静岡市 難波喬司市長 “防災のプロ”の大雨対応を振り返る
- 2023年06月07日
静岡市は6月の補正予算案に、治水対策の見直しのための費用を盛り込みました。去年(2022年)の台風15号に続いて、6月の大雨でも課題として注目されている災害対策に、「防災のプロ」を自認する難波市長はどう取り組むのか、担当記者が解説します。(記者・三浦佑一)
【動画】
(キャスター)
今回の補正予算案には難波カラーが反映されているのでしょうか。
(記者)
そうですね。静岡市内でたびたび水害を起こしている巴川の治水対策は、難波さんが以前から問題意識を持っていて、強い意向が込められていると言えます。
こちらが巴川の地図で、青い線が県が管理する巴川の本川で、緑や赤が本川に流れ込む支川。ピンクになっているエリアが去年の台風で浸水した範囲です。
去年の台風15号では巴川からあふれた水で清水区を中心に広い範囲が浸水し、水に浸かった家具などの災害廃棄物が公園に山積みとなるなど、市の災害対策の課題を浮かび上がらせました。
この台風対応について市は対応を検証し「施設の整備基準である雨量を大幅に上回る降雨で、排水能力を超えた」などとする報告をまとめています。
6月2日の大雨では、結果的には氾濫は発生しませんでしたが、清水区能島の観測所で氾濫の危険性が非常に高い「氾濫危険水位」を超えました。
今回の予算案で難波市長は、巴川の治水対策の見直しや、氾濫を予測し情報伝達するシステムの検討費用などに8900万円あまりを計上しています。
この予算案は今月の大雨の前から固まっていましたが、今回の大雨の対応にも難波さんの考え方や性格が表れていたと思います。
(キャスター)
どういうところでしょうか?
(記者)
朝から雨が強くなりはじめた6月2日金曜日の午前11時、静岡市は市内に大雨警報が出るよりも先に市内79か所に避難所を設置しました。
以前は市では警報が出てから避難情報の発表と避難所の設置を検討するのが一般的だったのですが、難波市長の指示で避難所を先行して開いたということです。
そして午後からは土砂災害警戒情報も出される中、午後2時20分に災害対策本部を設置し、その直後の午後2時半に最初の会議を開催しました。
午後3時すぎには難波市長が報道陣の取材に応じ、みずから雨雲の動きを画面で指し示しながら見通しを解説しました。
[6/2の取材対応]
(難波市長)
「これと河川水位の上昇情報を見ながら、河川がどういう状況なるか、われわれ感覚的ですけど予測をするんですね。16時ぐらいにかなり強い雨が降るので、16時時点で河川の水位がどのぐらい上がっているか一回警戒したいと思います。そこで1回河川について災害対策本部を開いて判断して」
そして午後4時から午後9時にかけて、災害対策本部の会議を5回開きました。
(キャスター)
ほぼ1時間おきの会議ですね。
細かく動いていたんですね。
(記者)
難波市長は雨雲の動向と被害の状況を聞き取りながら、人命第一での対応や警察・消防との連携を指示していました。
その一方、被害状況の報告をめぐり、われわれメディアの前で、職員にダメ出しをする場面もありました。
[6/2の静岡市災害対策本部会]
(幹部職員)
「4路線で一部通行止めにしてございます。以上です」
(難波市長)
「災害情報は出たらすぐ報告をしてまとめて『第何報』って出してください。こんなバラバラバラバラやっていたら時間の無駄ですから」
(職員)
「調査が広範囲にわたるというところも一部ございます。やはり1時間から2時間ほどですね・・・」
(難波市長)
「そうじゃないの。調査中でいいの。今ある情報がここに1毎まとまっていないと、口で言ってもみんな分からないでしょう」
(キャスター)
厳しいですね。
(記者)
このあと、職員の報告に対する不満から難波市長が会議の中止を宣言し、災害関連の部局だけとの話し合いに切り替える場面もありました。
(キャスター)
国土交通省出身で、防災のプロだという自負があるから、厳しくなってしまうんでしょうかね。
(記者)
田辺前市長のもとでの災害対策本部の会議は、少なくともメディアに公開するときには、方針は事前にすりあわされ、市長は用意された原稿を読んで市民に向けたメッセージを伝えるのが通例でした。幹部職員の1人は「前市長の災害対策の会議はセレモニー的なものだった。会議の開き方にも難波市長の特色が出ているということだろう」と話していました。
こうしたスタイルは専門性とリーダーシップを感じさせ、今までにない緊張感や期待感を生む一方、一歩間違えば難波市長に職員が物を言いにくくなる雰囲気になる可能性もあります。市役所全体で活発に議論して市民生活を支えていくような行政運営ができるか、引き続き注目です。