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岡山発 【特殊詐欺】巧妙な手口の実態は?被害者が証言

NHK「もぎたて!」 リポート
  • 2024年01月22日

「電話を切らせてもらえず、冷静に考えられなかった」
犯人からの指示で30万円分の電子マネーを購入させられ、特殊詐欺の被害にあった女性の証言です。犯人との電話中に何度も詐欺を疑ったという女性は、それでも被害にあってしまいました。その話から見えてきたのは、相次ぐ特殊詐欺の巧妙な手口でした。 
(岡山放送局記者 内田知樹)

「有料サイトの利用料が未払い」きっかけは1本の電話

令和5年10月、岡山県南部に住む60代の女性の携帯電話に1本の電話がかかってきました。
相手は、NTTファイナンスの社員を名乗り、「有料サイトの1年分の利用料金、30万円が支払われていない。サイトの運営会社があなたを相手取って裁判を起こしている。代わりに支払っておいたのでお金を送ってほしい」と話しました。
30万円の利用料金は身に覚えはなかった女性ですが、犯人は「間違えて登録してしまったのではないか」などと話したということです。

特殊詐欺の被害にあった60代の女性

(女性)
「過去に知らないサイトにアクセスしてしまったこともあったと話したら、犯人は『それがきっかけではないですか』と言ってきました。私は、携帯電話の操作にあまり詳しくなくて、だから自分のミスでサイトに登録してしまったのかなと思いました」

何度も詐欺を疑うも・・・

特殊詐欺という犯罪は知っていたので、犯人に「これは詐欺で、私をだまそうとしていない?」と何度も聞きました。しかし、電話口の相手は、誠実そうな口調で話を続けました

(女性)
「犯人は『いま30万円を支払っていただければ、あとで内閣府がお金を返してくれて実質1万5000円で済みます。電話を切ってしまったらその還付は受けられません』と言ってきて、電話を切ることができませんでした」

電子マネーの領収書

電話の相手はコンビニで30万円分を電子マネーカードで購入するよう指示してきました。女性は、携帯電話のスピーカー機能で電話をつないだまま車で近所のコンビニに向かいました。
高額の電子マネーの購入を心配した店員が声をかけてくれました。これまで電子マネーを購入したことがない女性は、あらかじめ犯人から「店員に心配されたら孫にせがまれたと答えるように」と指示を受けていました。そして、言われるがまま、10万円分の電子マネーカードを3枚、30万円分、買ってしまいました。
犯人に電子マネーカードの情報を伝えてしまったあと、番号を改めてよくみると知らない電話番号。そこで初めて特殊詐欺の被害にあったことに気がつきました。

相手の番号をよく見ることが大事

最初に着信があって、カードの情報を伝え、電話を切るまでの時間は約1時間半。この間、ずっと電話はつなぎっぱなしでした。女性は電話中、冷静に考えることができなかったと振り返ります。

(女性)
「自分は、特殊詐欺の被害にあわないと思っていました。被害にあった悔しさや悲しさもありますが、だます人もいるんだ、世間知らずだったという思いです。1度、電話に出てしまうと、とにかく電話を切らせてもらえなくて、冷静に考えることができません。電話に出る前に、しっかりと相手の電話番号が知っている人のものか確認することが大事だと思います」

警察「お金の話が出たら電話を切って」

警察によりますと、女性が被害にあった「NTTファイナンス」の社員を名乗る特殊詐欺事件が全国で相次いでいます。岡山県内でも、令和5年の1年間に約1億6900万円の被害が確認されています。
犯人は、自宅の固定電話だけでなく、携帯電話やSMSで接触してきます。
そして、▼有料サイトの未納料金、▼弁護士への報酬、▼保険金、▼慰謝料など、さまざまな名目で金を請求してきます。なかには、「あなたが犯罪に加担していないか確認するため口座にあるすべてのお金を1度預けてほしい」と指示され、高額な被害が出たケースもあるということです。
警察は、「相手が電話会社や官公庁の職員、弁護士や警察官を名乗っても、お金の話が出たら1度電話を切って家族や警察に相談してほしい。知らない番号からの電話には出ず、かけ直さないでください」と注意を呼びかけています。

  • 内田知樹

    岡山放送局記者

    内田知樹

    2021年入局
    事件や事故、西日本豪雨の取材を担当

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