「限界集落住んでみた 宮城編(栗原市花山) 」 ディレクターが語ってみた

「限界集落」とは・・・人口の半分超が65歳以上の集落のこと。
「若者がいなければ学校もない、病院もない…」なんとなく寂しいイメージありますよね。でも実際はどんな所か知る人は多くないと思います。どんな人がどんな暮らしをしているのでしょう。

「限界集落住んでみた」シリーズの第9弾!
宮城県では4か所目。向かったのは、栗原市です!
今回は、この夏仙台に来たばかりの6年目 女性ディレクターが挑戦しました!

放送を終えて、
限界集落に住んでみた感想が気になる方もいらっしゃるかと思い、
皆さんが気になるかも?という点をつらつらと書いていきます!

岡崎 雅 ディレクター

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プロフィール:東京出身・29歳
にぎやかな場所じゃないと暮らせない・・・

“「都会っ子」ディレクターが限界集落に住んでみて・・・”

初めから自分の話で恐縮ですが、
私は東京でいうと目黒区出身。
わかる方には「都会っ子」だねぇ・・・と言われる場所です。

今回の番組を担当することに不安がなかったかというと、うそになるくらい、
限界集落でどう暮らしていくのかは、想像できないものでした。

前任地は青森局でしたが、
もちろん、集落で1か月寝泊まりするなんて、したことがありません!
さらに 静かな場所も苦手。電灯のない通りがこわく、青森でも繁華街に住んでいたくらい。

でも、一度きりの人生!全く違う景色に触れられるのは貴重な体験!
と飛び込みました。

 

“どうして程野集落に行くことになったの?”

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今回住ませていただいたのは、栗原市の旧花山村にある 程野集落。

花山といえば、県境の山あいの村。
「花山湖」も有名ですよね。
宮城県内の方は、キャンプに行ったことがあるひとも多い場所。(今回の見届け人・狩野英孝さん(栗原市出身)も学生時代に合宿で訪れたそう!)

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今回住んだ程野集落は、
山に囲まれた土地に田んぼが広がり、その横に家々が連なる100人ほどが暮らす集落です。

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私ごとですが、実は、趣味が演劇鑑賞で、脚本家の宮藤官九郎さん(栗原市ご出身)が好きなんです。
仙台に転勤が決まった夏頃 「いつか取材に行ってみたいな」と思っていたので、
まずは栗原市役所の皆さんにご相談したところ、ご縁で程野集落の皆さんが受け入れてくださることになりました!

“どんなところに住んでいたの?”

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集落の中の空き家の一軒家に住んでいました。
これまでに何人にも貸している家だったので、きれいなお家でした!

水道も電気ももちろん使えますし、
ご家族で住んでいたこともあり大きいお風呂にも感動しました!
残暑厳しい中で冷蔵庫はありませんでしたが、
皆さんからいただいた夏野菜は山からひいた「沢水」で冷やせば長持ち!
ほとんど毎日自炊に取り組んでいました!

しかし、「都会っ子」岡崎のいちばんの懸念は、夜の闇。
静かなお家にひとり・・・。物音がしたらどうしよう・・・。
持参したぬいぐるみのクマ を抱いて寝ていました。
なさけないと思いつつ、夜も早めに就寝です。

“撮影はどんな風に行うの?”

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(↑三脚を立て、ひとりで自転車をこぎ往復します!車から見ていた方から、何を撮ってたのと言われたり・・・)

カメラマンはおらず、デジタルカメラや時に小型カメラ・スマホを活用し1人で撮影します!
普段の撮影では、カメラマンに相談しながら しっかりとプロフェッショナルな腕で撮影してもらえますが、私はいちディレクター・・・へなちょこカメラマンです。
うまくとれなくても、毎日は進んでいきます・・・!
ある意味、住むことの孤独さより 撮影の孤独な戦いが、いちばん心が鍛えられました。

 

“集落に住んで、思い出を教えて!”

後にも先にもこんなに近所の方と毎日話すことはないと思うくらい、
毎日集落の皆さんの元に通いました!

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収穫の秋、刈り取りが進んでいく田んぼ。
住んだ時期は雨の日も多かったので、
晴れた日には「お日様がもったいない」と 皆さん休憩も惜しんで作業です。
当たり前の気づきかもしれませんが、1年間かけて育てた収穫の時期 なんて特別な瞬間だろうと感じました。

そんな田んぼに入ってしまう、イノシシ。
困った存在でしたが、車に乗っていて出会うとのんびり道を歩いていてかわいいなと思うこともありました。
たいてい家族でいるようで、住んでいる間で5家族ぐらいは出会えたのではないかなと思うくらいよく遭遇しました!

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いちばん嬉しかったのは「お茶っこ」の時間。
青森ではお茶っこの場面に遭遇することがなかったので、新鮮な気持ちです。
親しくもない自分がお邪魔していいのかな・・・ごちそうになりすぎかも・・・と心配しつつ、
いつしか取材も忘れて一緒にテレビを見ている瞬間もあったり。

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お茶っこをすれば、「ひとりでいるよりいい時間を過ごせたなぁ」とほっとしました。
きっと皆さんそんな気持ちでお茶っこの時間を楽しんでいるんだなと思いました。
また、春が来たらお茶っこに行きたいな・・・と、今も懐かしい時間です。

集落唯一の商店のお母さんも、
お客さんが来れば、ついつい商品だって振る舞ってしまう・・・!
振る舞う皆さんにとっても、お茶っこの時間は魅力的なのですよね・・・!

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“限界集落に住んでみて感じた・・・人が集まることの貴重さ”

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かつて集落では、どの家でも田んぼの作業をしていたと聞きました。
田んぼの収穫、田植えの時期には 隣近所が集まってお手伝いをしていたのです。

程野集落に住んでみて感じたのは
人がつながり合っていた記憶を大事に暮らしている方が多いことでした。

機械化も進み、あまり手伝うことがなかったとしても・・・。
自分の田んぼの収穫が始まれば、鎌と軍手を携えて手伝いに行く・・・
そんな風景があちらこちらで見られました。


お彼岸には、自分の家のお墓参りだけではなく、
「友達、親戚に挨拶」と20軒近くのお墓に手を合わせる姿が。
恥ずかしながら私はあまりお墓参りに行ったことがなく、
「手を合わせている時、何を考えているんですか?」とお聞きしました。
「それは・・・、家さ見守ってけろって。」

亡くなった祖母のお墓参りも、自分の近況を報告するだけだった私。
ご先祖さまという存在を始めて意識し、今自分が生きていることに感謝しないとな、と心から思った瞬間でした。
集落の皆さんのお墓を回る中でも、本当にたくさんの方のお顔がよぎっているのだなと思いました。

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(↑お茶っこ中に流れたテレビ体操を3人でやってみた!)

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(↑かつて、集落のお祭りでも披露されていた花山神楽)

“1か月住んでみて どうだった?”

端的に言うと、実家が増えた・・・!
集落を離れてからはそんな感覚を持っています。

番組の中に映っていない方も含めて、40人ほどはお会いしたかと思います。
1か月住ませていただいて、
皆さんと顔見知りになって、お野菜もいただいて、一緒にお茶っこもして。
収穫の季節を過ごして。

番組が終わってから挨拶に行った時も変わらず、お茶っこに招いてくださる皆さん。
宮城県にいつでも迎えてくれる場所があることは、仙台で暮らしていても心強いです。

私にとって程野集落は「宮城の実家」です。
だからこそ、また違う季節の程野集落の顔を知りたいなと思っている今日このごろです。
次は田植えの手伝いにも行ってみたいな・・・。

程野集落のみなさん、1か月間の素敵な時間を過ごさせていただき、ありがとうございました!
そして、みなさま、最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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