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吉岡拓哉社長 新春インタビュー

諫早の企業に世界が注目!在庫買取で新ビジネス
  • 2024年01月01日

新春インタビュー:ピンチヒッタージャパン・吉岡拓哉社長

イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」などが発表している「アジア太平洋地域における急成長企業ランキング」でおととし(R2)149位にランクインした諫早市の企業・ピンチヒッタージャパンの吉岡拓哉社長(よしおか・たくや)です。

事業の柱は企業が抱える在庫の買取事業。アパレル商品などを一括で買い取り、別の企業に卸したり、店舗やインターネットで販売したりします。

「当社のサービスでまた消費者に届けたりとか企業様に買っていただいたり『もったいなかったもの』を『価値』にかえられる『笑顔』にかえられる発想で事業をやっている」

吉岡さんは諫早市出身の36歳。大学時代の友人で副社長の川口恭平さんと2人で11年前(H25)イベントの企画会社を設立しました。

左:吉岡社長 右:川口副社長

創業当時、2人が用意した資金は60万円。しかし、光熱費の支払いなど、わずか1か月で底をついてしまったといいます。

「創業期は真冬も電気もガスも止まってむちゃくちゃ寒い日にまさに水のシャワーを浴びて息が止まる思いを創業して2年くらいで経験したんですけど、ただ、やはりそこをぐっとこらえて涙した。それでもやり抜くという気持ちは消えなかった」

起業から3年後の2016年、転機が訪れます。きっかけは「野球のグローブ」でした。

営業で入った町の小さなスポーツ用品店で古びたグローブが販売されていました。店主に話を聞くと新商品を仕入れられない原因は在庫の多さにありました。

「なんでシンプルに新しいもの仕入れられないのかと思うんですが、そこにはそういった過去の
滞留している在庫品があった。我々の販売方法で販売を行えばきっと売れるだろうというのは 当時、直感的に思いました」

そこで、吉岡さんは、在庫にあった60個ほどの商品を30万円で一括買い取り。それをネットで販売してみたところ3日で完売し予想以上の利益を得ることができました。

在庫を大量に抱えて資金に余裕のないスポーツ店側と現金で一括して買うことで通常よりも安く仕入れられる会社側の利害が一致したのです。このビジネスモデルが軌道に乗りわずか1年で全国各地の3500店舗に上るスポーツ用品店と取引することになったのです。

「いいサービスをお客様にこれ使ってみたいと思ってもらった時にやっぱり物が売れるんだというふうに当時思って。お客様のところに行って表面的な課題ではなくて本質的な課題をきちんと
こちらが認識をしてそれを解決できるようなサービスを提案する」

グローブから始まったビジネスはその後、衣料品や日用品の分野にも拡大。ここから会社は急成長を遂げました。

2017年からの成長率は3年間で426%に。
この成長が評価され、おととし(R4)イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」などが調査する『アジア太平洋地域における急成長企業ランキング』で149位にランクインしました。

「はじめは英語で手紙が来たので最近ある詐欺のようなものかなと思っていたんですけれど、
社員も含めて一緒に頑張って作り上げてきたものがこうして表彰していただけるというのは本当に嬉しかった」

いま、吉岡さんが、力を入れているのは地元・長崎の経済活性化です。先月(12月)から県内の起業家などに最大で1000万円を支援する新たな事業を始めました。

「当時、我々が創業した時にロールモデルがなかったんですよね。せっかく私たちが成長がたくさんの方にお力添えをいただいて成長ができたので、これを単発的に終わらせるのではなくてこれをしっかりとつないでいけるような企業としての役割を果たしたい」

諫早のスタートアップから世界に注目されるまでの企業へと成長させた吉岡さん。最後に2024年の抱負を聞きました。

「やはりチャレンジ精神挑戦する気持ちっていうのを、やはり持ち続けなければいけないなと思ってまして。長崎で起業しても世界で通用するビジネスモデルは作れるんだというのを我々も証明したい」

【取材実感】

会社名の「ピンチヒッター」は野球でいう代打という意味で、吉岡さんは、まさに困っている企業や個人の課題を解決していくピンチヒッターのような役割になりたいと話していました。現在は、年間50万トンも捨てられているアパレル用品や、人手不足で廃業が進む企業の事業買取などがメインで、こうした取り組みは、SDGsのいったんも担っているのだと感じました。
ことしは、海外進出も計画していてまさに「長崎から世界に通用する企業」の挑戦に向けた大きな一歩を踏み出すということで引き続き、注目していきたいです。###

  • 松本麻郁

    長崎放送局記者

    松本麻郁

    民放記者を経てNHK記者へ 
    ・北海道出身
    ・遊軍で主に経済を担当
    野球はDeNAファンです。

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