する信号を送ったというアナウンスが流れると、一転して社員たち悔しそうな表情を浮かべ、「あそこまで打ち上がったのに残念だ」などといった声が上がっていました。

部品を開発 ヤマザキアクティブ 山崎忠承社長
「打ち上げられたと思い、何とも言えず体が熱くなった。だめになり残念でたまらない。一方で開発した部品が『H3』に使われるとは夢にも思わなかったので、これからも頑張って期待に応えられる物を作りたい」

原因は?今後は?

打ち上げに失敗した原因についてJAXA=宇宙航空研究開発機構は、飛行時のデータを分析した結果、着火するタイミングの前後、機器の一部で電圧などの値に異常があったことを明らかにしました。

8日、文部科学省で開かれた有識者会議でJAXAは、これまでの調査結果を報告。飛行時のデータを分析した結果、2段目のエンジンに機体から着火の信号が送られ、エンジン側の装置でも受信が確認された一方、着火に必要な機器の一部で電圧などの値が異常を示していたことが判明したということです。

JAXAは、着火するタイミングの前後で異常が起きたとみて原因を詳しく調べるともに、対策を講じた上で、できるだけ早く、次の打ち上げを目指す方針です。

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