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岡山から起こせ!生理革命

主人公は、公立高校の生徒3人組
  • 2023年08月18日

岡山で今、革命を起そうと奮闘している高校生がいます。その名も「生理革命委員会」。学校の授業から始まり、今や県を巻き込むまでになりました。取材を進めると、3人の仲の良さと熱意、そしてあふれる笑顔に出会えました!
(岡山放送局 ディレクター 鈴木 花)

エネルギーあふれる3人組!

主人公の3人組は岡山市立岡山後楽館高校に通う高校3年生。個性あふれる元気な3人です。 

左:澤田まりあさん 中央:山形萌花さん 右:山領珊南さん

学校の人気者で全体を見渡せる山領珊南(やまりょう・さんな)さん。言語化が上手でファッションリーダーの山形萌花(やまがた・もか)さん。そして、人前でも堂々と話せる澤田まりあさん。

クラスも性格も、将来の夢もバラバラな3人ですが、1年生の終わり、授業をきっかけに1つの目標を持つようになりました。それが『生理革命』です。

生理革命って、なんぞや?

生理革命のきっかけは、山領さんのあるひと言でした。授業の一環で興味のあるテーマについてグループ学習をしていたときのこと。「トイレに生理用品を置きたいんだよね」という提案に同じグループだった澤田さんも山形さんも「いいじゃん!」と即賛同したといいます。そこから3人の生理に関する猛勉強が始まります。生理の印象は?同年代の生理に対する知識は?日本における生理の貧困って?世界では?イベントへ参加したり、夏休みに集まって勉強したり、全校生徒に手作りのアンケートを配ったりと、3人で一緒にレベルアップしていきました。そんな経験を経てたどりついた目標が「トイレットペーパーと同じように置かれる生理用品」であり「生理について人前で話してもいい社会」です。

校内で実施した手書きアンケート 300枚近い集計も3人で分担!

この目標の実現=『生理革命』のために、さまざまな場で発信を続けています。今年2月には“県内の公立高校のトイレに生理用品を置くこと”を目標にクラウドファンディングで資金集めを開始したのです。約2ヶ月間で目標額を超える支援が集まりました。さらに6月には同内容を求めて、県教育委員会と県議会に書面を提出。そして7月上旬の県議会で全会一致で3人の陳情が採択されました!

県教育委員会に書面を提出する3人 緊張の瞬間だったそうです

生理が「ある人」「ない人」

ちなみに…。3人は活動の中で「男性」「女性」という言葉を使いません。生理が「ある人」「ない人」と表現しています。聞きなじみのない表現にその理由を尋ねると「活動の中でトランスジェンダーの方から“心は男なのに生理が来るたびに自分は女だと実感させられてつらい”という話を聞いて“生理がある女性”という言葉に傷つく人がいるんだと知って。それ以来、言葉一つ一つにも気をつけるようになったんです」と教えてくれました。いろんな経験を吸収してどんどんグレードアップしていくみんなの背中を大きく感じました。

関係性はアイドルでいう“メンバー”

今や学校の枠を飛び越えて活動する3人。イベントでは、趣旨や参加者の年代、持ち時間などを考慮し、伝える内容や方法を考えます。その話し合いはというと、驚くほどスムーズで積極的なんです!誰かが放った意見を見捨てることなく組み合わせてそのときの最適解を作り上げていきます。それも険悪なムードになることもありません。どうしてそんな話し合いができるの?と質問すると「3人一緒に生理に関する基礎知識を積み上げてきたからかな?それに3人ともポジティブなんで!」と笑顔で答えが返ってきました。そのあっけらかんとした口ぶりに驚いたのを覚えています。

活動拠点は学校の食堂!

もうひとつ衝撃的だったことに、

生理革命委員会にはリーダーがいません。それでもケンカすることなく同じ目標に向かって突き進める秘けつは互いを尊敬していることだと感じました。3人にお互いの関係性について尋ねると…

山領珊南さん

私は言葉が出てこなくて幼稚な説明になりがちなんですけど、萌花は冷静な判断が得意だし、まりあは説得力のある説明をしてくれるから、ほんっとに2人に助けられてるなぁって。

山形萌花さん

自分がイヤなこととか、グルグルグルグル考えてたりとかしたときに2人は、“ま、いっか!”みたいな感じ。
そういう明るさとか、良い意味での楽観的なところに救われることはありますね。言わないですけど2人には。笑

澤田まりあさん

私が不登校気味だったんで、2人が助けてくれて、代わりにやってくれて。でもそのことを全然嫌味とかじゃなくて、普通に“うちらがやればいいし”、みたいにやってくれて。すごく素敵な人たちだなって。

取材の後半、3人の関係性について「私たちは、アイドルでいうメンバーだと思います」と教えてくれました。「単なる友達でもない、かといって活動仲間というのも物足りない、それ以上の関係」。素敵だと心の底から思います。
澤田さんはこの秋からカナダ留学へ行きます。離ればなれにはなってしまいますがこれからも3人で活動を続けていきたい!と笑顔で語っていました。

取材後記「これが革命か!」

実は取材を始めた頃、3人の活動にあまり共感を持ち切れていませんでした。なぜなら生理に先入観を持っていたからです。「生理用品は自分で用意して“当たり前”」「生理の話は外でしないのが“当たり前”」。さまざまな当たり前に気づいていませんでした。取材中、ドキッとしたひと言があります。「トイレットペーパーはトイレにあるのに、なんで生理用品はないんですか?」確かに…。同じ生理現象なのになぜないんだろう。
3人と関わるうちに、これまでの“当たり前”と向き合っている自分、そして “生理って恥ずかしいことじゃない”と思い始めた自分がいました。“この変化はもはや、小さな革命なのでは?!なるほど、こうやって時代は変わっていくのか!”と実感もしています。そして、世の中を変えていくエネルギーを、3人は持っていると強く感じました。課題がないわけではありませんが、これからも革命家3人の勇姿を追いかけていきたいと思います!

番組のナレーションは山領さんが担当 2人も応援に駆けつけてくれました!
  • 鈴木 花

    岡山放送局 ディレクター

    鈴木 花

    生理革命委員会の3人とは10歳差の入局4年目。熱中ごとに奮闘する若者たちを取材・応援しています!

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