現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズ。「お墓」についてです。公営の墓地で、家族や親族以外の人とも同じ場所に納められる「合葬墓」と呼ばれる墓の数が急増していることがわかりました。社会や家族の変化を反映しているのでしょうか。
今回は、NHKが自治体に行ったアンケートの結果と、生前に樹木葬を契約した人の話を詳しくお伝えします。
「人生のしまい方」、「お墓」、みなさんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。
(千葉放送局記者・金子ひとみ)
NHKは、1月から2月にかけて、首都圏の1都3県と、人口10万以上の市のあわせて97の自治体に、公営墓地についてのアンケート調査を行いました。
これらの自治体は52か所の公営墓地を設置していました。
【東京都内 14か所】
▼東京都8(うち1か所は「都立八柱霊園」で所在地は千葉県松戸市)▼八王子市3(うち1か所は、町田市・多摩市・稲城市と合同)▼青梅市1▼府中市1(稲城市と合同)▼日野市1
【神奈川県内 17か所】
▼横浜市7▼川崎市2▼相模原市2▼横須賀市2▼平塚市1▼藤沢市2▼小田原市1
【埼玉県内 7か所】
▼さいたま市5▼川口市1▼新座市1
【千葉県内 14か所】
▼千葉市2▼市川市1▼船橋市2▼木更津市1▼松戸市1▼成田市1▼習志野市1▼市原市2▼八千代市1▼浦安市1▼印西市1(白井市と合同)
これらの自治体の公営墓地で、複数の遺骨を合同で納める合葬墓と呼ばれる墓が、この20年間でどのぐらい増えたかを調べました。
2004年1月時点では、以下の9施設の合葬墓がありました。
【東京都内 2か所】
▼東京都2(多磨霊園合葬埋蔵施設、小平霊園合葬埋蔵施設)
【神奈川県内 4か所】
▼横浜市1(日野公園墓地合葬式納骨施設)▼横須賀市1(横須賀市営公園墓地合葬墓)▼藤沢市2(大庭台墓園墓所立体墓地2か所)
【埼玉県内 1か所】
▼さいたま市1(思い出の里市営霊園合葬式墓地)
【千葉県内 2か所】
▼市川市1(市川市霊園合葬式墓地)▼習志野市1(習志野市海浜霊園合葬式墓地)
20年後の2024年1月時点では、4倍の36施設に上っています。
36施設のうち9施設が樹木葬タイプ、27施設が納骨堂やモニュメントの石の下に共同納骨するタイプの合葬墓でした。
【東京都内 12か所】
▼東京都8(小平霊園合葬埋蔵施設、小平霊園樹林型合葬埋蔵施設、八柱霊園合葬埋蔵施設、多磨霊園樹林型合葬埋蔵施設、多磨霊園合葬埋蔵施設、青山霊園立体埋蔵施設、谷中霊園立体埋蔵施設、染井霊園立体埋蔵施設)▼八王子市1(八王子市営霊園合葬式墓地)▼青梅市1(青梅市墓地公園樹林墓地)▼府中市2(公営稲城・府中メモリアルパーク合葬式墓地、公営稲城・府中メモリアルパーク樹林式墓地)
【神奈川県内 12か所】
▼横浜市4(日野公園墓地合葬式納骨施設、日野こもれび納骨堂合葬式納骨施設、メモリアルグリーン慰霊碑型納骨施設、メモリアルグリーン樹木型納骨施設)▼川崎市1(緑ヶ丘霊園合葬型墓所)▼相模原市2(峰山霊園慰霊碑型合葬式墓所、峰山霊園樹林型合葬式墓所)▼横須賀市2(横須賀市営公園墓地合葬墓、横須賀市営公園墓地期限後合祀型合葬墓)▼藤沢市2(大庭台墓園墓所立体墓地2か所)▼小田原市1(小田原市久野霊園合葬式墓地)
【埼玉県内 2か所】
▼さいたま市2(思い出の里市営霊園合葬式墓地、思い出の里市営霊園樹林型合葬式墓地)
【千葉県内 10か所】
▼千葉市2(桜木霊園合葬墓、平和公園合葬式樹木葬墓地)▼市川市1(市川市霊園合葬式墓地)▼木更津市1(木更津市霊園合葬式墓地)▼習志野市1(習志野市海浜霊園合葬式墓地)▼市原市1(市原市海保墓園合葬墓)▼八千代市1(八千代市営霊園合葬式墓地)▼浦安市2(浦安市墓地公園合葬式墓地、浦安市墓地公園樹林墓地)▼印西市1(印西霊園合葬式墓地)
この20年間で、合葬墓の新設や増設により、埋葬規模はおよそ38万人分増えていました。内訳です。
▼東京都およそ200,000▼八王子市7,522▼青梅市1,020▼府中市6,536▼横浜市35,000▼川崎市20,000▼相模原市10,000▼横須賀市3,150▼藤沢市3,136▼小田原市1,300▼さいたま市16,000▼千葉市42,400▼木更津市1,710▼習志野市8,000▼市原市6,000▼八千代市2,670▼浦安市14,000▼印西市1,980
合葬墓は、家族や親族が入る一般墓と比べて費用の負担が軽く、個人による管理も不要となるのが一般的です。自治体側としても、少ない面積の土地に、より多くの遺骨を納められる利点があるということです。
今後の新設・増設計画についても聞きました。
【新設中・増設中 4自治体】
▼埼玉県新座市(2024年3月ごろ完成予定)▼八千代市(2024年3月ごろ完成予定)▼相模原市(2025年ごろ完成予定)▼横浜市(2027年ごろ完成予定)
【新設・増設予定 3自治体】
▼埼玉県川口市(2027年4月)▼東京都(時期未定)▼藤沢市(時期未定)
【新設・増設を検討中 6自治体】
▼東京都青梅市▼神奈川県横須賀市▼千葉県船橋市▼千葉県木更津市▼千葉県成田市▼千葉県浦安市
千葉県浦安市に40年近く住んでいる玉村芳雄さん(70)は、4年前に、市の設置している樹木葬タイプの合葬墓を契約しました。
選んだ決め手は、「子孫に管理をしてもらわなくてよい」ということでした。
家内も私も、子どもにお墓のお守りさせるのも何かなあというのがずっとありまして、ちょっと負担を与えることになるので嫌だなと話していました。
夫婦2人分をあわせて24万円で契約。8年前に病気で亡くなった妻の遺骨はすでに埋葬されていますが、その後の管理料や、親族による手入れは必要ありません。
自分らの知り合いでも、いなかのお墓、見る人いないからどうしよう、っていう知り合いが何人かいます。ここでは、浦安市さんがずっとお守りしていただけるというのがいいかなと思っています。
墓や終活に詳しいシニア生活文化研究所の代表理事、小谷みどりさんに話を聞きました。
Q.合葬墓の人気が高まっているのはなぜでしょうか?
亡くなっていく側の意識として、子や孫に墓守りで手間をかけたくないという方がすごく増えています。40年前までは3世代同居が多かったですが、今は3世代同居が1割も切っているわけですよね。そうすると、遠く離れている子や孫に先祖の墓を守ってほしいと言いづらいというのもありますよね。
先祖の墓はあるけれど、墓を継承してくれる人がいないという問題を抱える人たちが増えてきたんですよね。そういう方たちが血縁を超えてみんなで葬られる場所として合葬墓を選び始めたということがあります。
Q.管理のしやすさや値段も関係するのでしょうか?
最近のお墓の傾向として、安い、お墓参りがしやすい、管理が簡単という条件を希望される方がすごく増えてきているんですね。自治体が管理していると安心感もありますし。例えば樹木葬は1つの区画にたくさんの遺骨を収蔵できますし、一般的に利用料も安いです。
Q.自治体の合葬墓にはどのような役割がありますか?
みんなが平等に葬られる権利を保障するのが自治体の責務だと思うんですよね。家族がいる・いない、お金のある・なしに関わらずにみんなが平等に葬られる場所を自治体は提供していかないといけないんじゃないのかなと思っています。
子どもや孫が継承しなければその墓は無縁墓とになってしまう。縦(血縁)の考え方じゃなくて、横(自治体・社会)で継承していく、死者を弔うという考え方にそろそろシフトしていかないといけない時代が来ているんじゃないかなと思っています。
現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズ。前回、合葬墓の人気が高まっていて、千葉市の運営する樹木葬タイプの合葬墓では、抽せん倍率が38倍に上ることを伝え、ご意見も募集しました👇。
早速、投稿フォームには…
亡くなった夫は、子どもに墓守をさせたくないという理由で、墓は要らないと言っていたので、海に散骨しました。私もそれが望みです。
両親のお墓の購入にあたって、3社に見積もりを取ったところ、最終的に60万円ほど安くなって、お墓の値段って何なのだろうと思いました。
しまいにすることと残すことを見定めようと考えています。何を残すか、絵を残すことを考えています。スケッチブックにちょこちょこと絵を描くくらいの気持ちのゆとりを持てれば幸いですね。
などの意見が寄せられました。また、この記事を紹介するNHKのX(旧ツイッター)で、「どんなお墓に入りたいですか」と問いかけたところ…
樹木葬一択ですかね
古墳みたいな共同墓地
こういうお墓に入りたいって言うのはないんだよね。あえて言えば、愛しい人が覚えてくれていれば幸せかな。
などのコメントがありました。
「人生のしまい方」、「お墓」、みなさんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。
「首都圏ネットワーク」での放送は、「NHKプラス」で2月27日(火)午後6時半までご覧いただけます。
「人生のしまい方 あなたは」シリーズ全体については、こちらの記事でまとめています。