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コロナ禍の新潟「古町芸妓」19歳の新人 大舞台に挑む

  • 2022年10月11日

2022年4月に新潟の古町芸妓としてお披露目されたのは新潟市出身の舞衣子さん。新型コロナで活動の場が減る中、「踊りでたくさんの人を笑顔にしたい」と意気込んでいます。お披露目から約半年。古町芸妓が一堂に会する伝統の「ふるまち新潟をどり」で初の大舞台を踏むことになった姿を追いました。(新潟放送局 草野大貴 記者)

19歳 職業は「古町芸妓」

化粧をする舞衣子さん

鏡台の前で座る女性。表情にはあどけなさも残っています。手にしたおしろいを手早く顔に塗ると目元や唇に紅をさします。彼女は「古町芸妓」。2022年4月にお披露目されたばかりの19歳です。

「踊りで笑顔に」コロナ禍でも飛び込んだ憧れの世界

イベントで踊りを披露する舞衣子さん

生まれも育ちも新潟市の舞衣子さん。小学2年生から打ち込んだのは新体操。高校時代には県代表としてインターハイに出場するまでの技量に達しました。大学進学も考えましたが、舞衣子さんが選んだのは幼い頃から憧れていた「古町芸妓」の道でした。

舞衣子さん 
明和義人祭で『古町芸妓』を見る機会があり、美しい所作や可憐な舞に子どもながらも感動したのを覚えてます。伝統を自分も受け継いでみたいし、自分が抱いた感動をまた誰かに同じように思ってもらいたいと思いました。

舞衣子さんが進路を決めたのは新型コロナが全国各地で猛威を振るい続けた時期と重なります。地域経済が大きな打撃を受け、ふるさとの新潟が苦境に立つ中、舞衣子さんは幼い頃に憧れた「古町芸妓」の伝統の踊りで多くの人たちを笑顔にしたいという思いが強くなったといいます。

舞衣子さん 
新型コロナの影響が続く中、「誰かの支えになれたらいいな」とか「誰かを笑顔にできたらいいな」という思いが自分の中にあって、自分の踊りを見てくれる人たちの笑顔を見たいと思いました。

「古町芸妓」実は会社員です

通勤する舞衣子さん

江戸時代からの歴史があり、北前船の交易地として栄えた港町 新潟の文化を今に伝える「古町芸妓」。その特徴の1つは組織の仕組みです。「柳都振興」という株式会社があり、会社員として入社することで古町芸妓になります。各種保険や有給休暇などの福利厚生が整えられていて、多くの若手がこの会社に所属しています。舞衣子さんも面接などを経て入社したそうです。

伝統の公演で「初舞台」 わずかな所作にも指導

稽古では細かな所作にも指導が入る

お披露目から約半年。舞衣子さんにとって初めての大舞台に立つ機会がめぐってきました。ことしで34回目を数える「ふるまち新潟をどり」です。「古町芸妓」の高い技量を示す場として長年親しまれてています。今回踊るのは「松づくし」という演目です。3人の先輩とともに扇子を使って様々な松を表現します。
9月上旬、新潟市内の稽古場には踊りの稽古に励む舞衣子さんの姿がありました。新潟市の無形文化財にも指定されている市山流の踊りを七代目家元の七十郎さんから学びます。本番を2週間後に控えたこの日、稽古にいっそう力が入っていました。
扇子は無駄に持ち替えるなよ」。七十郎さんが檄を飛ばします。松の描かれた扇子の使い方が見所なだけに細かな所作にも指導が入ります。舞衣子さんは1つ1つ確認しながら、より美しい踊りに向けた努力を続けていました。

七十郎さん
まず第一に扇子を落とさないことが一番ですけどね。それとやっぱり揃うということですね。1人だけ頑張ってもしかたがない。4人が1つの舞台で力を発揮してくれれば。

舞衣子さん
少し緊張しますが、扇子のちょっとした見え方も工夫しながら「すごかったね」「素敵だったよね」と言ってもらえるように踊りたいと思います。

初舞台に挑む

舞台上の舞衣子さん

本番当日の9月23日。新潟市にある新潟市民芸術文化会館には2回の公演に合わせて約700人が集まりました。
正午の開演とともに舞衣子さんが登場しました。観客の視線が集まる中、黄色地の鮮やかな着物に身を包んだ舞衣子さんは初舞台と思えないほど堂々とした姿で立っていました。七十郎さんから指導を受けた扇子の使い方は美しく、指導を受けていた部分を直し、先輩3人との息もぴったり初舞台の時間は約5分間。可憐にそして、りんとした姿に観客から盛んな拍手が送られました。

初の大舞台を終えて

舞衣子さん 
大きな舞台を見ていただくことができてすごくうれしかったですし、自分自身もおねえさん方と一緒に踊れたことがすごく楽しかったです。常に上を目指して、きょうよりも素敵な踊りを、たくさんの方に笑顔を届けられたらいいなと思います。

大舞台の直後でも現状に満足しない姿勢を見せた舞衣子さん。プロとしての自覚がかいま見えました。

編集後記
19歳でプロのたたずまいを見せる舞衣子さん。取材の際にも「古町芸妓」の伝統や文化に対する敬意を口にしていて、自身の憧れた「古町芸妓」を次の世代につなぎたいという強い思いを感じました。そして「プライベートでは料理を頑張りたい」とはにかむ姿も。今後の活躍がとても楽しみです。

趣味の三味線を手にする草野大貴 記者

実際に放送した動画はこちら

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  • 草野大貴

    新潟放送局 記者

    草野大貴

    新聞社を経て2019年にNHK入局。徳島局から2022年8月に新潟に赴任。趣味は長唄三味線。歌舞伎や文楽など伝統芸能に大きな関心。

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