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長岡 大学の実習をメタバースで!?

  • 2023年07月04日

各地で活用が進むインターネット上の仮想空間=メタバース。大学の実習にメタバースを生かそうという長岡技術科学大学の取り組みを取材しました。
(新潟放送局 豊田光司記者)

ものづくり×メタバース=???

こちらは長岡技術科学大学にある「DXものづくりラボ」。デジタル技術の進歩によってものづくりの現場に訪れる変化について学生が学ぶための施設です。
 

例えばこちらの歯車もこれまでは1つ1つのパーツを組み合わせないと作れませんでしたが、3Dプリンターを使うことで、データを基に手間を少なくして作れるようになりました。

ことし3月、大学ではこの施設をメタバースに再現。それがこちら。

最初の画像と見比べてももそっくりです。こちらでは歩いたりジャンプしたりできるほか、棚に置いてあるものやホワイトボードの文字など細かいところまで再現されています。

学生とともに開発した岩間正俊特任教授。本物そっくりの施設を再現することで新型コロナウイルスや大雪などで実際に大学に来られない学生に学ぶ機会を与えられないかと考えたと言います。

長岡技術科学大学 岩間正俊特任教授
遠隔授業を取り組んできて、できることとできないことが明確化してきた。実習を伴うもの、実際に機材を使って何かするということはできない。VR化(仮想現実に)することで何か得られるのではないかという発想に基づいてこういう取り組みをした

実現した没入感と相互性

施設を特殊なスキャナーで読み込み、空間を点として捉えてデータ化。点の数はなんと2500万。細かい点によって、臨場感のある本物そっくりな空間に仕上がっています。

さらにこちらにいるアバターと呼ばれる分身。本物の学生を200台のカメラで撮影したデータを基に作られています。そして、この空間の最大の特徴が…。

長岡技術科学大学 岩間正俊特任教授
こちらで電気をつけると、向こうもつく。向こうがついているのを消すとメタバース空間上のも消える。この逆もできることになっていて。

インターネットを通じて互いに機械を動かし合えること。つまり仮想空間と現実空間がつながっているのです。このような技術は世界で初めてだと言います。

操作盤はパソコンのキーボード。ふだん使い慣れているものにすることで、大学に来られない学生も受け入れやすいのではないかと考えています。

施設を利用する学生
パソコン上に自分がふだん所属している施設があるのはすごく違和感が最初あったが、別のところでも自分の研究が進められるのはすごく便利でいい。

施設を利用する学生
メタバースで最初からもの自体を触ったことがなくても直感的に操作できることに利点があると感じている。

長岡技術科学大学 岩間正俊特任教授
幸いにもパンデミックは明けたような形になっているが、実態としていろんな理由で学校に来られない学生もいて、そういう人も実習に参加できるというところで、教育の場を提供できると期待している。ものづくりの楽しさは本物が出てくることなので、(メタバースが)これだけの没入感を持っているのがそのよさを持っていると思う。

実用化に向けて続く開発

岩間さんたちはさらなる没入感を得られるように、空間内でコミュニケーションを取れるような仕組みをいまも開発しているということで、早ければ来年度から大学の実習で活用することを目指しています。一方で、この技術を活用することで、教育の現場だけでなくものづくりの現場の手助けになれるのではとも話しています。

長岡技術科学大学 岩間正俊特任教授
ものづくりの現場で大きな問題は人が採用できないという問題もある。理由の1つに、何らかのかたちでそこの場から離れられないというところがあると思う。遠隔地から自分の能力を発揮できる場を作ってあげるということができるなら、社会的にも意義があって社会実装していくべき技術なのかなと思う。

教育現場からスタートした今回の試みが、ものづくりの現場の課題解決にもつながっていくのか、注目していきたいと思います。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に、2021年11月からは長岡支局で中越地方などの取材を担当。

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