9月8日の記録的な大雨で、市役所周辺など広い範囲が浸水した千葉県茂原市。
茂原市は、過去にも繰り返し水害を経験しています。過去の災害を教訓に、今回、被害を軽減させたところもありました。
大雨が予想される中、地域の人々はどのように行動したのでしょうか。
茂原市では、8日朝~昼ごろに断続的に非常に激しい雨が降り、昼過ぎまでの12時間に降った雨量は371点5ミリ。
4年前の大雨の記録を150ミリほど上回り、昭和51年に統計を取り始めてから最も多くなりました。そして、一宮川やその支流で氾濫が相次ぎました。
今回の記録的大雨による被害の全容はこちらから👇
台風13号 大雨の被害は 千葉・茂原 市原 大網白里など 一夜明けた現場から
茂原市の中心部がある地域は、「一宮川」の4つの支流、三途川、豊田川、阿久川、鶴枝川が合流し、さらに勾配が緩やかになるため、氾濫が起きやすくなっています。
平成に入ってからは、4回にわたって氾濫しています。
▼ 平成元年の「台風12号」
▼ 平成8年の「台風17号」
▼ 平成25年の「台風26号」
▼ 4年前の令和元年の豪雨
4年前は、およそ1760ヘクタールが浸水して7人が犠牲となりました。
記録的な大雨で、茂原市には、10日午前10時までに、住民から床上浸水105件、床下浸水43件の情報が寄せられ、その後も件数は増えているということです。
情報が寄せられた場所と、4年前の大雨で浸水した場所を比較すると、一宮川や支流の周辺などで重なる部分が多く、広い範囲で床上や床下の浸水が起きていたとみられることが分かります。
赤い丸が床上浸水、青い丸が床下浸水について住民から情報が寄せられた場所です。紫色のエリアが4年前の大雨で浸水した地域です。
4年前は、市内のあわせて約3700棟で床上や床下浸水が発生していて、市では、前回と同じ程度の浸水被害が出ている可能性もあるとみて、各地に職員を派遣して被害の実態を調べています。
過去の教訓をいかした早め早めの対応が功を奏し、被害を最小限にとどめることができた小学校があります。
茂原市の一宮川沿いにある「中の島小学校」は、職員室などがある1階部分の床上が15cm~20cmほど浸水しました。
この小学校では、過去に何度も浸水被害を受け、被害を忘れないように、校長室には、浸水の痕跡がある木の板の壁が残されています。
今回の浸水の高さは前回、4年前と比べ、およそ半分ほどでした。
また、4年前・10月の豪雨で被害にあった物品や、児童の保護者への引き渡しの時系列をまとめた資料も残されていました。
今回はそれを元に、事前に机の引き出しの資料などをすべて高い位置に上げておいたため、大きな被害は出なかったということです。
さらに、印刷室では、床をほかの部分よりも60cmほど高くしていて、コピー機が浸水しないような対策が少なくとも4年以上前から取られています。
大雨が降った当日は、1~5年生の児童は臨時休校となっていましたが、6年生の児童が修学旅行から帰ってくる日で、保護者にどのように引き渡すか、大雨の3日前から対応を検討していたということです。
保護者が迎えに来られない児童が7人いて、職員とともに近くの中学校で一夜を明かしましたが、事前に食料や水分、職員の配置などの準備をして、余裕を持って対応できたということです。
この学校では、11日から授業を再開するとしています。
予想よりも早く水が迫ってきたので、玄関に土のうを積むといった対策がとれなかったことが反省です。
この経験をまた記録に残し、児童の安全を守れるようにしたい。
茂原市早野にある有料老人ホーム「時の村 早野館」は、一宮川の支流の梅田川が近くを流れていて、8日の大雨で、1階の床上が15センチほど水につかりました。
この施設では、4年前にも床上浸水しましたが、当時は1階にいた入居者を避難させる前に浸水が始まってしまいました。
そこで今回は早めに、午前中から2階へ避難させる対応をとりました。
当時、1階には6人の入居者がいて、昇降機を使ったり、消防隊の支援を受けたりして浸水する前に全員を2階へ運ぶことができ、入居者16人と職員3人にけがはありませんでした。
4年前は利用者さんをすぐには移動できなかった状況だったので、今回は、とにかく利用者さんの命が大事で、それを第1に考えました。
4年前の浸水被害を教訓に、無事に乗り越えることができました。
4年前の豪雨の際に受けた被害を教訓に、対策を講じていた住民もいます。
茂原市に住むの八代勝子さん(75)は、今回の大雨で自宅の1階が1mほどの高さまで水につかりました。
八代さんの家は周囲よりも低い土地にあり、大雨が降ると、たびたび水につかっていて、4年前の豪雨でも、床上まで水が入って家財道具の大半を処分したということです。
こうした教訓から、八代さんは、1階に置く家具のほとんどをスチール製の棚やプラスチックのケースなど、水で洗える材質のものに替えました。
また、ふだんから低い位置に物を置かないようにもしていました。
今回、冷蔵庫や洗濯機は水につかって壊れてしまいましたが、再び使うことができる家財道具は、前回の被災時より多くなったということです。
大雨が降ると、周囲のあちこちから水が押し寄せてくるので、ここに住む以上は、浸水被害は避けられそうにありません。
だからこそ、ふだんから自分で出来ることはしておかなくてはいけないと思っています。
東京大学大学院の松尾一郎客員教授は、茂原市で浸水被害が相次いだことについて、次のように述べています。
もともと一宮川は川の勾配が緩いうえ、地下からガスを採取することで地盤沈下しており、水害が起きやすい地形だ。
そこに広い範囲で300ミリから400ミリという記録的な大雨になった。さらに、雨が降った時間帯が満潮に重なっていたことも一因だ。
私たちは長年、知識と経験を踏まえて治水対策を行ってきたが、地球温暖化などで自然は大きく変わり、雨の量も50年前より増えている。
堤防の整備などが間に合わない場合もあり、早めの避難や高齢者施設など、重要な施設を守る取り組みを広げていく必要がある。
被害のあった自治体では、さまざまな支援の動きが出てきています。災害ごみの受け入れ、ボランティアの受け付け、電話相談の窓口など。
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