新型コロナ 検査の方法変わる どうすれば?
- 2022年08月25日
新型コロナウイルスの「第7波」で新潟県内でもこの1か月だけで感染者の合計は約2倍に急増しました。医療機関の外来には体調が悪化した人が殺到。数時間待っても治療が受けられない状況になりました。こうした中、県は2022年7月、陽性と確定した人の治療に集中するために検査の方法を変更。65歳未満で基礎疾患がない人など「重症化リスク」が低い人については、原則「医療機関に連絡する前に」検査キットを取り寄せて自分で検査し、陽性を確認してから病院に連絡する方式にしました。しかし依然として医療機関には「陰性だった」人が多く訪れ、ひっ迫状況は十分に改善されていません。県が新たな検査方法の利用を呼びかける中、具体的にどう対応すべきかまとめました。(新潟放送局記者 米田亘)
感染急拡大 負担増す医療現場
取材した新潟市中央区の耳鼻科のクリニックでは、通常の診療を行いながら、動線を分けて1日6つの時間帯に予約枠を設け、体調に異変があった人の新型コロナウイルスの検査を行っています。多い日には1日50人ほど検査を行います。特に混雑した7月には、診察の待ち時間が2時間を超え、耳鼻科の治療を受けに来た人があきらめて帰ることもあったということです。
診療だけではありません。陽性が判明した場合は、1人1人の「発生届」を記録する必要があります。入力する項目は一部が簡素化されましたが、それでも負担だということです。
大滝耳鼻科クリニック 大滝一 院長
「1日20人30人(発生届の)入力をすると結構時間がとられてしまい、実際の診療に支障をきたしている状況。なかなかやりきれない。パンクしちゃうし体を壊しちゃう」
必要な事務作業は発生届だけではありません。
記者
「こちらはどういった書類なんでしょうか」
大滝院長
「これは保険診療の請求に使うレセプトというもの。普段は電子カルテで全部処理しているが、先月はコロナの関係で600枚印刷して手書きしなくてはならない事態になった」
記入項目が多く、電子カルテでは処理しきれずに手書きでの対応を迫られました。
こうした状況で、職員の時間外労働は25時間ほど長くなり、体調を崩す職員が続出しました。医師や看護師の感染で休診に追い込まれる病院も出ていて、院長はこのままでは適切な医療の提供が難しくなると危機感を示しています。
大滝院長
「(私は)ことしに入ってから4日しか休んでいません。時間的にも本来見なくてはならない人にかける時間が十分とれなくなる。そうすると正確な診断とかきめ細かい医療ができなくなる。この状況が続くとどういうふうになっていくか私も大変心配です」
県は検査の流れ変更 実際にどうすれば?
これまでは体調に異変を感じた場合、最初にかかりつけ医などに連絡して受診。そこで検査をして医師が陽性を判定する、という流れをとっていました。つまり、仮に陰性だったとしても疑わしい症状が出た人は原則病院で受診していました。
しかし感染者の急増でかかりつけの病院の外来が非常に混み合い、高齢者や基礎疾患があるなど本当にリスクを抱えた人に素早く治療できない恐れが出てきました。
政府は8月24日、感染者の全数把握を見直し報告の対象を重症化リスクが高い人のみに限定できるようにしましたが、対応は自治体の判断に委ねられており、今後の状況はまだ見通せません。
こうした中、県は7月下旬、これまでの検査の流れを大きく変更しました。
65歳未満で基礎疾患がないなど「重症化リスク」の低い人は「かかりつけ医に連絡する前に」検査キットを自ら取り寄せ、まず自分で検査。そして陽性と判明してから、かかりつけ医に連絡してもらう形にしました。
これにより、かかりつけの病院が陽性と確定した人の診察にのみ集中できる体制を構築しました。
それでは、体調に異変を感じた場合は具体的にどのようにすればいいのか? 県などに取材の上、対応をまとめました。
①自分が検査キット配布の対象かどうかを確認
新潟県は検査キット配布の対象者として、次のような条件を挙げています。
・65歳未満であること
・高血圧や糖尿病、慢性腎臓病などの症状がないこと
・肥満の程度を示す「BMI」が30未満であること
・妊娠していないこと
・喫煙習慣がないこと
このいずれの条件も満たす人が検査キットの配布対象となります。1つでも満たさない人は、これまで通り体調に異変を感じたらすぐに医療機関などに連絡して検査・受診してください。
②県ホームページから検査キット申し込み
検査キットの取り寄せは、県のホームページから行うことができます。
ホームページ上の「検査キット申請フォーム」をクリックし、表示された画面に従って、名前や住所、生年月日などを入力して申請します。
キットは無料で申請から1~2日後に宅配便で手元に届きます。1回分の抗原検査キットと、今後の手続きに必要なQRコード付きの書類などがセットになっています。
③検査の前に「スタンバイパスポート」の登録を!
キットが届いたら、届いた資料のQRコードか県のホームページから「スタンバイパスポート」の
登録を必ず行ってください。
個人情報や症状などを事前に入力することで、陽性になった場合に関係機関が素早く情報を共有できるようにするためです。
④陽性が判明したら
準備が整い抗原検査をした結果、陽性だった場合はどうすればよいのでしょうか(陽性の場合は「T」の部分に濃い線が浮き出てきます)。
まずは判定画面のラインがはっきり分かるよう、必ずスマートフォンなどで撮影して画像を保存してください。
そしてすぐに医療機関に「抗原検査キットを取り寄せて検査したら陽性だった」と連絡して、受診してください。その際、医師に撮影した判定画像を見せるようにしてください。
医療機関の予約がとれないなどの場合は、送られてきたキットと一緒に同封されていた書類から「陽性者登録センター」にアクセスして、入力フォームに必要項目とともに判定画像を登録してください。入力フォームのURLは不要なアクセスを避けるため県のホームページでは一般公開していません。同封された書類のQRコードをスマートフォンで読み取ってアクセスし、オンラインで医師の「確定診断」を受けてください。
陽性は、病院かオンラインで医師が診断しないと確定せず、療養開始の扱いにならずに、県の健康観察を受けられなくなるおそれがあるので検査後はすみやかに、いずれかの方法で手続きを進めてください。
県の担当者は、感染者の急増で医療現場がひっ迫する中、新しい仕組みへの理解と利用を求めています。
新潟県感染症対策・薬務課 昆伸二 課長
「県から無料で検査キットを配布する制度も作っている。まだ周知が不足しているので、今後周知をしっかりしていきたい」
体調急変したら ためらわず救急車の要請を
今回、新たな検査の形をお伝えしましたが、全国的にも感染拡大に伴って亡くなったり、重症化したりする例も増えています。急に息苦しくなったり、意識がもうろうとするなど、体調に大きな異変が見られた場合は、ためらわずに119番通報をして救急車の要請をしてください。
県はとるべき対応について、具体的な症状とともに3つのパターンに分類しています。
<症状が軽い>
⇒緊急性は低く、まずは抗原検査キットを取り寄せて自ら検査を ※下記すべてに該当の場合
・飲んだり食べたりできる
呼吸が苦しくない
顔色が良い
・65歳未満
・基礎疾患なし
・妊娠なし
・喫煙習慣なし
・高度肥満(BMI30以上)なし
<症状が重い>
⇒かかりつけ医や県の「受診・相談センター」に連絡を ※下記「いずれか」に該当の場合
・水分が飲めない
ぐったりして動けない
呼吸が苦しい
呼吸が速い
乳幼児で顔色が悪い
乳幼児で機嫌が悪く、あやしても収まらない
・37.5度の発熱が4日以上続く
・65歳以上
・65歳未満だが基礎疾患あり
・妊娠中
・ワクチン未接種
・喫煙習慣あり
・高度肥満(BMI30以上)
※「受診・相談センター」の電話番号は、
025-385-7634、025-385-7541、025-256-8275の3回線。
24時間365日対応。
<救急車を呼ぶ必要あり>
⇒ためらわずにすぐに119番通報を ※下記「いずれか」に該当の場合
(判断に迷う場合は「受診・相談センター」に連絡するか、県がリリースするアプリ「AI救急相談アプリ」を活用)
・顔色が明らかに悪い
・唇が紫色になっている
・表情や外見などがいつもと違う
・様子がおかしい
・息が荒くなった
・急に息苦しくなった
・日常生活で少し動いただけで息苦しい
・胸の痛みがある
・横になれない
・座らないと息ができない
・肩で息をしている
・意識がおかしい(意識がない、もうろうとしているなど)
陽性者の登録を済ませておけば、県の健康観察の窓口の電話番号が伝えられますので、待機している看護師に緊急連絡することも可能です。
医療体制の現状を考えて、まずは基本的な感染対策を徹底することも重要です。