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「トキ点描」命育む鳥 ―冬―

大山文兄
  • 2023年02月13日

トキ写真集はこちら → https://www.nhk.or.jp/niigata/toki/?cid=orjp-ala150

冬は恋の季節

新潟県佐渡市で、国の特別天然記念物のトキ10羽が初めて放鳥されてから今年の9月で15年です。今年の佐渡は例年以上の積雪量ですが、トキたちは日中凍りついた水田を避け、湧き水で凍ることのない山中の水田や用水路などでエサとりをおこなっています。そして、寒さの中でも恋の季節をむかえ、次の世代に命をつなぐ繁殖行為も確認され始めています。

あのきれいな羽根が…
トキは繁殖に向け求愛期にはいると、首周辺の皮膚から剥がれ落ちる黒い物質を水浴びなどの際に羽にこすりつけ、頭から背中にかけて羽の色が灰色に変化します。

こうすることで自分が繁殖可能なことを示すとともに、営巣時の保護色になると考えられています。折角きれいな「とき色」の羽ですが、こんな変化を行う鳥の仲間は世界でもトキだけだそうです。 

様々な愛情表現
そして、クチバシを使ってオスが枝や枯れ草をメスに渡す「枝渡し」や、お互いに羽繕を行う「相互羽繕い」、交尾に似た行動を別の個体に見せつけるように行う「擬交尾」などが観察され始めています。

愛情表現として枯草や枝をくちばしで渡す「枝渡し」
くちばしでお互いを羽繕いする「相互羽繕い」
交尾に似た行動を別の個体に見せつける様に行う「擬交尾」

トキは前年ペアだった2羽が翌年もペアとなることが多く、繁殖に成功している場合には同じ営巣林を使うことが多いそうです。

こちらが恥ずかしくなるような仲のよさです

トキの巣作り
2月中旬を過ぎると、トキのオスが大きな枝を巣材として運ぶ「枝運び」という行動が観察されはじめます。10分から20分間隔で枝を拾っては営巣林に運び込みますが、中には自分の背丈よりも大きな枝をくわえ途中で落としてしまったり、枝が重く傾きながら飛ぶ姿を観察することもあります。トキが枝をくわえたまま長距離を飛ぶことは稀なため、近くにはトキの巣がある可能性があります。

枝をくわえて飛び上がったもののバランスが悪く…

今年の繁殖期は昨年末の大雪による倒木で、これまでの営巣木が使えなくなっている可能性があります。そのため新たな場所での営巣も十分考えられるため環境省は、今までトキを見かけたことのない場所でもし目撃した場合には、トキ目撃フリーダイヤルまで(0120-980-551)連絡してほしいとしています。そして私も今年こそは我が家の防風林に‥そんな期待を抱きながら撮影を続けています。

水浴び後に首を回しながら黒い物質を塗り広げます
黒サンショウウオをペロリ
冬でも凍らない湧水の池で、ザリガニをペロリ
自分の背丈より高い枝を巣に持ち帰ろうと
  • 大山文兄

    NHK新潟・佐渡支局記者

    大山文兄

    トキの野生復帰を東京の新聞社で11年間取材。トキに魅せられ2020年に退社し佐渡島に移住。2022年4月からNHK新潟・佐渡支局の記者として佐渡の魅力を発信。

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