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視覚障害者向けグループホームで自立した生活を 千葉・船橋

  • 2021年12月06日

「おしゃれと思われること」が、ある人たちにとっては、不便で使いにくいことがある。
「こだわったことのないこと」が、ある人たちにとっては、とても重要である。
そんなことに気づかされる場所です。
視覚に障害がある人たち向けのグループホームが12月1日、船橋市にオープンしました。

船橋市郊外、新京成線の二和向台駅近くの住宅街の一角に、視覚障害がある人が生活しやすいように工夫が施されたグループホームが12月1日、オープンしました。

視覚障害がある人は家を借りる際に火の扱いなどを心配されて部屋を借りにくい実態があるということで、安心して暮らせる環境を作ろうと市内の企業が作ったものです。

定員は男性6人で、視覚障害のある人向けのさまざまな配慮があります。
壁は白で、扉はこげ茶にして、弱視でも判別しやすくする工夫をしています。

「グループホームease」運営 飯田大介さん

飯田さん「最近は、室内をすべて白に統一するというのが、『おしゃれ』と言われることもありますが、視覚障害のある人にとっては、それは暮らしにくく、色のコントラストは大きい方がいいのです」

ベランダは、洗濯物を干すときのことを考えて、一部屋ずつに設置されています。共同の物干しスペースにしてしまうと、ほかの人の洗濯物を誤って取り込んでしまうおそれがあるからです。それぞれの部屋には、部屋干し用の設備もあります。

階段のふちには凹凸のある黄色いシールを貼っているほか、つまずくことのないよう、廊下には極力、ものを置いていません。

共用スペースのキッチン。電子レンジは凹凸がはっきりしていて、ボタンがひとつひとつ離れているタイプのものが設置されています。ダイヤルを回して温めるタイプのものや、表面部分に凹凸がなくフラットなタイプのものは使いにくいということです。

炊飯器の内釜も、目盛りが、印刷されているタイプではなく、くぼんでいるタイプのものです。掃除機は、コードがからむことのないコードレスタイプです。

画像提供:飯田大介さん

一方、コンロはあえて、ガスコンロを設置しています。今後、ここを出て1人暮らしをしたい場合、ガスコンロが一般的な賃貸物件にすぐ対応できるようにする狙いがあるほか、一面がフラットになった電気コンロよりも鍋の置き場所がわかりやすいガスコンロの方が使いやすいということです。

スタッフの女性と体験入居の塩月智志さん

オープン初日、千葉市内に住む塩月智志さん(33)が1泊2日の体験入居をしました。

「右目がほとんど見えません。左目ですべてを見ていますが、一度に見える範囲は5円玉の穴くらいの狭さです。右から来るもの、下にあるものは見えにくいです」

「わかりました。視界の状況を教えてもらえるのはありがたいです」

塩月さんは部屋の中のクローゼットやエアコンのリモコンを、指で触りながら注意深く確認していました。

塩月智志さん「一般の賃貸物件では、家主さんなどの意向で、なかなか借りられない。ふつう、1~2軒見れば部屋が決まると思うが、何軒も回った上でようやく決まるとか、友人のケースでは、決まるかと思ったら契約直前に断られたものもありました。こういう視覚障害者専門のグループホームがあるって知らなかったです。安心だし、今後、本格的な入居も考えていきたいです」

視覚障害者のためのグループホームは全国でも数が少なく、各地から入居の問い合わせが
相次いでいるということです。

「グループホームease」運営 飯田大介さん「視覚障害者は、緑内障や糖尿病などの病気がきっかけで、大人になってから、視力を失う人がすごく多いです。身近な障害なのですが、これまで困っているのにあまり声をあげてこなかった視覚障害の人たちはたくさんいると思います。ぜひこの施設を知ってほしいですし、今後は、就労支援などにも力を入れていきたいです」。

取材後記

「なるほど」「そうなんですね!」と発見の絶えない取材となりました。視覚障害のある人たちにとって、「触って確認する」というのがとても重要だということがよくわかりました。紹介した工夫の数々、東京オリンピック・パラリンピックで注目を集めた「ユニバーサルデザイン」の事例と言えるのではないかと思います。
飯田さんたちは、視覚障害のある人たちがより暮らしやすくなるよう、行政に対しての働きかけなどにも今後、力を入れていきたいということです。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    2006年入局。札幌局などを経て社会部。いったん退職し、18年に4年ぶりに再入局。千葉県政担当を経て遊軍。障害のある人に関連したニュースをよく取材しています。

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