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東日本大震災13年 サッカーJFAアカデミー福島 静岡最後の選手の思い

福島の復興とともに歩んだ 静岡でのサッカー生活を語る
  • 2024年03月16日

東日本大震災から13年。震災と原発事故の後、静岡県に活動拠点を移していた、日本サッカー協会のエリート選手育成チーム「JFAアカデミー福島」がこの春、静岡での活動を終え、13年ぶりに福島県のJヴィレッジに拠点を完全に戻します。福島市出身でアカデミー入校をきっかけに静岡で中学・高校時代を過ごした最後の卒業生の思いを取材しました。(静岡局・仲田萌重子)

13年間静岡で過ごした JFAアカデミー福島

ことし1月下旬、三島長陵高校で行われた終了式。東日本大震災の後から行われていたJFAアカデミー福島の生徒の受け入れを終える節目の1日となりました。

(日本サッカー協会の田嶋幸三会長)
「多くの人にサポートしてくださった、このご恩は一生忘れません。本当にありがとうございます」

JFAアカデミー福島の35人の在校生を代表してあいさつしたのが、3年生の坂本秀吾さん(18)でした。最後の卒業生として中学・高校を静岡で過ごした思いを語りました。

JFAアカデミー福島卒業生 坂本秀吾さん

(坂本秀吾さん)
「充実した高校生活を送ることができたのも私たちを迎え入れてくれた三島長陵高校を始め静岡県のご支援があったからだと感謝しています。本当にありがとうございました」

JFAアカデミー Jヴィレッジに戻る

大学に進学してサッカーを続ける坂本さん。来月の入学を前に2月29日、久々にJFAアカデミー福島の拠点、Jヴィレッジを訪れました。

そのJヴィレッジ。2011年の東日本大震災と福島第一原発事故のあと、廃炉作業の拠点になりました。

このため、アカデミーは静岡県に移って活動。それから13年間、男女あわせて254人の選手たちが福島の中学校や高校に在籍しながら、静岡県内の学校に通い、日本代表も輩出しました。

そして、2021年から、段階的に福島への帰還を始め、この春、拠点を完全に戻すことになったのです。

震災後元気づけてくれたサッカー プロ夢見てアカデミーヘ

6年前にアカデミーに入った坂本さんは福島市出身。5歳の時に自宅で震災を経験しました。

震災当時を振り返る坂本さん

(坂本さん)
「大きい地震が来て棚とか倒れたりして、皿がたくさん割れたり、小さい頃なんですけど、すごい衝撃だったのを覚えてます」

不安な気持ちの中で出会ったのがサッカーでした。兄の影響で小学1年生から始めるとぐんぐん上達し、アカデミーの試験にも合格。プロサッカー選手になることが夢になりました。中学から親元を離れての静岡生活。最初は不安もありましたが、プロを目指す環境は整っていました。

6年の静岡生活 サッカー集中できる環境、そして仲間がいたから

(坂本さん)
「寮からグラウンドまで近くて、いつでも自主練ができたり、トレーニングが終わってから食事も取ることができる。サッカーに集中できるいい環境でした」

全国から集まった仲間のレベルも高く、くじけそうになりながらも夢を目指し自分を磨き続けたといいます。 

(坂本さん)
「やっぱアカデミーに入ってみんなレベルも高くて、腐っていたら駄目だなって思ってコツコツと自主練をしていきました」

努力が実り、高校3年生ではJリーグのユースとの試合でゴールを決めるなど活躍を見せました。

6年間一緒にプレーした仲間

(坂本さん)
「6年間うまくいくこともあったし、うまくいかない事の方が多かったんですけど、そんな中でも仲間と毎日24時間ずっと一緒に過ごせたんで、すごい来てよかったなって思います。仲間の存在もあってプロを目指せたかなと」

三島長陵高校では合唱にも参加「いなくなっちゃうのがすごくさみしい」

静岡の生活はサッカーだけではありませんでした。坂本さんたちは、福島県立ふたば未来学園高校に在籍しながら三島長陵高校の校舎をサテライト校として通いました。
授業は別々でしたが、文化祭では、坂本さんらアカデミーの4人が、合同で合唱のステージに立ちました。

(坂本さんらを指導した三島長陵高校の合唱部顧問・樋口華奈教諭)
「三島長陵の生徒がスカートを履いている子たちで、男性が上の段に全員ずらっと並んでいるんですけど、真ん中の白いラインの入った制服を着ている子たちが、ふたば未来学園の生徒。とにかくスポーツマンなので本当に元気がよくて、声も出るし歌を本当に盛り上げてくれました」

樋口先生は、この体験が生徒同士が互いを知る機会になり、心が一つになったと感じていました。

(樋口教諭)
「同じ校舎の中でいつも一緒に生活してるのに、何か違う学校っていうすごい寂しさを感じてたんですよ、ずっと。三島長陵生がふたば未来生の子達に興味を持ってくれるっていう、そこだけでもすごくうれしくなりました」

(一緒に歌った三島長陵高校の生徒)
「合唱の練習に来てくれていたふたば未来の人たちが、自然と声かけてくれりとか、明るい雰囲気で合唱してくれていました。今いなくなっちゃうのがすごくさみしい」

(坂本さん)
「今後、大人になっても 忘れることはないすごい自分を成長させてくれた場所です」

静岡の人にも良い報告できるように プロ目指して大学へ

アカデミー卒業時点ではプロになれなかった坂本さん。来月から大阪の大学に進学し再び夢のプロサッカー選手を目指します。

(坂本さん)
「こいつがいれば安心するとか、そういうふうに思われるプレーヤーになりたい。静岡の方も今までたくさん応援してきてくれたんで、大学でたくさん試合に出て、少しでもいい報告ができたらなと思います」

福島で芽生え、静岡で育て続けた夢。支えてくれた多くの人たちの思いを胸に、あきらめず、未来に向けて、新たな一歩を踏み出します。

営業再開したJヴィレッジでボールを蹴る坂本さん
  • 仲田萌重子

    静岡放送局 記者

    仲田萌重子

    全国紙記者として福島県浜通りで過ごした後、2022年にNHKに入局、静岡へ。静岡県政キャップ。今も相馬野馬追の大ファン。

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