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静岡伊東 高校生が考案した“毎日子ども食堂”の仕組みとは?

ヤングケアラーを食事で支援したい!高校生の思い
  • 2023年08月24日

家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども「ヤングケアラー」。県内でも小学生から高校生の子どもには、22人に1人の割合でいることが分かっています。こうした中、ヤングケアラーやその環境に近い子どもたちを食事で支援しようという取り組みを伊東市の高校生が始めました。支援したい人たちの思いで作る“毎日こども食堂”です。
(伊東支局記者 武友優歩)

ヤングケアラーを助けたい!高校生の思い

8月中旬、伊東市内の居酒屋で新たな取り組みが始まりました。訪れているのは地元の子どもたち。無料で食事が提供されています。

「おいしかったです。こういう場があったらありがたいです」(訪れた子ども)

授業の風景

この取り組みを考案したのは、地元・伊豆伊東高校の3年生3人。ビジネスプランを考える授業で、ヤングケアラーを支援するプランを思いつき、実現にこぎ着けました。

考えたシステムです。舞台は居酒屋を想定しています。まず、ヤングケアラーを支援したいという客が1口100円でチケットを買います。そして、チケットが5枚たまると子ども1人に無料で食事が提供されます。こうすることで、居酒屋に負担が集中せず、無理なく取り組みが続けられるという想定です。

リーダーの平松美紅さん

リーダーの平松美紅さん(17)です。平松さんには1歳と3歳の妹がいて、両親が共働きのため、日常的に世話を行うヤングケアラーです。

平松さんの2人の妹

「放課後友達と遊ぼうと思っても家にとりあえず帰って、妹たちの面倒を見るということが多いので、その面ではかなり大変です」(平松さん)

そんな平松さんが日々の家事で最も負担に感じるのが食事の準備と片付けでした。このため、ヤングケアラーの負担を少しでも軽くするには、食事を支援するのが一番必要だと考えたのです。

「私自身が食事の面倒を見る中でご飯を作る作業がとても大変なので、心のゆとりを持てたり、悩みを打ち明けられる場所があるといいのかなと思います」(平松さん)

舞台となるのは地元の居酒屋

高校生が居酒屋の店長に直談判した

そのために協力を求めたのが地元の居酒屋です。地域にある子ども食堂は利用できる日が週末などに限られているため、日常的に夜まで営業している飲食店で、いつでも無料で食事できるようにしたいと考えたのです。

平松さん

私も10歳以上離れたきょうだいがいて、食事に困っている子どもたちに何か手助けができないかなと思って企画しました。

居酒屋の店長

子ども食堂だけじゃなくて、子どもたちが気軽に遊びに来られて、相談に乗れる。そういう商店街を目指しているので、ぜひ一緒にこのプランをやっていきたいと思います。よろしくお願いします!

店長は思いに賛同し、その場で協力を決めました。

「自分が子どものときに親世代や、そのおじいさんたちに優しくしてもらったことを、今この年になってすごく感謝しています。なので、今度はそれを下の子たちにしてあげたいなと思いました」(居酒屋「笑あん」安藤健雄さん)

居酒屋では、すぐにチケットの販売を開始。取り組みに賛同した客がチケットを買いました。すると、1か月もたたないうちに、47人が食事を食べられる分のチケットが集まりました。

地元の子どもを招待

そして迎えた初めての食事の提供日。平松さんたちも店を訪れ、接客を手伝いました。この日は、試験的に行ったため、両親が共働きの子どもなど小学生から高校生までの8人が招待されました。

子どもたちは、店長が子どもの好みに合わせて作った甘口のカレーをおなかいっぱいになるまで頬張りました。

「ぬくもりのこもった味でおいしかったです。友達と食べられるのが一番いいと思うのでこういうのがまた何度もあるといいなと思います」(訪れた子ども)

気さくな店長と談笑する場面も

高校生発案で地域の人の支援の思いが詰まった“毎日子ども食堂”。まだ一歩を踏み出したばかりですが、平松さんたちは、この場所が、子どもたちの「心のよりどころ」になるよう活動していくつもりです。

「笑顔で帰ってくれたのはすごいうれしかったです。私の目指す目標は“知り合いのおじちゃんおばちゃんがいるお店”です。交流を持つことで、自分の行き詰まったふだんの日常を軽くできるのかなと思っています。身近な飲食店さんと今後も協力して、気軽に入れる子ども食堂を作っていきたいです」(平松さん)

市内では現在、この居酒屋のほかに2店、協力したいと手を挙げている店が出てきていて、地域で徐々に取り組みが広がっています。今後は子どもが店を利用したいときに予約できるシステムを整えていきたいということです。

※2023年8月22日に放送した動画はこちらからご覧いただけます。

  • 武友優歩

    静岡局伊東支局・記者

    武友優歩

    2019年入局。静岡局が初任地で2022年から伊東支局。
    今の目標は伊豆半島の温泉を制覇すること。カメラをかつぐために筋トレしてます!

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