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障害児の家族を支えたい
川又優キャスター
2023年09月22日 (金)
人工呼吸などの介護が必要な医療ケア児など、障害がある子どもたちを支える家族たち。実は意外と支援の手が行き届いていない面があります。こうした家族を支えたいと自らも医療ケア児の母親という女性たちが立ち上がりました。どんな支援を行っているのか密着しました。
野菜たっぷりのサンドイッチ。このサンドイッチ、ある家庭に届けられるものです。届ける先は、介護が必要な子どもがいる家庭です。
この活動を行っているのが。
安藤歩さんです。ことし6月から仲間たちとこの活動を始めました。
(安藤歩さん)
「ピンポン鳴らす前に出てきてくれて、待っていてくれるのがうれしい」
目が離せない在宅介護の日常
安藤さん自身も医療的ケア児の母親です。
15歳の娘の那月さんです。3歳の時にかかった病気が原因で人工呼吸器をつけるようになりました。
安藤さんは1~2時間おきに那月さんのたんの吸引を行うほか、脈拍にも注意を払っています。脈拍は那月さんの体調を見るための重要なバロメーターで、いつもと違うと専用の機器から呼び出し音が発せられます。那月さんの介護に加え、家族の家族の食事や家事もあるため、自分の睡眠時間の確保もままならないといいます。
そんな安藤さんが那月さんのそばを離れられる時間があります。それは支援学校の訪問授業です。
那月さんのもとを週2回、支援学校の教諭が訪れます。授業が行われる1時間半、安藤さんは那月さんのそばを離れます。
その間も学校からの資料に目を通すなど、自分のことは後回しになりがちです。
(安藤歩さん)
「自分の体が資本だから大事にしないといけないけど、なかなか自分のために作って食べる時間はめんどくさいのとすごく疲れているからやりたくない。簡単に済ませちゃう生活です」
同じ悩みを抱える母親や家族を助けたい!
5年前、医療的ケア児者の親子サークル「ここから」を立ち上げた安藤さん。サークルでの活動の中で、自分と同じ悩みを持つ母親が多くいることを知りました。中には食事もままならず、口の中が口内炎だらけだという声も…。こうした母親たちをサポートしたいと、サークルのメンバーとともに、ことし6月から宅配サービスを始めました。
こちらがその仕組みです。 運営資金の一部はボランティア活動などを支援する金融機関の助成制度を活用しました。飲食業者から購入した食事や「フードバンク大分」からの提供されたジュースなどを障害者手帳を持つ子どもがいる家庭に届けるのです。
安藤さんは那月さんが利用するショートステイの時間を配達にあてています。活動は月2回、取材した日は大分市内の5世帯をまわりました。
配達を希望する家庭のもとへ
こちらの女性のもとには、さきほどのサンドイッチをはじめ、ジュースなどを届けました。女性はこのサービスを何度も利用しているということで、食事の面で助けられたといいます。
(利用者)
「ごはんを作るにしてもこだわりが強くて、イヤイヤ期だから食べてくれない。(でも、宅配は)自分もおいしいし子どもも結構食べるんですよね。1つストレスが減りました」
(安藤歩さん)
「頑張っているからこそ、それを『いらない』ってされたときのショックというか」
(利用者)
「だからってスーパーとかコンビニのもののほうが食べたりするけど、それじゃ…」
配達を行うもう1つの目的。それは“つながり”です。介護ならではの悩みを共有したり、情報交換を行ったりします。介護中心の生活の中でどうしても外とのつながる機会が少なくなりがちな中、安藤さんたちが訪れることで気分転換が図られることも。
(利用者)
「届けてもらえるのも助かるけど同じ障害児を育てているママで、同じ境遇の方と会話するだけで『自分だけじゃないんだ』、『頑張ろう』って思える」
こちらの女性も食事の面で助かっているといいます。
(利用者)
「うちはこのままでは難しいので切ってあげる。まずメニューを考えなくていいっていうところと買い物にしなくていいし、ちょっとした楽しみができるからそれが本当にうれしくて」
こうした声を聞くことで、安藤さんもやりがいを感じています。
(安藤歩さん)
「自分たちが助かる部分でと考えているので、ほかの人たちにとってもよかったと思ってもらえるのはうれしい」
家族への支援、さらに広がって
医療的ケア児や障害がある子どもを支える家族がいる。安藤さんは子どもたちに加え、家族の現状にも目を向けてほしいと考えています。
(安藤歩さん)
「こういうふうな現状があることを知ってもらう機会にもなるしそこでいろんな支援の手が広がっていくというのもそうだし、福祉のサービスが広がっていくとうれしいと思います」