出羽三山の石碑が宮城にもたくさんあるのはなぜ?

今回のみやぎUP-DATEでは、こちらの投稿にお応えします!

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「湯殿山」「羽黒山」は共に山形県にある山です。
この2つに「月山」を加えて「出羽三山」と呼ばれています。

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刻まれているのは山形県内の山の名前ですが、こういった石碑は県内各地にあるそう。
今回は長年、石碑の調査が行われていた多賀城市を訪ねました。


まずは石碑を探そう!

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安藤さん
「多賀城市にやってきました。
市内に何カ所も石碑があるということなんですが…
こちらに石碑がありますね。山の名前が書いてあります。」

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安藤さん
「こちらにも石碑がありました。」

確かに複数の場所で石碑を見つけることができました。


どうして石碑があるの?

石碑がある理由を、多賀城市教育委員会の山極 優子さんに聞きました。

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安藤さん
「この出羽三山の石碑が、なぜ宮城県にあるんでしょうか?」
山極さん
「このあたりの地域の人たちも、昔から山形の出羽三山に参拝に行っておりまして。
その信仰の証として建てられたものが市内にも多くあります。」
安藤さん
「この宮城県から出羽三山まで、みなさん行っていたということなんですね。」

出羽三山は、全てを巡ると願いが成就するとも言われています。
古くから人々の信仰の対象となってきた山は、山伏の修行場所としても知られています。

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江戸時代から明治時代にかけて、出羽三山への参拝は集落をあげての一大行事でした。
石碑は、その参拝を記念して建てられたそうです。

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山極さん
「昔は誰でも気軽に遠出できるわけではなくて、村の代表者を送り出すという方式でやっておりました。
そういう参拝の方法を『代参(だいさん)』というんですけれども、日数もかかりますので、その間、代参者の家族は“水ごり”といって身を清めるようなことをして待っていたなんていう話も残っております。」
安藤さん
「とても大事な行事というか、大切にされていた風習なんですね。」

しかし、地域をあげての参拝は時代とともに衰退していったといいます。


参拝を続けている地域も!

参拝の風習が失われていく中、昔ながらの参拝を続けている地域がありました。
多賀城市 浮島地区です。

お話を伺うのは蜂谷 栄一さん。
170年以上前に建てられた石碑を今も大切にしています。

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蜂谷さん
「石碑がこちらです。」
安藤さん
「おお~、すごく立派な石碑ですね。」

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蜂谷さん
「小さい時からこの場所に、この三山の碑があったんです。
この辺りの方たちは元々農家なので、五穀豊穣(を願って)という形で。」

長年続いていた参拝ですが、平成10年からは休止状態に。
しかし、休止から10年余り経った2011年。
東日本大震災で倒れた石碑を見て、蜂谷さんは改めて伝統の大切さに気がつきました。

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蜂谷さん
「これではダメだということで、石碑をまた元に戻しましょうと。」

震災の翌年、集落でお金を出し合い石碑を修復。
竣工式には山形から山伏を招き、改めて地域の安泰を祈願しました。

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石碑復活に合わせて、参拝も再開。
蜂谷さんらは地域の代表として、毎年出羽三山へと足を運ぶようになりました。

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浮島地区の人たちを再び結び付けた石碑。
記念碑であるとともに、地域の心の支えでもあります。
蜂谷さんは「立派な石碑ですし、これからも大事に見守っていきたい。」と話していました。


県内全体ではどのくらいあるの?

東北大学文学部の阿部 友紀助教によると、
「こうした石碑は県内全域に1000基ほどではないか。
仙台藩が飢きんになった江戸時代に多く建てられているようだ。」
とのことでした。

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安藤のひとこと。

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安藤さん
「蜂谷さんは参拝した時の白装束や杖などを今も大切に持っていて、地域を代表して参拝することの誇りを感じました。
古くは飢きん、そして現代では震災など多くの困難がある中で、地域の平和と安泰を願う気持ちはずっと変わらずに受け継がれているんだなと感じました。」





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