"痛車"のタクシーで地域を盛り上げたい!

アニメのキャラクターなどを描いて派手に飾った”痛車”。見る人によっては恥ずかしい=痛々しいと感じることからそう呼ばれていますが、全国ではファンも多くいます。白石市にこの痛車で地域を盛り上げようと活動している男性がいます。いったいどんな車なのでしょうか?

仙台放送局 宮崎竜之輔


《正体はタクシー!》

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ボンネットいっぱいに描かれた緑色の髪の少女。宮城名物ずんだ餅をモチーフにした「東北ずん子」という女子高校生のキャラクターです。震災後、東北の被災地を支援しようと、仙台のアニメ関連会社が生み出しました。

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側面には秋田のきりたんぽや青森のイタコをモチーフにしたずん子の姉妹も描かれたこちらの車、実はタクシーです。

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このタクシーの運転手の田中健一さん(54)。車体のラッピングデザインは田中さんみずから考えました。

田中健一さん
「後ろは白石の武家屋敷通りの写真をアニメーション調に加工いたしまして、ずん子ちゃんが白石に来て楽しんでいる姿をイメージしてこちらに描かせていただきました」

《始まりは市民バスから》

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田中さんは32年前の1992年、白石市のタクシー会社に就職しました。アニメや漫画などのキャラクターが大好きで、みずから「絵に描いたようなオタク」と称し、時には自分がそのキャラクターになりきることもあります。痛車のタクシーは入社当初からの夢でした。

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入社17年目の2008年。ようやく転機が訪れます。「戦国BASARA」というゲームが流行し、登場する白石城主・片倉小十郎のキャラクターを市民バスにラッピングしてはどうかと思いついた田中さん。青年会議所の先輩で交流があった当時の市長に提案したところ、実現しました。

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当時の市長、風間康静さんです。そのころ自治体がゲームのキャラクターを活用するといった前例はあまりなかったといいますが、人柄をよく知る田中さんを信じてアイデアを採用。片倉小十郎ラッピングの市民バスは、予想以上の人気を集めたといいます。

当時の市長 風間康静さん
「中には公共のものに漫画チックな絵を描くのはどうだろうって言っていた人がいたのかもしれないけど、反応は私はよかったと思いますよ」

《そして生まれた痛車のタクシー》

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これで火がついた田中さん。よくとしの2009年、ついに自分のタクシーに自費でおよそ15万円かけてバーチャルシンガーの「初音ミク」をラッピングしました。これがインターネット上で大きな話題になったといいます。

田中健一さん
「初音ミクはもう大好きだったので、やるんだったらそれしかないと。今でいうバズるっていうことばですか、それで一気に広がって」

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そして2014年から運行を始めたのが「東北ずん子」のタクシーです。かわいさだけでなく、東北の会社なら無償で利用できるという使い勝手のよさにも注目したといいます。

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今月、10年ぶりにデザインをリニューアルしました。白石の名物の1つにしたいと、白石城など、より白石らしさを出しました。

《利用客の受け止めは・・・》

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利用客はどう思っているのか。田中さんの仕事に密着して聞きました。

(50代男性客)
「見た瞬間に、『あ、痛車』って。抵抗は全然ないですね。痛車だろうが何だろうが運転さえしっかりしてくれれば」
(70代男性客)
「いいんじゃないの、白石城入っててさ。かっこいい、よそにないから」
(70代女性客)
「すごくいいと思う。目の保養」

《なま温かい目で・・・》

休日などは県外から乗りに訪れる人もいるということで、田中さんはこれからも「痛さ」で白石を盛り上げたいとしています。

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田中健一さん
「私も白石で長年仕事をやらせてもらっていますので、なんとか自分の得意な分野で地元のためになることができないかなと。温かい目で見るものでもないと思いますが、冷めた目で見られるとちょっと心折れちゃうので、なま温かい目くらいで見ていただければと思います」

《タクシー以外もやっています》

田中さんはずん子タクシーだけでなく、2013年からは市内の飲食店などと一緒に「東北ずん子スタンプラリー」というイベントも行っています。去年は1か月半で全国からおよそ1000人が参加するなど、人気のイベントだということです。ことしも6月から開催する予定だということで、東北ずん子、そして田中さんに会いに白石を訪れてみてはいかがでしょうか?きっと私のように田中さんの魅力に引き込まれること間違いなしです。

取材:仙台放送局記者 宮崎竜之輔

※白石城で特別な許可を得て撮影