ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. 新型コロナ全数見直し 専門家は懸念 状況に応じ柔軟対応求める

新型コロナ全数見直し 専門家は懸念 状況に応じ柔軟対応求める

  • 2022年09月26日

新型コロナ感染者の全数把握が見直され、市町村ごとの発表がなくなりました。専門家は身近なデータが得られなくなることで予防への影響を懸念するとともに、状況に応じて把握方法を柔軟に見直していくべきだと指摘しています。感染症対策が専門の新潟大学大学院の菖蒲川 由郷 特任教授に話しを聞きました。

県内では1割が感染?

Q県内では8月、1日に4000人の感染も確認されましたが、足もとの新型コロナの感染状況についてどのように見ますか?

下記グラフはNHK HPより(ここからNHKの新型コロナウイルス特設サイト新潟県のページに飛べます)

A菖蒲川 特任教授(以下Aはすべて菖蒲川教授)

オミクロン株の「BA.5」の波がようやく落ち着いてきているというところだと思います。
7、8月にかけてかなり大きな波、感染者数が多くなっていましたが、都市部からおさまる形で最初は東京や大阪といった都市部のダウントレンドがはっきりしてきた状況で、新潟も含めて地方では感染が多い時期がありました。それが地方もおさまって来ています。
新潟県も1日の感染者が3桁という日が続いているので、このままおさまってくれるといいなと思う一方で9月には3連休も2回あるので、人流が多くなることの影響は心配されます。
ただ、昨年も10月11月は嘘のように感染がない時期だったのでそのようなフェーズに入っていくのかなと思います。

Q要因は?

A

まずオミクロン株の感染力の強さ、BA.2よりもBA.5の方がより感染力が強かったことが感染拡大の要因。そのため、今まで感染していなかった層、例えば、小さな子どもまでかなり感染するようになった。地方の人と人の接触が比較的少ないような場所でもちょっとしたきっかけで感染が広がるということがあった。それが一周したということ。累計感染者は22万人を超えていて新潟県民の10%は感染したと推測されます。行政が把握できていないところで、感覚的にはその周りに感染者は2~3倍いてもおかしくないので、すでに3~4割の人が感染して免疫をもっているような状況ではないでしょうか。免疫を持っている人が周りにいれば感染が広がりにくい状況生じるので、多くの方が感染している状況では広がりにくくなってきたということだと思います。

全数把握見直しの意味合いは

Q全数把握が見直されました

A

かなり多くの人が感染する中で、医療機関とか保健所の負担を考えると全数を把握するための事務手続きにどこまで意味があるのかという考えがあった。(軽症患者などをケアする)フォローアップセンターも整備されて、準備が整ったということで全数の見直しに至っている。

毎日何千人と言う感染者が出れば、それぞれの保健所で何百人という単位、新潟市は1000人以上になるので当然、保健所や医療機関の負担はあったと思います。しかも、それが毎日のことで、さらにフォローアップしていくというわけなので、日々どんどん負担が積み重なっていく。実際に感染した方に話を聞いて見ても、保健所からの連絡が数日たってからようやく来るということが日常的にあったのでそういう意味でも、現在のオミクロン株はほとんどが軽症で終わるということならばそこまでカバーしてフォローする必要があるのかと。そういうところからも見直しが始まってきている。

発表方式変更で影響は

Q市町村ごとの感染発表がなくなることの影響は?

A

どのエリアでどのくらい流行しているのかがはっきりわからなくなることは懸念はあると思います。新潟県全体では何人感染者が出てるけどそれはどこだか全くわからないという状況で皆さんが感染防止対策を効果的にとれるかは確かに疑問です。リスクがある人にとっては当然感染してはよくない病気という状況は続いていく。それならば地域の感染状況は本当は知っていた方がいい。また医療機関もこの地域で流行しているかどうか把握できていた方がいいのは実際のところです。ただ今現在であまり重症化しないオミクロン株BA.5の状況ではその地域の感染状況を細かく知る必要がなくなってきてるというのも事実なのかもしれません。

Q三重県では市町村ごとの数字を独自に集計し発表を続けるが

A

本来はそのように地域別に感染状況がわかるのが理想だと思います。そのあたりは皆さんが必要性を感じて仕組みを作っていくと合意が得られれば、都道府県別にいろいろなやり方が見えてくる。全数把握の見直しを早めに始めてる自治体もあるので、どういった変化がおきてるか、重症患者の見過ごしとか、手遅れになることがないかとか、そういう状況を見ながらサーベイランス(感染症の発生動向調査)体制を整えていく議論が必要。

陽性者登録・フォローアップセンターの活用を

Q見直し後 感染者は不安もあると思いますが

A

今まで感染すれば保健所から連絡が来るとか「こうしてください」「ああしてください」と言われることで行政から把握されて見守られていた状況でした。それが自分で登録してくださいとかルールはあっても自主的なもの変わる。
新たに「陽性者登録・フォローアップセンター」が新潟県にも設置されるが、フォローアップセンターに登録しないと自宅で療養していても急に体調が悪化した場合にどうしたらいいか分からない、とにかく救急車を呼ぶとかいう事態にもなりかねない。まずはフォローアップセンターに登録して欲しい。

ただ、センターの周知が本当に十分になされるかは正直心配で、みんながみんなテレビや新聞を見ているわけでもないのでどこまで周知できるかは課題だと思う。市町村の呼びかけにもかかってくると思う。

柔軟に見直しも

Q見直しは賛成?反対?
A

正直議論が十分でない時点での(政府の)政治判断だったと思っています。ただ、9月26日からそうなるともう決まっているのでその上でどう対応するかだと思います。

今のオミクロン株BA.5のうちはこの体制でやっていけると思います。ただ、これが感染力がさらに強い変異ウイルスが出て流行してきた時にこの体制でいいかというとおそらく違うと思うんです。その時に柔軟に対応できるかとかそのあたりは常にきちんと議論していく必要はあります。

Q再び全数把握に戻すこともありえると?
A

そうですね。その柔軟性をもっていないといけない。

インフルエンザへの備えも

Qこれからはインフルエンザのシーズンでもあります

A

急に冷え込んできて別の呼吸器系のウイルス、RSウイルスなんかも増加傾向にあると聞いています。 インフルエンザもここ数年流行が全くない状況で、南半球では早くも感染が始まって大きな流行と聞いてるので北半球で起きる可能性は十分あります。とはいえ、まだ日本では全部マスクを外している状況ではないのである程度の流行はあると思うが大流行・爆発まではいくかはわからない。
ただ、新型コロナもインフルエンザも冬に感染が増える呼吸器系のウイルスです。主に飛まつが感染源なのでマスクや手洗いをすること、密を避けることは守ってもらいたい。ワクチンも新しいものが出てくるのできちんと接種することが必要かなと思います。インフルエンザもしばらく流行がない中で免疫が落ちてる方もいると思うので特に高齢者はワクチンをきちんと打つことが大事です。

Q最後に改めて注意喚起があればお願いします

A

全数把握の見直しによって、これまでちょっとしたかぜでもすぐ「新型コロナの検査しよう」となっていたのが、そのあたりも曖昧になってしまうのではないか懸念しています。「新型コロナであってもただのかぜなんだから別にうつしてもいい」という状況ではないからです。重症化する人は少なくても高齢者の中には重症化して命を落とす人がいるという本来の新型コロナの病原性がなくなったわけではありません。今まで高齢者は2回3回4回とワクチンを打って重症化を防いできてるのです。新型コロナは怖くないということも思ってしまうとそれは間違いなんじゃないかと思います。

また、いま都市部の方で感染がおさまってきた理由はほとんどの人が感染し、免疫が出てきてるのが大きな理由です。新潟県内なら新潟市や長岡市とか都市部にはある程度当てはまると思います。一方で、人口が多くない地域ではまだまだコロナとの接触が全くないという人もいると思います。感染が地域に入ると一気に広がるとか病院内とか高齢者施設で広がるという可能性があります。全数把握の見直しについ引きずられて新型コロナが終わったんじゃないかと勘違いすると新潟県では特に都市部と違って感染が広がるリスクがあると心配しています。

ページトップに戻る