シージェッター海斗 石巻とともに歩んだ20年

宮城県石巻市にご当地ヒーローがいることをご存じでしょうか。
その名前は「シージェッター海斗」。
東日本大震災などの困難を乗り越え、ことし誕生から20年になるヒーローの歩みを取材しました。

(仙台放送局記者 桑野敏行)

【認知88%!石巻で抜群の知名度】
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石巻市にある石ノ森萬画館

シージェッター海斗は石巻市にある「石ノ森萬画館」のキャラクターです。地元ではどのくらいの知名度があるのか、JR石巻駅前で話を聞いてみると…。

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「子どもが小さいころから好きでよく見に行っていました」

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「当然知っています。シージェッター海斗ですよね」

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結果がこちら。子どもからお年寄りまで42人中37人が海斗を知っていると回答しました。認知率は実に88%に上りました。

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2004年 海斗デビューのイベント

海斗が誕生したのは2004年。石巻市のマンガを使った町おこしの一環として誕生しました。

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宮城県出身で石巻市にゆかりのある漫画家・石ノ森章太郎が遺したスケッチをもとにデザインされました。

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石ノ森萬画館 高橋智之さん

どうしてこれほど愛されているのか。石ノ森萬画館で現在、海斗のプロデュースを担当している高橋智之さんです。就学前の子どもたちとの交流が大きいのではないかと言います。

(石ノ森萬画館 高橋智之さん)
「小さい子どもたちに知ってもらうことが大事だと考えています。物心ついたときに触れるヒーローはいくつかありますがその中の一つとして捉えてもらえたら大人になっても石巻のヒーロー、シージェッター海斗が心に残っていくと思います」

【東日本大震災“地域を少しでも元気に”】
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東日本大震災後の石ノ森萬画館

ただ、すべてが順風満帆だったわけではありません。13年前の東日本大震災では萬画館は津波で大きな被害を受け、1年半余りにわたって休業を余儀なくされました。予定されていた海斗のイベントもすべて中止になりました。

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震災から1か月後。萬画館の片づけをしていたスタッフから声が上がったといいます。

「今こそ海斗の出番だ」

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震災後初のヒーローショー

集まっただけのメンバーと津波の被害を免れた道具でショーを再開。震災から2か月もたたない「こどもの日」でした。

(石ノ森萬画館 高橋智之さん)
「震災後、家がなくなったり、子どもたちも遊び場がなくなったり、楽しい娯楽もない状況の中で子どもたちに少しでも元気になってもらおう、勇気を持ってもらおうと思いました」

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一日警察署長の海斗

その後も地域を励まし続けた海斗。今では一日警察署長や地元の大漁まつりなど石巻のイベントに引っ張りだこ。すっかり石巻に欠かせない存在になりました。

【海斗のファンは世代をこえて】
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ことしで誕生から20年。海斗のファンは世代をこえて広がっています。

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「もともと私が好きで、この子たちも自然と興味を持ってくれたので一緒に楽しむことができてうれしいです」

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「石巻のヒーローなので、親子で一緒に応援しています」

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これまでの応援への感謝を込めて、20周年の記念ロゴを制作しています。

(石ノ森萬画館 高橋智之さん)
「海斗は海のヒーローだから水しぶきのイメージを使っていきたい」

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上野駅でのイベント

活躍の場はさらに。去年12月に東京・上野駅のイベントで石巻の魅力をアピールしました。目指すのは、マンガの街・石巻の魅力を日本全国や世界に発信するご当地ヒーローです。

(石ノ森萬画館 高橋智之さん)
「20周年を迎えるという記念の年でもありますので、これまでのファンだけでなく、新しく知ってファンになる人たちに楽しんでもらえる展開を考えています。石巻だけでなく日本、世界に発信できるキャラクターに育てていきたいです」

 

【取材後記】
子どものころから特撮が好きだった私(福岡出身)。
もちろんシージェッター海斗のことも、東京で過ごした学生時代から知っていました。

ただ、それは私が特撮ファンだからで、一般の石巻市民にとっては縁遠い存在では…。
そんな私の予想は大きく外れ、市民の海斗愛の深さに驚かされました。

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こちらは石巻市にある震災の伝承交流施設に展示されている海斗のモニュメントです。
津波で傷ついたヒーローの姿は、震災の威力の大きさを今に伝えています。

石巻とともに泣き、ともに笑った、海斗の20年。
地域に寄り添う身近なヒーローに、勇気をもらった市民は少なくないのかもしれません。

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これからもがんばれ、石巻のヒーロー・シージェッター海斗!!


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仙台放送局記者
桑野敏行
2023年から仙台局 
主に農業など経済取材を担当
特撮とヒーローが好き