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柴田アナの“遠くへ行きたい!”

~信濃町・小林一茶のふるさと 柏原~
  • 2023年08月09日

九州出身で、信州は初心者の私。鉄道・バスで歴史スポットなどを訪ねるのが大好きで、地理的にも時代的にも“遠くへ行きたい!”と、信州の各地を公共交通機関でふらりと訪ねた様子をつづります。風の吹くまま、気の向くままに・・・。

「やせ蛙(がえる) まけるな一茶 これにあり」
「名月を とってくれろと なく子哉(かな)」
「是(これ)がまあ ついの栖(すみか)か 雪五尺」
松尾芭蕉、与謝蕪村とともに、江戸三大俳人の1人に数えられる「小林一茶」。
庶民的で、ユーモアのある作品を数多く残したことで知られていますよね。
その一茶のふるさとが信濃町の「柏原(かしわばら)」だと聞いて、今回もふらりと鉄道旅に
出かけました。

長野駅から、旧信越本線「しなの鉄道北しなの線」の電車に揺られ、40分弱。
長野市北部の豊野駅を過ぎたあたりから、車窓の景色は平地から山あいへと変わっていきます。
北信五岳の黒姫山や妙高山がだんだん近づいてきて、黒姫駅で電車を降りました。
小林一茶ゆかりの地を訪ねる旅のスタートです!

駅前から東へまっすぐ伸びる道を歩くと、街灯の柱に「一茶ストリート」の看板がいくつも。
道端には、石でできた句碑もありました!
その1つが、この写真。「雀(すずめ)の子 そこのけそこのけ 御馬が通る」と刻まれています。
小林一茶は、江戸時代後期、信州・柏原(今の信濃町)に生まれます。
15歳で江戸に奉公に行き、その後、俳人となって全国を行脚。
江戸を中心に活躍し、晩年はふるさとに帰って、北信濃で多くの門人を育てたそうです。
生涯で、2万句を残したという小林一茶。
小さな生き物に優しいまなざしを向け、時代をこえて愛される作品を生み出せたのは、
きっと、ふるさとの存在も大きかったのでしょうね。

一茶ストリートを進んでいくと、小高い丘が見えてきました。「小丸山公園」です。
新緑や秋の紅葉を楽しめる公園で、ここには一茶のお墓があるほか、数々の句碑も建っています。
「初夢に 古郷(ふるさと)を見て 涙かな」
一茶にとって、ふるさとが大切な存在だったことが感じられますね。
この句碑の隣には、明治43年(1910年)に一茶をしのんで建てられた「俳諧寺」という
お堂もあります。
お堂の格(ごう)天井には、ここを訪れた有名な俳人の句も掲げられていました。
さすが「江戸三大俳人」。後世の俳人たちにも、大きな影響を与えたんでしょうね!

小丸山公園には、「一茶記念館」があります。
一茶終えんの土蔵が国史跡に指定されたのを記念して、昭和35年(1960年)に、一茶の
お墓のある小丸山に開館しました。
一茶の生涯をたどりながら、「七番日記」「おらが春」など、貴重な作品を見ることができますよ。

小丸山公園から、さらに東へと歩いていくと、国道18号、かつての北国街道に出ます。
このあたりにあったのが、「柏原宿」。
本陣跡の近くにある案内板によると、一茶が50代だった文政2年(1819年)ごろは、
旅籠(はたご)屋10軒、茶屋4軒など賑わっていたそうです。
本陣の観国(かんこく)さん、桂国(けいこく)さんは俳諧をたしなんでいて、一茶と親しく
交流していたんだとか。
文政10年(1827年)、柏原宿は大火に見舞われ、一茶の家を含む90軒以上が焼失します。
その後、宿場は復興し、江戸時代末期には再び、100万石で有名な加賀藩などの参勤交代の宿所にもなったそうです。
ちなみに、一茶が暮らした柏原宿の様子については、一茶記念館で模型などが展示されていますよ。

柏原宿の案内板から、街道をさらに南へと進んでいくと・・・ありました!史跡小林一茶旧宅
です。
50歳で帰郷した一茶は、52歳で結婚し、4人の子どもが生まれましたが次々に亡くなり、
妻にも先立たれます。
その上、一茶の家は柏原宿の大火で類焼し、焼け残った土蔵に半年ほど暮らしましたが、そこで65年の生涯を閉じました。
一茶はどんな気持ちで晩年を過ごしたのでしょうね。土蔵の中で思いを巡らせました。

近くには、こんな句碑が建っていました。一茶29歳の作品です。

「門(かど)の木も 先(まず)つつがなし 夕涼(ゆうすずみ)」
 

再び、一茶ストリートを通って、黒姫駅へと向かいます。
駅舎の向こう側には、西に傾きかけた太陽と、悠々とそびえる黒姫山が!
ふるさと・柏原で、一茶もこんな景色を眺めていたんでしょうか。
江戸三大俳人の1人、小林一茶の息づかいを感じることができる信濃町・柏原。
皆さんも、ぜひ訪れてみてくださいね。

※今回の旅の料金
長野-黒姫(しなの鉄道北しなの線) 片道650円(往復1300円)
「一茶記念館」 入館料500円

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