ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. 打倒山形!?ラーメン消費額日本一奪還へ 新潟の店主らが議論

打倒山形!?ラーメン消費額日本一奪還へ 新潟の店主らが議論

「新潟5大ラーメン」普及なるか
  • 2023年06月21日

新潟あっさりしょうゆ、新潟濃厚みそ、長岡しょうがしょうゆ、燕背脂、三条カレーラーメン。これらはラーメン王国・新潟が誇る「新潟5大ラーメン」として地域に根づいています。ただ、去年1年間の家計調査で新潟市のラーメンにかけた外食費用はライバルの山形市に次ぐ2位となり、2年連続での日本一とはなりませんでした。しかし、この結果を受けて県内のラーメン店主が集結。日本一奪還に向けた戦略を議論しました。(新潟放送局記者 米田亘)

県内のラーメン店主ら 約80人が集結

2023年6月20日、新潟市内のホテルで行われた「新潟拉麺シンポジウム」。新潟県のラーメン店でつくる「新潟拉麺協同組合」などが主催し、会場には新潟ラーメンを提供する店主らおよそ80人が集結しました。県内のラーメン業界のシンポジウムでこれだけの人数が集まったのは、これが初めてでした。

自らの店舗を営業し多忙をきわめるなか、なぜこの催しが実現したのか。それは「新潟のラーメンを日本一に押し上げたい」という熱い思いからでした。

新潟拉麺協同組合 安部恭朗 代表理事
ラーメンの消費額で山形市と1位を争ったことで、全国で注目されました。これをきっかけにして県外からも新潟のラーメンを求めに来てもらえたら。そのためには、店主どうしの連携を強固にして盛り上げていく必要があります。

安部代表理事が述べた「ラーメンの消費額」とは、2023年2月発表の総務省の家計調査結果を指しています。去年1年間にかけたラーメンの外食費用で、新潟市は山形市に次ぐ2位となり、2年連続の日本一を逃しました。この結果を受けて、店主の間で危機感が高まっていたのです。

宇都宮餃子の盛り上げ役「ライトユーザーの心をつかめ!」

協同組合宇都宮餃子会 鈴木章弘 専務理事

はじめに「新潟ラーメン」の地位向上に向けたヒントを探るため、宇都宮市でギョーザの消費拡大に取り組むギョーザ店の組合の鈴木章弘専務理事を招き、基調講演が行われました。

このなかではまず、統一感のあるブランディングを目指すため、「宇都宮餃子」の共通ロゴのデザインに着手し、認可を得たギョーザ店のみが使えるようにしたことが説明されました。

その上で、新たな宇都宮餃子のファンを生み出すためには、店舗への来訪回数が1~2回程度で若い女性などを中心とした「ライトユーザー」の心をつかむ必要があると述べました。

協同組合宇都宮餃子会 鈴木章弘 専務理事
ブランド戦略を練る上で、まずギョーザのネガティブイメージを洗い出しました。にんにく臭いとか、油っぽいイメージは女子ウケが悪いと。そこで、ライトでカジュアルでヘルシーなイメージづけを意識しました。特許庁に何度も足を運び、商標登録に成功しました。

協同組合宇都宮餃子会 鈴木章弘 専務理事
食品メーカーにも組合から積極的に声をかけ、「ギョーザ味」のスナック菓子やパンなどのコラボ商品の開発につなげました。さまざまな宇都宮餃子を一度に味わえる「宇都宮餃子祭り」も行い、毎年イベントの規模を広げて発信力を高めました。さらに、宇都宮を「ギョーザのまち」にするためには、ごま油などの香りがするだけでは足りないと思い、店舗が並ぶエリアを「餃子通り」と名付けギョーザのモニュメントなどを街なかに飾り付けるなどして、次々とブランド戦略を打ち出していきました。

新潟のラーメン関係者で議論「熱意持って官民連携を」

このあと「新潟ラーメンのこれからの発展と可能性」をテーマに、ラーメン店の経営者や、長年ラーメン店を取材する地域メディアの社員ら、それに鈴木さんも加わったパネルディスカッションが行われ、熱い議論が交わされました。

「新潟ラーメン伝道師」 片山貴宏さん

地域メディアでラーメン取材「ラーメン伝道師」片山貴宏さん
山形市は国の公募に「ラーメンの聖地」として応募して市が聖地を宣言したり、統一したラーメンの「のぼり」を作って掲げたり、ラーメン関連のイベントを多く行ったりと、行政との連携に熱心に取り組んでいます。新潟には1店舗ごとだと有名な店はたくさんあるので、「新潟5大ラーメン」などの多様性、店の多さを全国にもっと知ってもらえる「伸びしろ」や可能性があると思います。

ラーメン店経営 松本潤一さん

ラーメン店経営 松本潤一さん
「おいしさ」の部分では、みなさん十分おいしいラーメンを作ることができています。あとは官民連携の部分だと思います。官民をつなぐ、ブルドーザーのように強引にでも動かしていくような熱意が新潟には足りていなかったのかなと。そこにメディアなども入って一体となって盛り上げていくべきだと思います。

雑誌「月刊にいがた」霜鳥彩 編集長(一番左)

雑誌「月刊にいがた」霜鳥彩 編集長
きょうは多くのラーメン店主の方が集まりましたが、組合に所属しているのはまだ8店舗にとどまっていると聞きました。これではもったいない。店舗どうしで手を取り合い、団体として消費喚起の対策を考えていくことが重要ではないでしょうか。新潟と山形で売り上げ杯数を競い合う「ラーメンバトル」や「A店の看板食材でB店がラーメン開発」などのコラボ企画、組合のホームページでA店の店主が別の店のおすすめラーメンを紹介する取り組みなどがあっても面白いのではないでしょうか。

このほか、協同組合宇都宮餃子会の鈴木さんからは県外の人からの見え方として「新潟5大ラーメンは県外にはあまり知られていない」と指摘したうえで、さまざまな新潟ラーメンを同時に味わえるイベントの開催などを、ある程度採算を度外視してでも開催すべきだと述べました。登壇者からは「県外にも発信力のある“新潟ラーメン大使”などを任命してもよいのでは」といった案も出ました。

白熱したパネルディスカッション。質疑応答では、これに呼応するように各店舗の店主らから次々と意見が出ました。

すでに裾野が広がっている新潟ラーメンを1つのブランドにまとめていくのは難しいかもしれません。ですが、新潟ラーメンを食文化として根づかせ、エンターテインメント的に盛り上げることはできると思います。山形のラーメン店の店主と話す機会もありますが、考え方は同じでした。盛り上げによって生まれた「爆発力」をどう生かしていくかも重要になってくると思います。

新潟のラーメンがいちばん美味しいと思っています。「これが新潟ラーメン」というのが無くても、長岡花火とか、県外から客が来るタイミングで新潟ラーメンを知ってもらうような仕掛けも重要なのではないでしょうか。

若い人たちがラーメン店開業などの夢を持てるように、環境を整えてほしい。若い世代でもラーメンの腕がある人はたくさんいます。もう少し若者のコミュニティなどを意識した取り組みも進めてほしい。

シンポジウムの終了後、登壇したラーメン店経営の松本さんに、今後に向けた思いを聞きました。

これほど多くのラーメン店主が集まって議論できたことは、全国に新潟ラーメンをアピールしていく上での第一歩になったと思います。持っている商材としてはすでに十分に力はあります。ラーメンの消費額は1位になったときの喜びより、2位に下がったときの悔しさの方が大きかった。コメと酒はすでに全国区になっているので、次はラーメンだと。関係者がスクラムを組んで、来年は1位をとりたいと思います。

取材を通じて

新潟ラーメンの発展に向けて、本格的に動き出したラーメン店主たち。取材のなかで関係者が次々に口にしていたのは「消費金額のランキングはあくまでランキングにすぎない。大切なのはこれをきっかけに業界を盛り上げていくことだ」という言葉でした。

ランキングが1位であれ2位であれ、新潟県民やラーメン店主がラーメンを愛していることが十分伝わってきましたし、その熱意こそがいちばん大切なことだと感じました。新潟ラーメンの「いちファン」としても、これからの動きに注目していきたいと思います。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。一次産業を中心とした経済取材を担当。好きなラーメンは背脂系です。

ページトップに戻る