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佐賀 絵本 生きづらさ抱える子どもに「だいじょーぶ」伝える

ニュースただいま佐賀
  • 2024年01月22日

去年出版された絵本「だいじょーぶのほん」。
甘えてはダメ、友達がいないのは変といった“子どもの生きづらさ”に焦点を当てた絵本です。
作者は、佐賀市の似顔絵作家「しーこ♪」こと川久保静華(かわくぼ・しずか)さん。
自身も子どものころから生きづらさを感じてきたという川久保さん。
同じような思いの子どもたちの力になりたいという思いを取材しました。

絵本「だいじょーぶのほん」

絵本「だいじょーぶのほん」は、自分の気持ちを我慢するクマくんが主人公です。

絵本「だいじょーぶのほん」
絵本「だいじょーぶのほん」

あれー? ぞうさん男の子なのに
えんえん泣いてて 泣きむしだー

絵本「だいじょーぶのほん」

悲しいとき くやしいときは 泣いてもいいんだよ
なみだが出たら ほんのすこし こころがスッキリするよ

この絵本を描いたのは、似顔絵作家「しーこ♪」として活動する、川久保静華(かわくぼ・しずか)さん。

絵本の作者 川久保静華(かわくぼ・しずか)さん

(作者 川久保静華さん)「自分の気持ちを言うのが恥ずかしいって思っていたり、泣いたり怒ったりしたらダメだなとか 自分をダメってしばっている子に読んでもらって心をほどいてもらえたら」

川久保さんは、HSP(ハイリ―・センシティブ・パーソン)と呼ばれる、感受性が非常に高く周囲の刺激に敏感な気質です。自身の経験などをもとに絵本を作りました。

HSPの気質があると話す川久保さん

川久保さんの本業は、似顔絵作家
似顔絵は、対面ではなく、事前に送ってもらった写真を見ながら描きます。

依頼者からの写真

対面だと、見られることに緊張して集中できなくなるためです。

写真をもとに描く似顔絵

子どものころから繊細で自分を責めやすく、「怒ってはダメ」などと感情を抑えていた川久保さん。
小さいころの我慢は大人になっても自分をしばっていることがあるといい、子どものうちに解消してほしいと考えています。

小さいころの川久保さん

絵本のなかには、「学生時代の大きな悩み」だったという場面が。

絵本「だいじょーぶのほん」

リスさんが ひとりぼっちでごはんたべてる
ともだちいないんだ かわいそうだなー

学生時代「グループ」が苦手だったという川久保さん

(川久保さん)「移動教室とかお昼ご飯の時間とか 一人でいたら恥ずかしいから無理して笑ったりグループに入ったりして辛い経験があった」

絵本には、当時の自分にかけたかった言葉を書きました。

絵本「だいじょーぶのほん」

わたしは かわいそうじゃないよ
ひとりでいるのも好きだから いいんだよ

絵本「だいじょーぶのほん」

ムリしてみんなの輪の中に入ろうとしなくても よかったんだ!
ひとりが好きでも みんなが好きでも いいんだね

子どもにとって絵本がお守りになればと話す川久保さん

(川久保さん)「どっちがいいじゃなくて、一人もいいしみんなもいいしどっちもいいよねって。ちょっと不安になったときとか、おかしいんじゃないか、変わってると言われた時に“全然そんなことない自分は大丈夫”って思えるお守りみたいな存在になってくれたら」

去年12月に開かれた絵本の出版個展。

絵本出版個展の会場

絵本に込めた思いは、多くの子どもたちに届いていました。

好きなページを伝える女の子
絵本の感想を話す女の子

「(絵本を読んで)一人だったらダメなのかなって思った感じが少しだけ減った。少しだけほっとした」

三人きょうだいの長男という男の子。

「三人きょうだいの長男」という男の子

印象に残ったのは、「下のきょうだいが産まれても、甘えていいんだよ」というメッセージ。

絵本「だいじょーぶのほん」
甘えたい気持ちを我慢していたという男の子

「弟や妹が産まれるときに、これでお母さんにたくさん甘えられなくなると少し残念に思っていた」

絵本を読んで親子で話し合えたという

(子どもの親)「我慢させているとは思っていたが、どうしてもいちばん上にたくさん我慢させてしまっていた。絵本を読んですぐに私に“これからお母さんにいっぱい甘える”と言ってくれたので、考えさせられるところがあった」

川久保さんは、絵本が親子で気持ちを共有するきっかけになればと考えています。

絵本を読む親子を見つめる川久保さん
「絵本を通して親子で話し合ってほしい」と話す川久保さん

(川久保さん)「親御さん目線だと、子どもから気持ちを聞き出す 本当はどう思っているかとか意外な一面を知れるツールとして使ってほしい。お子さんからしたら、日頃言えない気持ちを恥ずかしがらずにじゃないけど話すきっかけにしてもらえたら」

絵本「だいじょーぶのほん」は、川久保さんの似顔絵作家としての活動名「しーこ♪」の名義で出版されています。
インターネットで購入することができます。

取材後記

話を聞いた子どもの中には、「これまで一人でいる子を見ると“かわいそう”と考えて声をかけていたけど、一人の方が楽しい人もいるのかもと思った」という声もありました。
絵本を通して、さまざまな人がいることを学び、友達の気持ちを思いやることにもつながっているようでした。

山﨑
キャスター

子どもたちに話を聞くと、自分の当時の気持ちもよみがえり、「この子たちと同じように、周りの目を気にしたり、我慢していたことがあったな」と涙が出そうになりました。大人になると忘れてしまいがちですが、子どもたちは子どもたちなりに、悩み葛藤していることを忘れてはいけないと感じました。
人一倍敏感で苦しい思いをしてきた作者の川久保さん。だからこそ、さまざまな立場の人の気持ちを考えることができ、一人一人の心に寄り添う絵本が完成したのだと思います。
絵本に詰まった川久保さんの温かく優しい気持ちが、多くの人に伝わりますように。

放送の動画はこちらから👇

  • 山﨑優里

    NHK佐賀キャスター

    山﨑優里

    佐賀4年目
    よく「明るい」と言われますが、実は気にしいな性格です。家で「ひとり反省会」をすることもしばしば・・・。

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