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はっけんラジオfrom佐賀 生活者目線で考える地域防災

~生活者目線で考える地域防災
  • 2024年01月10日

    生活者目線で考える地域防災

    11月10日(金)午後5時5分から、NHK佐賀放送局をキーステーションに「はっけんラジオfrom佐賀」を九州・沖縄向けに放送。
    ゲストに、佐賀県防災士会代表で、国土交通省が委嘱する気象防災アドバイザーの溝上良雄(みぞうえ・よしお)さんをお迎えし、NHK福岡の鹿野未涼キャスター、NHK佐賀アナウンサーの猪原智紀の進行で、「生活者目線で考える地域防災」をテーマに、地域が抱える災害時の課題と解決策について佐賀の事例をもとに考えました。

    避難へのハードルを低く~武雄市の取り組みから~

    猪原アナ

    番組前半でお伝えしたのは「避難へのハードルを低く」というテーマ。
    武雄市の事例を紹介しました。

    武雄市は2019年、2021年と2度の水害で大きな被害を受けました。
    そのうち、武雄市北方町の久津具地区は水に浸かりやすい集落で、2019年8月の大雨では3メートルの高さまで浸水。60世帯190人ほどの住民のうち約3割が高齢者ですが、避難が間に合わなかった住民はボートでの避難を余儀なくされました。

    度重なる災害を受けて、2023年3月、災害時には避難所にもなるという、コンテナハウスを活用した喫茶店がオープン。

    喫茶店 笑美屋(えみや)

    武雄市方々町の中心部にあって、過去に浸水したことのない場所です。
    入口にはスロープと手すりがあってバリアフリーになっています。
    大きなコンテナ2つ分、8メートル×6メートルの広さです。
    店の中心にはL字型の大きなカウンターがあるほか、テーブルが2つ、計10席あります。
    トイレは2畳の広さがあり、車いすのまま利用できます。

    鹿野キャスター

    どんな方でも利用しやすい工夫がたくさんあるんですね。

    溝上良雄さん

    子どもさんから高齢者まで幅広い世代の住民の方が、気軽に立ち寄りやすいという雰囲気が伝わってきます。
    地域の方の集いの場になっているということ、そして、子どもさんから高齢者までお互いの顔が見えているということが伝わってきますね。
    特にお年寄りは家に閉じこもるような傾向が強いので、喫茶店を普段何気なく訪れることによって、外出の習慣になって、本当に災害が近づいた時には、それが避難行動につながるのかなと思います。

    猪原アナ

    毎週通うお年寄りもいらっしゃいます。近所に住む90代の山口トヨ子さんは「普段は一人暮らしですので、お店はにぎやかでもあるし、人の出入りもあるし、安心して、いざという時はここに避難しようと思っています」と話しています。

    溝上さん

    お一人暮らしの方というのはなかなか外出しなくなるんですよね。気軽に行けるというのはいいですよね。避難所での不安というのは、一つは顔見知りがいないとか、また普段食べなれてない食事をそこでとらなきゃいけないというのがあるんですけれども、この施設はすべてクリアされていますよね。

    運営するのは、約20年前から地域の高齢者の介護にあたってきたNPO法人の介護事業所。代表の荒川千代美さんは、開設した狙いを「避難のハードルを低くし、住民の避難の初動を早くすること」と話しています。

    喫茶店を運営するNPO法人代表 荒川千代美さん

    荒川さんは喫茶店を運営するだけでなく、普段から防災教室などを開いて、施設を利用する高齢者に、防災について意識を高めてもらおうと努めています。
    先日も、地域に住む70代から80代前後の女性10人が参加して防災教室が開かれ、ペットボトルを使った雨量計を作りました。

    溝上さん

    日頃から親しくしている施設の方が身近にお世話されているということですよね。せっかく集まるんだから何か楽しみながらということで、物作りを通して楽しみながら防災意識を高めるということが大事ですね。

    鹿野キャスター

    普段から喫茶店に訪れる習慣が、災害時、避難のハードルを下げるということにつながりますよね。

    溝上さん

    避難所に避難するというのは高齢者にとっては実は難しいこと。
    日頃から外出する習慣を身につけて、通い慣れた喫茶店に来れば安心という意識づけができてます。避難へのハードルが下がります。平時から集いの場所を提供することで、そこに皆さんが集まることで、地域共生という目線で地域防災につながっているのかなと思います。普段のつながり作りから始まる防災です。

    荒川さんは、今後は高齢者、特に一人暮らしのお年寄りを対象にした避難訓練なども実施する予定です。

    どうする?災害時のペットとの避難
                ~大町町の取り組みから~

    日本では、現在、子どもの数より、飼い犬や飼い猫の数の方が多いとも言われています。
    環境省では、災害時ペットを連れて避難所に行くことを前提としています。
    ただ実際には各避難所で受け止め方や判断はまちまちの場合もあります。
    ペットと一緒に避難をしてもペットは別の場所で過ごすということも多いんです。
    災害時、いまや家族の一員とも言えるペットとの避難をどうするかについて考えます。

    猪原アナ

    鹿野さんは犬を飼っていましたよね?災害が起こって避難が必要になったときはどうしますか?

    鹿野キャスター

    確かに迷いますね。そもそも避難所に連れていっていいのかとか、周囲の方に迷惑をかけるんじゃないかとか、不安はありますね。

    災害が起きたときのペットとの避難についてお話を伺ったのは、NPO法人日本レスキュー協会佐賀県支部代表の岡武(おか・たける)さん。

    NPO法人日本レスキュー協会佐賀県支部代表  岡 武さん

    岡さんが所属しているNPO法人日本レスキュー協会は、1995年の阪神淡路大震災が起こった年に兵庫県で設立した団体です。災害救助犬やセラピードッグの育成・派遣を行っています。

    去年4月、日本レスキュー協会の佐賀県支部「MORE WAN(もあ・わん)」が、佐賀県のほぼ中央にある大町町に開所しました。
    モア・ワンとは、日本語で「さらにもう一つ」という意味ですが、ワンは犬のわんわんにも由来しています。
    本部と連携して、災害救助犬の出動拠点になっています。

    大町町にあるMORE WAN
    鹿野キャスター

    佐賀県ではどのような取り組みを行っているんですか?

    岡 武
    さん

    災害時に土砂や倒れた家屋の中にいる人を発見して吠えて知らせる災害救助犬を、この佐賀県でも育成をして派遣するという仕組みを作っていきたいなと思っています。本部は関西が中心なんですが、実は佐賀県とか大町町ってすごく民間と近いところにいてくれるんです。
    この地域での活動をすることによって、災害の時に、いろんな地域の情報とか課題などをもらうことができるんですよ。
    災害救助犬だけではない、ペットの避難などの活動にもつながっています。
    また、佐賀に拠点を置くことによって、お隣の福岡県、久留米などでの支援にもいろんなことができるということで、幅広く活動しています。

    2023年7月10日に県北部の唐津市で起きた土砂崩れの際も、災害救助犬が出動しました。

    猪原アナ

    岡さんも現地で救助活動に参加されました。岡さん、当時はどんな様子だったんでしょうか?

    岡さん

    私自身、20年位活動していますが、佐賀県では初めての災害救助犬を使った活動になりました。実はこれまで災害現場に犬を入れていくというのは難しい場面もあったんですけれども、佐賀の災害現場では、比較的スムーズに災害救助犬を投入することができました。

    溝上さん

    全国で初めての支部が佐賀県、しかも佐賀県の中心部に位置する大町町にできたということは、嬉しいですよね。しかもすでに7月の唐津市の土砂災害で活動されてるということ。住民の一人として非常に心強いし、佐賀にできたというのはありがたいことですよね。

    MORE WANの調べでは、人口6000あまりの大町町では災害時避難が必要な人のうち約2割がペットを飼っていて、そのうちの半分が「ペットを飼っている」という理由で避難所に行くことをためらっているという調査結果も出ています。
    MORE WANでは、災害時にはペットとともに避難することもできるんです。

    MORE WANの避難スペース

    MORE WANのメインのスペースは、2.5m×2.5mのテントを広げて、10組程が滞在できる広さがあります。
    屋内用のテントや段ボールベット、非常食なども備蓄しており、災害時には直ちに避難所として運営します。
    ペットのフードはあえて準備していません。
    避難をする場合は、ペットにもかなりのストレスがかかるため、普段食べなれているフードの方が安心してペットも食べられるからです。
    ペットのフードは飼い主に用意をしてもらいます。ケージの中で過ごせることが条件で、犬、猫の他にも小動物、うさぎや鳥、なども受け入れ可能です。
    この避難所では、一つのテントの中で、飼い主とペットが一緒に過ごすことが原則です。

    鹿野キャスター

    ペットとの避難、住民からどのような声がありますか?

    岡さん

    活動を続けていく中で、知らなかったという声がまだまだ多いです。ただ、伝える事によって、よかったとか、安心しましたとか、ぜひ活用したいという声があります。あとは、知ったことで、今後、避難にどうつなげていくか、前向きに考えるということも聞いています。

    大町町が任命している地域おこし協力隊の隊員、平田朱里(ひらた・あかり)さん(20)は、その「MORE WAN」に所属し、地域の重要な課題として、ペットとともに避難できる環境作りに努めています。

    大町町の地域おこし協力隊隊員 平田朱里さん

    平田さんに活動の様子を伺いました。

    平田朱里さん

    私は災害時に住民とペットが一緒に避難できるよう地域でペット防災についての講話を行っています。
    人とペットが一緒に避難できるポイントは実はシンプルです。
    犬や猫などの動物がケージに入る事にストレスを感じないようにしつけをしておくことが大切です。これだけでも、避難所で大人しく過ごすことができます。無駄吠えをしない、指示でケージに入る、決められた場所で排泄できるなど、いくつかの要点を押さえるだけで、人とペットが一緒に避難できるようになり、飼い主も安心だと思います。今後は一緒に避難するときに必要なしつけ教室なども積極的に開いていこうと思っています。

    溝上さん

    ペットは家族の一員です。ペットと一緒に避難できる場所があるということは非常に心強いです。しかも、施設を作るだけではなくて、どうしたら地域の避難所にペットと一緒に避難できるようになるのかということを、日頃からしつけなどについて住民に伝えてらっしゃるということで、さらに避難のハードルを下げたいという思いが伝わってきます。

    岡さん

    ペットを飼ってらっしゃる方は、もしも何かあった時には、犬や猫をどう連れて逃げるかということを普段から訓練とかしつけの中に組み込んでおいて備えておく必要はあると思います。
    ケージの中は実は安心なんですよ、ということを普段から伝えておくことが重要です。

    鹿野キャスター

    ゆくゆくは各自治体の避難場所に避難できるような体制作りをしないといけないということですよね。

    岡さん

    ペットは、日本国内の2割から3割の方が飼ってらっしゃるという意味では、もう無視できない数です。
    行政を含めて前向きに考えておく必要があると思います。
    大町町でモデルを作ることによって、これが、大町町の行政の中に広まっていきますし、それが隣町、佐賀県内、ひいては、九州、全国に広がっていけばいいなと思います。

    近所どうしの挨拶から始めよう

    はっけんラジオfrom佐賀、今回は、「生活者目線で考える地域防災」をテーマに、前半は、「避難へのハードルを低く」という観点で、喫茶店を防災拠点にして、地域の人たちが避難しやすい環境作りについて、
    そして後半は、「どうする?災害時のペットの避難」という観点で、災害時にペットと一緒に避難できるようにする取り組みについてお伝えしました。

    猪原アナ

    溝上さん、いかがでしたか?

    溝上さん

    防災は、まず近所同士の挨拶が重要です。まず挨拶をするということで、お互い相手を認めてるということなんです。
    そこから始めて、いざという時に協力する力が発揮できます。
    今回、一緒に考えたことを日頃から皆さんの生活に取り入れて、いざという時に備えて下さい!

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