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プログラミングで夢を描け!

宇宙ステーションへ安全に荷物を届ける補給機を

JAXA研究開発部門 第三研究ユニット研究開発員 能美 亜衣(のうみ・あい)さん

国際宇宙ステーション(ISS)は、日本をふくめた世界15カ国が参加、地上400キロメートル上空の宇宙を飛んでいる実験しせつだ。地球のまわりを90分で1周するすごい速さで飛んでいる。そこでは宇宙飛行士が働いていて、空気や重力の少ない環境(かんきょう)を利用して、宇宙観測や様々な実験をおこなっている。
能美さんは、ロケットや人工衛星の研究をするJAXA(ジャクサ・宇宙航空研究開発機構)に入って2年目の若手研究者(わかてけんきゅうしゃ)。宇宙ステーションで活動する宇宙飛行士に欠かせない水や食料、そして実験器具などの荷物をとどける無人の「補給機(ほきゅうき)」の飛行プログラムを開発しているんだ。2021年度の打上げを目指して開発中の新型補給機(HTV-X)が、能美さんのプログラムで飛ぶ初めての補給機になる予定だ。

能美 亜衣(のうみ・あい)さん

プレッシャーより、補給機が宇宙へ行くんだという思い、新しいことにチャレンジできる喜びの方が大きい

宇宙ステーションISSはすごい速さで飛んでいるということですが、補給機はどうやってISSまでたどりつくのですか?

補給機はロケットの先のフェアリングとよばれる部分に入れて打ち上げられます。そして、ISSとほぼ同じ高さまで上がったところで、ロケットから切りはなされます。ここから補給機は自動飛行のプログラムで、自分が宇宙のどこに、どのような姿勢(しせい)でいるのかをカメラやGPSなどでかくにんしながら、ISSに近づいていきます。わたしが担当(たんとう)しているのは、ISSまであと5キロメートルのきょりに近づいてからドッキングするまでの部分です。「このまま近づくとISSにぶつかってしまう」と判断したら、近づくのを一度やめて、エンジンを吹(ふ)いて軌道(きどう)を変える、そして地球を一周する間に計算して軌道修正し、もう一度ドッキングにチャレンジする、そういうことを自動で行うプログラムを考えているんですよ。宇宙飛行士がいるISSにドッキングしていろんな物をとどけるわけですから、絶対にぶつかったりしないで安全に荷物をとどけなくてはならないんです。

そこまでプログラミングされているんですね。映画(えいが)を見ていると、宇宙船のエンジンがこわれたりというトラブルがあったりしますが、実際にあったらどうするのですか?

補給機HTV(2009年のコウノトリ初号機)のもけい

補給機にはエンジンがいくつかついているので、ひとつこわれたらほかでカバーするのですが、それもプログラムで自動化できないかと研究しています。自分でこわれたエンジンを検知しなければいけないのですが、どのエンジンがおかしい、というところまでプログラムが自分で特定するのはとてもむずかしいのですが、これができるようになると大きな進歩なのでがんばっています。

補給機HTV(2009年のコウノトリ初号機)のもけい。新しい補給機のHTV-Xは、より安全でべんりにするために形や仕組みをガラリと変える計画だ。

プログラムがうまく動かないと事故になったり、必要な荷物がとどかなかったり。。責任の大きい仕事ですね。

プレッシャーももちろんありますが、自分が考えたプログラムで補給機が宇宙へ行くんだという思いや、新しいことにチャレンジできる喜びの方が大きいです。わたしにとっては良いプレッシャーとして楽しみながらやっています。大変なのは、プログラムの考え方は一つに決まっても、実際の機械になると本当にその動きをするかは分からないので、何万通りもの計算をして「本当にだいじょうぶ」と証明しなければいけないことですね。

すごいなあ。わたしだったらプレッシャーでたおれちゃうかも(笑)。どうしてこの仕事をされようと思ったのですか?

高校生のとき、JAXAの職員や宇宙飛行士の方のお話しを聞く機会があって、その時に見た宇宙の映像(えいぞう)がとてもきれいだったんです。それが印象に残って、将来(しょうらい)は宇宙に関わる仕事をしたいって思うようになりました。

自分が作りたいものをプログラミングして、やっとプログラミングのおもしろさを覚えた

当然、子どものころからプログラミングは得意だったんですよね?

いいえ。わたしは大学の授業ではじめてプログラミングをしたのですが、そのときは苦手でした(笑)。少し基本を教わった後で、いきなり「さあゲームを作りましょう!」と言われたんですが、ゲームはあまり興味がなかったので…

大学にはプログラミングの授業もあるんだ!でも、授業では興味がなくて苦手だったのが、得意に変わるには、何かきっかけが?

能美 亜衣(のうみ・あい)さん

その後、大学では宇宙(うちゅう)のことを研究する研究室に入りました。この研究室では、CanSat(カンサット)というコンテストに研究室のみんなでチームを組んで出場(しゅつじょう)しました。このコンテストのことは前から知っていて、このコンテストに出場している研究室に入りたい!って思っていたんです。
カンサットは、空きかんのサイズの小さな模擬人工衛星(もぎじんこうえいせい)を小さなロケットで打ち上げて、上空4キロメートル(注:富士山より少し高いくらい)で切りはなします。そこから人工衛星は落ちてくるんですが、着陸したら走ってゴール地点のどこまで近くに行けるかを競うコンテストです。

NHKのロボコンにも似てますね。面白そう!

チームの中でわたしは、人工衛星が自分の位置を知るためのプログラムをたんとうしました。このときはじめて、本格的(ほんかくてき)にプログラミングに取り組んだんです。インターネットで参考になるプログラムをさがしたり、教科書(きょうかしょ)を読んだりして、プログラミングしていきました。人工衛星に使う部品をパソコンにつないで、それを持って階段(かいだん)を登ったら、パソコンの画面で数値(すうち)が動いたんです。「ちゃんと動いてる!」って感動しました。自分が作りたいものをプログラミングしてみて、そして、思った通りに動かない「バグ」が直って、やっとプログラミングのおもしろさを覚えたんです。

自分の作りたいものを作ることが、プログラミングを面白くしたんですね。気になるコンテストの結果はどうでしたか?

結果は良かったんですよ!たしか20チームくらいの中で2位という成績でした。チームのみんなでやったんですけど、がんばったかいがありました。

はじめてのプログラミングで、これはすごいです。ところで、お休みの日は何をされているんですか? やはり研究?

本を読んだり、映画を見たり、かな。宇宙の映画があったら、必ず見ます(笑)後はよくねて…
料理もしますよ!最近はマグロとアボカドのづけ丼(どん)とか、豆腐(とうふ)のチヂミを作りました。花嫁修業(はなよめしゅぎょう)的な感じでがんばっています(笑)。

わあ、将来(しょうらい)の夢はお嫁さんですか?

もちろん花嫁にもなりたいし、もっと研究をして「博士」にもなりたいです。

新型補給機(ほきゅうき)を飛ばす、花嫁になる、博士になる、夢がいっぱいですね。では、ワイワイプログラミングに集まるみんなへのメッセージをお願いします。

自分が何を作りたいか考えて、それを形にできるのがプログラミングの楽しいところです。ぜひみんなも夢を想像して、ものを作っていってほしいです。プログラミングが苦手だったわたしでも、今こうやって宇宙(うちゅう)に関わる仕事をしています。ワイワイプログラミングに集まるみんななら、きっと夢をつかめると思います。がんばってください。

インタビューを終えて ワイワイプログラミング編集部・T

プログラミングができて、宇宙でかつやくしている女性…どんなスーパー理系(りけい)レディが出て来られるのかと思ったら、笑顔が素敵でとても気さくな話しやすい方でした。でも、「シセイセイギョ(姿勢制御)」とか「マットラボ(MATLAB)」とか、出てくる言葉はやはり理系(笑)。きっと、お料理も論理的(ろんりてき)でむだのないおいしい料理を作るんだろうな、マグロとアボカドのづけ丼おいしいそうだなあ、と思いながらお聞きしました。能美さんの夢をのせた新型補給機(HTV-X)が無事にミッションを果たせるよう応えんしてます!

これまでのお題

第3回
人の感情がわかるロボットを作る
柴原 伸泰(しばはら・のぶやす)さん

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第2回
「初音ミク」の生みの親、佐々木 渉
(ささき・わたる)さん

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第1回
JAXA(宇宙航空研究開発機構)で働く
研究者、能美 亜衣(のうみ・あい)さん

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