ページの本文へ

静岡WEB特集

  1. NHK静岡
  2. 静岡WEB特集
  3. 静岡 伊豆半島 能登半島地震で高まる“孤立”への懸念

静岡 伊豆半島 能登半島地震で高まる“孤立”への懸念

能登半島と地理的条件が似ている伊豆半島。県の調査で見えた課題は?
  • 2024年03月19日

     

    南海トラフ巨大地震の発生で、最大で30m以上の津波が押し寄せると想定されている伊豆半島では、能登半島地震をきっかけに、道路の寸断などによる集落の孤立への懸念が高まっています。能登半島では最大24地区が孤立状態となり、石川県が「実質的に解消した」と発表したのは地震発生から18日後でした。能登半島と地理的な条件が似ている伊豆半島の現状と課題を取材しました。
    (伊東支局 記者・武友優歩)

    津波対策に力を入れてきた伊豆半島。孤立対策は?

    3月10日。伊豆半島南部の市町で一斉に行われた津波避難訓練。

     

    訓練開始10分後には20人が高台に避難を終えた

    西伊豆町では開始時刻を伝えず抜き打ちでサイレンを鳴らしました。住民たちが高台へと避難を始めます。田子地区ではおよそ5分で8mを超える津波が押し寄せると想定されています。参加者のほとんどがすみやかに避難することができました。

    (住民)「すぐ目の前が海だから」「(能登半島地震を見て)ひと事じゃないって感じ。いつもの訓練よりもきょうの方が密度が高い」

     

    海岸沿いに集落が点在する

    長年にわたって津波の対策に力を入れてきた伊豆半島の自治体ですが、能登半島地震の後、懸念が高まっているのが道路の寸断などによる孤立です。

     

    黄色が伊豆縦貫などの自動車専用道路

    伊豆半島を縦断する主要な道路は海沿いなどを走る国道です。山間部を通る伊豆縦貫自動車道は全線開通していません。地元では、「道路の利便性は能登半島より悪い」とさえ言われています。

    伊豆半島では、11の市と町であわせて104地区が孤立するおそれがあると予想されています。

    県が孤立予想集落の調査を開始

     

    南伊豆町役場に集まった県職員たち

    こうした状況を受けて、県が動きだしました。今月にかけて南部の賀茂地域で孤立予想集落の現地調査を実施。8年ぶりの調査です。

    この日訪れたのは南伊豆町です。町内の半数の地区で孤立が予想されています。県や町、自衛隊などが各地区を回りました。

     

    下流地区では港が候補地になっている

    重点的に調査したのはヘリコプターの離着陸が想定されている場所です。能登半島地震では多くの人がヘリコプターにより救助され物資も運び込まれました。孤立した場合には空からの支援が欠かせません。各地区には港や建物の跡地など1つから2つのヘリポートの候補地があります。

     

    前回の調査票に相違点を書き込む。ここでは、ヘリの大きさを訂正。

    前回の8年前の情報をもとに、最新の情報を書き込んでいきます。下流地区の候補地では大型の機体を使う予定でしたが、広さが足りず中型以下しか入らないことがわかりました。

     

    この候補地は海岸から300mほどの場所にある

    沿岸部にある候補地は浸水のおそれがあることが判明しました。

    (南伊豆町の職員)
    「見えているところは全部浸水域です。地震のあと津波が襲来して、津波の大きさにもよりますがここが浸水してしまうと、臨時のヘリポートとしても使えなくなります」

    ヘリポート確保は困難も。鍵は各地区の“防災力”

    伊豆半島は平地が少なく、臨時のヘリポートの確保が難しいことが調査によって突きつけられました。このため、今回の調査では食料の備蓄状況なども確認しました。支援が入るまでに時間がかかった場合、各地区の“防災力”が重要になるためです。

     

    地区の集会所で、区長たちに聞き取りを行った

    (県の職員)
    「非常食はありますか?」
    (区長)
    「非常食はここに半分。もう半分は倉庫に納めました。絶対、道がなくなって孤立するから、自分たちのものは用意しておかないと」

     

    中木地区では住民だけでなく、観光客の避難も見据えて10日以上過ごせる量の物資を備えていました。

    一方で、石廊崎地区では・・・。

     

    区長(左)に聞き取る県の職員

    (県の職員)
    「食料なんかは置いてないですか?」
    (区長)
    「そう。水が倉庫にあるけど。予算のときに毎年あれ買おうこれ買おうって言うんだけど、実際には備えていない」

    地区によって備えに差がある現状が明らかになりました。

     

    (県賀茂地域局・沼野克史 危機管理監)
    「各自治会で、ある程度は避難生活をできるような体制を取っているところもあるので、住民も意識を向上していただき、役場も広報していただければ」

    地区の対策見直し“簡単ではない”

    調査を受けて、対策の見直しを余儀なくされている地区も出ていますが、町の南端に位置する石廊崎地区の区長・鈴木崇夫さんは、今回の調査まで地区で孤立が予想されることは十分に周知されていなかったといいます。

     

    石廊崎地区・鈴木崇夫 区長

    (石廊崎地区・鈴木崇夫 区長)
    「これまで、孤立予想集落とは残念ながら知りませんでした。私を含めて、その前の区長たちも、備蓄に関して一般的な感覚でしかなかったです。南伊豆町でも孤立が起きた場合には正直な話、どうしたらいいのかなっていうのが率直な気持ちです」

     

    地区の防災倉庫。水と毛布などが入っている。

    孤立への認識の薄さもあって、物資の備えは住民に委ねてきてしまったといいます。地区としての備蓄はほとんどなく、毛布などの物資は20年以上前に買った時のまま。食料はなく、簡易トイレは1つしかありませんでした。

    調査後、物資の購入を検討していますが、十分な予算の確保は簡単ではありません。令和5年度の防災費は年間5万円。来年度(令和6年度)は増額を検討していますが、地区では高齢化が進む中で区費が年々減少していて、防災費を大幅に増やすのは難しいといいます。

     

    令和5年度の区の予算のうち、防災費は5万円。

    (石廊崎地区・鈴木崇夫 区長)
    「収入がやっぱり今後減る形になりますので、それに見合う部分で対応せざるを得ないかなと」

    能登半島地震を受けて見直しを迫られる孤立への備え。地区だけでの対応には限界があるとして、行政の支援を求めています。

    (石廊崎地区・鈴木崇夫 区長)
    「行政の方に期待したいのは、現実な部分で話を進めていただければありがたいなということです。1つずつ実際に起こり得ることを想定した上で、町や県から『このくらい負担できますけど、区からもこのぐらい負担してくれますか』とか、そういう具体的な話になれば対策が現実味を帯びてくる可能性もある。できればそういうとこまでいければ、理想かなと思います」

    【解説】孤立予想集落は公開しない??

    Q. 地区の孤立のおそれについて「十分に周知されてこなかった」という声がありましたが、公開しなくていいものなのでしょうか?

    記者

    そもそも、孤立が予想される集落の把握は、2004年の新潟県中越地震で複数の集落が孤立したことを受けて全国的に進められています。

    静岡県では毎年、各市町からの情報を聞き取ってとりまとめていますが、公開するかどうかは各市町の判断に任されています。実際には観光に影響が出る懸念などから、ほとんどの市町が公開しておらず地区での対策の改善につながっていない印象です。

    Q. 対策を進めるにも少子高齢化が進んでますし、地区での取り組みにも限界がありますよね。自治体の補助はあるんですか?

    記者

    補助もあります。例えば南伊豆町では、各地区の防災費について年間10万円を上限に、3分の2まで補助する制度を設けています。

    ただ、防災費を何に使っていくのかは地区に委ねられています。調査で明らかになった課題を解決していくためにも、行政側からの働きかけがもっとあってもいいのではないかと感じました。

    Q. 今回調査を行った県は、今後どう動くのでしょうか?

    記者

    県内には、今回調査を行った賀茂地域以外にも孤立予想集落があります。賀茂地域を含めると県内全部で397地区です。

    県は「能登半島地震を受けて孤立対策の必要性が再認識された」として、今後、県内全域で現地調査を行う方針だということです。孤立対策は喫緊の課題と言えます。調査結果を具体的にどう生かすかは今後検討するとしていますので、動きを注視していきたいと思います。

    ※2024年3月11日に放送した動画はこちらから(2か月限定公開)。

    ここに クリップ動画管理システム の【iframeタグ】を貼り付ける
      • 武友優歩

        静岡局伊東支局・記者

        武友優歩

        2019年入局。静岡局が初任地で2022年から伊東支局。
        今の目標は伊豆半島の温泉を制覇すること。カメラをかつぐために筋トレしてます!

      ページトップに戻る