「知っておきたい 甲状腺の病気」① ~体調不良と首の違和感がサイン~

24/05/28まで

健康ライフ

放送日:2024/04/29

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
荒田:荒田尚子(あらた・なおこ)さん(国立成育医療研究センター 診療部長)
聞き手:福島祐理 キャスター

甲状腺の病気にはどんなものが?

――日本甲状腺学会 監事で、国立成育医療研究センターの荒田尚子さんに伺います。
今回は甲状腺の病気にどのようなものがあるかうかがいます。そもそも甲状腺はどのような臓器なんでしょうか?

荒田:
甲状腺は首の前側、のどぼとけの下にある臓器で、重さはおよそ13g。この臓器から「甲状腺ホルモン」というホルモンが分泌されています。甲状腺ホルモンは細胞の新陳代謝を活発にしたり、交感神経を刺激して心臓の働きや体温を調節したり、胎児や子どもの成長・発達を促したりするために全身で働いています。

――甲状腺は小さいですが大切な役割を果たしている臓器なんですね。この甲状腺の病気にはどのようなものがあるのでしょうか?

荒田:
甲状腺の病気には大きく分けて「甲状腺ホルモンの異常による病気」と、「甲状腺に腫瘍ができる病気」があります。気付かずにいると、病状が進んだり、生活の質が低下したりするおそれがありますが、多くの甲状腺の病気はきちんと診断を受け、適切な治療を受ければ健康に過ごすことができます。甲状腺の病気の特徴を知って見逃さないようにしてほしいと思います。

――まず甲状腺ホルモンに異常が起きるのはどんな病気なんでしょうか?

荒田:
甲状腺ホルモンが過剰につくられる病気はいくつかありますが、その代表が「バセドウ病」です。人口1,000人あたり0.2~3.2人といわれており、20~30歳代の女性に多く見られます。バセドウ医師にちなんだ病名で、以前はバセドウ氏病と言われたこともあります。
逆に甲状腺ホルモンが異常に少なくなる病気もいくつかありますが、その代表が「橋本病」。30~50歳代の女性に多く、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられるというふうにいわれています。橋本医師にちなんだ病名です。

甲状腺ホルモンが過剰につくられると「汗っかきになる」「疲れやすい」「息切れ、どうき」そして「イライラ」などの症状が出ます。
少なすぎると「冷えや悪寒」「だるい」そして「うつ気分」や「無気力」「記憶力低下」などの症状が現れてきます。

気づきにくい甲状腺の病気の見極め方

――対照的な症状が現れるんですね。ただ「冷え」や「だるい」など、これらはよくある症状なので、甲状腺に原因があることに気づきにくいかもしれませんね。

荒田:
そうなんです。困ったことにそれぞれの症状はよくあるものですし、症状がたくさんあるので「更年期障害」や「心臓病」「メンタルの病気」などと間違えられたり、加齢のせいと思われたりして放置して長く苦しんでいる方もいらっしゃいます。
ただ こういった症状がいくつか重なって長く続く場合は、甲状腺ホルモンの病気を疑ってほしいと思います。治療で症状ががらりと改善することもあるからです。
サインとなる症状に気がついた場合、いちど血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べてほしいと思います。基本的にはどのような医療機関でも受けることができます。

――症状がいくつか重なって長く続く場合は、血液検査を受けるといいということですね。
「バセドウ病」と「橋本病については、次回以降に詳しく伺います。
甲状腺の病気、もう1つは「甲状腺に腫瘍ができる病気」ですね。

荒田:
甲状腺の一部が塊やこぶのように大きくなるのが甲状腺腫瘍です。良性と、悪性の甲状腺がんなどがあります。甲状腺腫瘍のおよそ9割は良性のものといわれています。悪性腫瘍の多くは進行の遅いおとなしいがんで、適切な治療をすれば命に関わることは少ないです。

――悪性腫瘍・甲状腺がんの方はどれくらいいるのでしょうか?

荒田:
年間1万8,000人以上の人が甲状腺がんと診断されています。男女比は約1:3で、やはり女性に多く見られます。実は甲状腺がんになる人はこの40年で4倍以上に増えているというデータがあります。これは、がんの発生が増えているというより、検査の精度が高くなったことと、診断の機会が増えた結果、多くの甲状腺がんが見つかるようになったためです。

――甲状腺に腫瘍ができると、どんな症状が現れるんですか?

荒田:
良性の腫瘍は基本的に症状がありません。腫瘍が大きくなると首に「しこり」や「違和感」があったり「太く」なったように感じたりする人もいます。
悪性腫瘍の初期はほとんど症状がありません。検診やほかの病気で診察を受けた際に偶然発見されるということが多いです。進行すると「首の腫れ」や「しこり」、「物を飲み込むときの違和感」「声のかすれ」などの症状が出てきます。首に違和感がある場合は医療機関で検査をしてもらいましょう。

――甲状腺腫瘍についても次回以降に詳しくお伝えします。では荒田さん、きょうのポイントをお願いします。

荒田:
体調不良が続く場合や首に違和感があるような場合は、甲状腺の病気を疑ってみてください。


【放送】
2024/04/29 「マイあさ!」

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