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「友達作りはインスタで」? 新潟の高校生にコロナ禍を聞いた

  • 2022年05月13日

新型コロナウイルスの感染が拡大して3年目。中学校や高校ではコロナ禍に入学した生徒たちが最終学年を迎えている。かつての非日常がもはや日常となったいま、子どもたちは何を考え、どのように日々を過ごしているのか。
取材に協力してくれたのは新潟明訓高校。漫画「ドカベン」のモデルにもなった高校野球の名門校で、部活動が盛んで進学実績も高い「文武両道」の学校だ。話を聞くと、コロナ禍という大きな渦に翻弄されながらも、たくましく生きる高校生のいまが見えてきた。
(新潟放送局 記者 本間祥生)

 

中学校のお昼ご飯。黙食も3年目

静かに前を向いている生徒たち。これは授業風景ではない。昼休みの昼食の風景だ。
こうした生活も3年目となった。

もっときらきらしていると思ってました。思い描いていた高校生活とは全く違います。

率直な気持ちを語ってくれたのは3年3組の上原百花さん。生徒会の副会長を務めている。

新潟明訓は併設型の中高一貫高。中学校からそのまま上がってくる生徒に加えて全体の3分の2ほどの生徒は高校から入学してくる。彼女もその1人。生徒会の執行部の中では唯一の高校からの生徒、いわゆる「高入生」だ。

この高校を選んだきっかけの1つが、幼なじみで現在生徒会長を務める3年8組の小林愛緒さんだ。

生徒会の仕事をする小林さん
小林さん

生徒会には私が誘いました。また一緒の学校になるのはうれしかったです。

上原さん

高校では部活動というより、ちゃんと勉強しようかなと思ってました。あとは修学旅行や体育祭の行事を楽しみにしていました。

一緒に生徒会に入り、始まった高校生活。しかし、スタートから新型コロナウイルスに翻弄されることになる。

上原さん

入学して、高入生の私は顔も知らない人ばかりです。だけどみんなマスクで、なんとなく近寄りがたい。そんな中ですぐに休校になりました。

入学して間もない4月はじめ、政府は全国一斉の休校を決定。1か月余り学校には行けず再開後もクラスを2つに分けた分散登校が10日間ほど続いた。

それから2年間。同級生と一致団結できる行事も減り、学校という場で友達の輪を広げるチャンスはとても少なかったと言う。コロナが友達作りにも影響しているのか…と思っていたら、2人から思っても見なかった言葉が出てきた。

小林さん
 

インスタで友だち作る子多いよね?

上原さん

あ、確かに。

インスタグラムのプロフィール欄に「めーくん」

インスタグラムは主に写真を投稿するSNSで、特に若い世代を中心にコミュニケーションのツールとして広く使われている。

インスタグラムの検索機能で「明訓」や「めーくん」のキーワードなどで検索すると、同じ学年であろうアカウントを見つけることができる。そこでフォローし、24時間で投稿が消える「ストーリー機能」を使ってメッセージ交換などを呼びかけて直接やりとりをすることで、学校での「リアル」な交流につながっていくということだ。

特に、入学当初やクラス替えのあとはそうして友達作りをする生徒が増えるという。

小林さん

マスクをしていない写真も載っているので。ただ、その写真も加工されてたりして実際会うと印象が違うこともありますけど。(笑)

一緒に仕事をすることも

この2年間、特に大きな影響を受けたのが学校行事だ。1年生の時は体育祭は中止となり、文化祭でもステージ発表がなくなった。去年はビッグスワンで行われる予定だった体育祭が体育館での実施となり、例年関西と東京を回る修学旅行は県内での日帰り研修となった。

上原さん

思っていたものとは全く違いますよね。なんとか違う形でも実施しようとしてくれるのは本当にありがたいんですけど、正直『やっぱり違う』と思ってしまうところはあります。

去年の文化祭  ステージ発表は指定席制に 
(画像提供:新潟明訓中学校・高等学校)

文化祭は外部の入場禁止、花形である体育館でのステージ発表は自由入場から指定席制になり、声を出しての応援も禁止された。

姿を変えた行事。しかし、ここでも高校生たちのたくましさを感じるエピソードを聞くことができた。指定席となったため演目ごとにチケットが発行されることになり、そのデザインに趣向をこらすようになったという。

去年発行したチケット

生徒が書いたイラストや集合写真がデザインされたチケット。

ちょっとした工夫だが、今できることを知恵をしぼって考える生徒たちのたくましさを感じるエピソードだった。

上原さん

ことしの文化祭も外部の人が来れないのは残念ですが、ステージ発表は実施します。平日の開催になったことで、逆にサッカー部など運動部の生徒も発表に参加することができるようになりました。数少ない行事なので、印象に、思い出に残るイベントにしたいです。

取材も終盤、彼女たちにスマートフォンのカメラロールを見せてもらった。そこにあったのは友達と撮ったたくさんの写真…。ほとんどがマスク姿のものだった。

マスク姿の写真が並ぶ
小林さん

慣れちゃいましたね。
むしろ加工しないならマスクを外したくない子も多いと思います。(笑)

マスクをつけて学生生活を送ったことがない我々にとっては、異様な光景であることに間違いない。しかし、マスクで隠されていても写真の中の彼らの笑顔はきっと今も昔も変わっていない。

上原さん

なんで私たちだけこんな高校生活なんだろうって思うことはあります。だけど、この経験をしたから将来やりたいと思うこともできました。

上原さんは多くの企業を外から支える仕事につきたいと考えている。小林さんは会社の経営に関わる仕事をしたいという。どちらも生徒会の立場からコロナ禍の学校を支える中で、将来やりたいことが見えてきた。

 

小林さん

学校が終わってみんなでご飯食べに行ったり、遊びに行ったり、想像していた青春ではなかったです。だけど、キラキラがないから、自分でキラキラしたものを探すようになりました。ここでできた友だちと将来飲みに行って、『あのとき大変だったよね』って笑い合えたらいいなって思ってます。

上原さん

経験できなかったことに悔しさは残ります。『もう1年2年遅かったら』って思うこともあるし、こういう学生生活をしていない大人に『かわいそう』と言われても正直腹が立ってしまうこともあります。だけど、ここでできた友だちとは本当に仲がいいんです。卒業してもみんなで集まりたいなって思います。

コロナ禍3年目。多くの生徒たちが思い描いた高校生活を送れず、やりきれない悔しさを抱えていることは間違いない。それでもたくましく、そしてしなやかに、この時代を生きる生徒たちの姿がそこにはあった。

  • 本間祥生

    新潟放送局 記者

    本間祥生

    2015年入局 スポーツや教育を主に担当。
    高校時代は北海道でバスケットボールに打ち込む。

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