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新潟県の子どもの運動能力高いのはなぜ?「新潟Q」で調査

  • 2022年10月06日

新潟県民は運動能力が高いー。令和3年度に公表されたスポーツ庁の運動能力に関する調査では、中学生の男子は全国1位、女子は4位。しかも、この年だけ数値がよかったわけではなく、過去のデータからも同様に新潟県は上位の傾向が続いています。背景には身長が高い、朝食をとるなどの生活習慣、学校現場の工夫などがあるようです。
(新潟放送局 阪本周悠 記者)

中学生男子は全国1位・女子は4位

平成21年度から始まったスポーツ庁実施の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」。
シャトルランやボール投げなど8種目を通じて子どもの運動能力を調査したものです。
こちらは新潟県の過去10年の結果です。

 

小学5年生

中学2年生

男子

女子

男子

女子

平成24年度

4位

4位

2位

6位

平成25年度

2位

4位

3位

5位

平成26年度

2位

3位

3位

5位

平成27年度

3位

3位

3位

6位

平成28年度

6位

4位

3位

6位

平成29年度

6位

4位

4位

6位

平成30年度

6位

4位

3位

4位

令和元年度

8位

6位

4位

4位

令和2年度

新型コロナウイルスの影響で未実施

令和3年度

7位

6位

1位

4位

スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を新潟県が整理

データを見ると、長年新潟県は全国で上位です。直近の令和3年度は、中学2年生の男子が全国1位となりました。

小学校は「男子 50m 走」を除いて、男女とも全種目で全国平均値以上、中学校は男女とも全種目で全国平均値以上となっています。

仮説①体格がいいから?

なぜこうした結果が出たのか。いくつかデータを調べながら仮説を検証してみました。

そのうちの1つが「体格」。

新潟県の子どもは身長が高いという国の調査結果があります。

令和2年度 新潟県の子どもの身長
(文部科学省「学校保健統計」より)

区分

幼稚園

小学校

5歳

6歳

7歳

8歳

9歳

男子

111.0
(31位)

117.3
(22位)

123.6
(13位)

128.8
(26位)

134.2
(25位)

女子

110.3
(29位)

116.5
(19位)

122.4
(22位)

128.0
(26位)

134.9
(13位)

令和2年度 新潟県の子どもの身長
(文部科学省「学校保健統計」より)

区分

小学校

中学生

10歳

11歳

12歳

13歳

14歳

男子

140.2

(15位)

146.6

(20位)

153.4
(29位)

161.5
(16位)

166.7
(6位)

女子

141.5

(17位)

148.0

(21位)

152.3
(25位)

155.8
(2位)

156.9
(11位)

令和2年度 新潟県の子どもの身長
(文部科学省「学校保健統計」より)

区分

高校生

15歳

16歳

17歳

男子

169.5
(8位)

170.9
(1位)

171.4
(3位)

女子

158.1
(3位)

158.5
(2位)

158.4
(6位)

16歳の男子は1位、女子は2位となっています。こうした身体的な特徴が運動能力にも影響している可能性があります。

仮説②生活習慣?

生活習慣が影響を与えている面もあるかもしれません。こちらもスポーツ庁の調査。

令和3年度 生活習慣に関する調査
(スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」より)

区分

小学校

中学校

男子

女子

男子

女子

朝ご飯を毎日食べる割合

84.6%
(5位)

83.5%
(8位)

84.9%
(4位)

80.5%
(5位)

睡眠時間が6時間以上の割合

97.5%
(4位)

98.7%
(3位)

94.2%
(4位)

91.7%
(3位)

新潟県の子どもは朝ご飯を食べる割合や、睡眠時間が6時間以上の割合が他の地域に比べて高くなっていることが分かりました。新潟県の子どもはよく寝て、よく食べるのか。確かに健全な体づくりには効果がありそうです。

違った傾向を示すデータも

体格や生活習慣だけでなく、そもそも運動する子どもが多いからではないか。

そんなことを考え何かデータがないか探ってみたところ、こんなデータも見つかりました。

令和3年度 新潟県の子ども運動時間(授業以外)
(スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」より)

区分

小学校

中学校

男子

女子

男子

女子

1週間の運動時間平均

470.88分
(40位)

309.52分
(41位)

718.59分
(34位)

524.07分
(27位)

令和3年度 新潟県の子ども運動部等への所属
(スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」より)

区分

小学校

中学校

男子

女子

男子

女子

運動部の所属割合

18.2%
(38位)

13.3%
(35位)

76.0%
(22位)

59.2%
(24位)

地域スポーツクラブの所属割合

51.6%
(20位)

36.8%
(16位)

17.0%
(30位)

10.6%
(23位)

こちらは全国平均並であったり、低い数字。すんなりとはいきませんでした。

データからは一概には判断できず、関係者に話を聞いてさらに取材を進めてみることにしました。

地道な工夫?

最初に取材したのは県教育委員会。運動能力が高いことについて「明確な理由は分からない」としつつも、各学校の工夫にヒントがあるのではないかということです。

県教育委員会 保健体育課 小畑智嗣 課長

県教育委員会 保健体育課 小畑智嗣 課長
以前は「体力の低下」が叫ばれてました。それを受けて平成14年ごろから、子どもたちの体力を伸ばしていこうということで「1学校1取組運動」をはじめ様々な取り組みをしてきました。そうした成果であったり、現場の先生方が地道に積み重ねて体力向上につながっているのではないかと思っています。

続いて、応用健康科学が専門の新潟大学の村山敏夫准教授を訪ねました。

記者

まず私が調べてきたデータについてお聞きします。
体格というのはどのように関わってくるのでしょうか。

村山准教授

体格がよければ運動テストが高くなるのは想像できますね。
影響を及ぼす要素だと思います。

記者

朝ご飯や睡眠時間などの生活習慣はどうでしょうか

村山准教授

文部科学省や農林水産省の研究結果があり、朝食の摂取率と体力に関係があることが報告されています。朝食をとることが体力を維持するということに関係しているのは明らかだと思います。

記者

運動習慣についてはあまり高くありませんでした。このデータはどのように見ればいいのでしょうか。

村山准教授

部活動をする、スポーツクラブに入っている、ここは大切な要素ですが、ここだけじゃなくて、子どもたちと関わる、子どもたちを取り巻く環境が大事だと考えています。

地域や社会の環境整備が大事

村山准教授は子どもたちが体を動かすための環境が地域に整っているかどうかが運動能力を考える上で重要だと指摘します。

新潟大学 村山敏夫准教授

新潟大学 村山敏夫准教授
体力を高めるために運動しよう、これは重要ですが、運動をするためにどんな環境を地域や社会が整備できるかが重要になってきます。様々な体を動かす機会、場面を作る。社会のいろんな場面で運動をしようという機会や場面がある。この点がすごく大事なことだと思います。

村山准教授の研究室では、地域の保育園などと協力し子どもの体力を測定するとともに、その結果を保護者や保育園と共有する取り組みを行っています。

実際の学校現場では

学校現場ではどのように受け止めているのか。

上越市の大町小学校が行っているマラソン大会を取材してみました。

校庭が狭いというこの小学校。子どもたちに体を動かす楽しさを感じてもらおうと、高田城址公園陸上競技場を借りてマラソン大会を実施しました。

子どもの運動能力が高いことについて、教師にどう感じているのか尋ねると…。

体育主任教諭
何かとっかかりがあれば、子どもたちは思い思いにのびのびと運動するようになるのかもしれないですね。体育だからとか、授業だからとかじゃなくて、学校全体で保護者とか地域とかが子どもと一体となって何か一緒に日々を作っていくのかな。

同じく上越市の南本町小学校では、去年創立130周年を迎えたことから校歌にあわせた創作ダンスを作成。体育の授業で取り入れられ、運動会などの行事で披露されています。

そのほか新潟県ならではの地域の特色を生かした取り組みと言えるのが冬のスキーです。新潟県では、上越や中越地方を中心に、全小学校の約40%で体育の授業でスキーが実施されています。

豊かな自然に囲まれる県内では、ジョギングやサイクリング、ハイキングなどを楽しめる環境の整備も各地で行われています。学校の授業も含め、体を動かすことが身近なものとしてあるということが、子どもたちの運動能力の高さにつながっているのかもしれません。

  •  阪本周悠

    新潟放送局 記者

     阪本周悠

    令和3年入局。主に上越地域を担当 公共交通や都市計画などに関心。日本酒が好き。

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