東京・渋谷の都立第一商業高校は、地域の企業や商店街などと交流を深め、生徒が「生きた教材」を通じてビジネスを学ぶ、より実践的な授業を始めました。
地元“渋谷”を学ぶことで生徒たちは何を身につけていくのか。学校現場の取り組みを取材しました。
(聞き手:山田朋生アナウンサー、取材・撮影:首都圏局/記者 伊津見総一郎)
東京・渋谷区鉢山町の都立第一商業高校は創立100年を超える伝統校で、JR渋谷駅から徒歩で15分ほどのまさに“渋谷の街の中”にあります。
地域に根ざした教育を進める東京都の「地域探究推進校」に指定されているこの学校。
今年度からすべての教科で地元“渋谷”の企業や商店街などから直接、ビジネスを学ぶ授業を始めました。学校では資格や検定を取得して進学や就職を目指すだけでなく、地域とつながりを深めるなかで生徒に成長してほしいと期待しています。
都立第一商業高校 平野篤士校長
「自分たちでその場所を見て問題を捉え、解決するアイデアを1人ひとり考えてもらいたい。自分が持っていた印象と実際の現場の状況の違いが少しずつ見えるようより深く理解してほしい」
授業のなかで、生徒たちは渋谷の企業や商店街の店舗などについてインターネットで調べたり、直接、訪問して話を聞いたりします。
ふだん遊ぶなかでは自分が行きたい店に行って終わりだったけど、より渋谷を知ることができて楽しめそう。
先生だけでなくいろいろな人と話ができて、自分のなかに情報が入ってきやすい。
この日、生徒たちはオンラインを通じて、渋谷区に本社のある大手食品メーカーの担当者から会社の歴史や商品開発の裏側について話を聞きました。
企業で活躍する社会人を相手に、生徒たちはやや緊張した様子で質問していました。
Q.なぜ渋谷に本社があるのですか?
創業当時はいまのようなにぎやかさはなかったが、将来的に若者が集うであろうと思い選択した。若い人が持ってくる文化に触れて吸収することは重要なことだと考えた。
Q.新商品を開発する上で大切にしていることは?
原料の調達や市場の規模、それに販売価格など検討したうえで動きはじめるが、途中で断念することもあればお客様から受け入れてもらえることもある。200円、300円を積み重ねて貴重な売り上げになっていて、期待を裏切らないように常に正直で誠実なかたちで行動している。
そして、授業の最後には人生の先輩からアドバイスも受けました。
企業担当者
「進路に迷い、自分の思い描いていなかった道を進むこともあると思うが、そこには知らない世界が広がっているかもしれない。前向きに捉えて何でも学んでやるという気持ちで、自分の人生を自分で選択し切り開いて歩んでほしい」
ネットで調べた内容より人と対話することでさらに詳しく知ることができた
ほかの会社のことも知りたいと思った。これから疑問が生まれたら自分で調べて将来にいかしたい。
都立第一商業高校 平野篤士校長
「教科書や問題集を使った勉強も大切だが、渋谷の街に直結した『生きた教材』を使う意義は大きい。スマートフォンを使えば簡単に調べられるが、自分の足で調べ頭で考えることで力は伸びる。子どもたちは身につけた技術や知識を自分のためだけではなく、人のために使えるようになってほしい」
第一商業高校によりますと、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、なかなか授業が進まないこともあったということです。来年はさらに企業訪問を重ねるなど地域とのつながりを深め、授業を発展させていきたいとしています。
私たちは、東京・渋谷に根ざしたみなさんの「地域ド密着」の取り組みや課題を取材しています。
渋谷駅前では大規模な再開発が進み、スクランブル交差点やセンター街などには世界中から多様な人々が集まっています。原宿からは常に新しいファッション、文化が生まれています。
ぜひ、みなさん一人ひとりのなかにある「わたしの渋谷」について教えてください。情報やご意見をこちらの「投稿フォーム」よりお寄せください。