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静かに運び つま先で打つ

ブラインドサッカー 平林太一選手
  • 2024年02月16日

 

視覚障害のある選手たちがプレーするブラインドサッカー。ことしのパリパラリンピックへの出場権を獲得した日本代表のエースとして活躍しているのが、長野県生坂村出身の高校2年生、平林太一選手です。去年の世界選手権でチーム最多の4ゴールをあげた得点力の秘密は、「静かに運び」「つま先で打つ」技術にありました。

(長野放送局 松下周平)

ブラインドサッカーって?

1チーム5人で行うブラインドサッカー。障害の程度で有利不利がないよう、ゴールキーパー以外はアイマスクを着用するのが決まりです。

ブラインドサッカーのボール

競技で使用されるのは小さな鉛の粒などが入ったボールです。転がったり弾んだりするときの音を頼りに、選手たちはボールの位置を把握します。

ゴール裏からもガイドが選手に声をかける

また、主に健常者が務める味方のゴールキーパーや、敵陣のゴール裏にいるガイドからの声も、相手選手の位置などを知る上で重要です。

コートはフットサルと同じ広さ。両サイドには高さ1メートルほどのフェンスが設置され、その跳ね返りを利用したパスなどもブラインドサッカーの醍醐味の1つです。

自力で初のパラリンピック出場権獲得

3年前の東京大会でパラリンピック初出場

日本代表は長くパラリンピックの舞台に立てずにいましたが、3年前の東京大会に開催国枠で初出場。2試合に勝利し8チーム中5位の成績でした。

初の自力出場を目指したパリパラリンピックは出場枠が8つ。開催国のフランスのほか、各大陸の大会を勝ち抜いた4チーム、そしてこれらを除いた世界選手権の上位3チームが出場できます。

平林選手は世界選手権で大活躍

日本は去年の世界選手権で5位でしたが、アメリカ大陸の大会の結果、繰り上げでパリパラリンピックの出場が決まりました。この大会でチーム最多の4得点を挙げたのが、松本市に住む高校2年生、平林太一選手です。

平林選手

出場権獲得が決まったときは、ほっとした気持ちが1番強かったです。パリではチームを勝たせられるようなゴールを決めたい

世界一という夢

幼いころの平林選手

平林選手は生坂村の出身。幼い頃に病気で両目の視力を完全に失いました。小学1年生で競技を始めると、めきめきと力をつけ、中学1年生で出場した日本選手権で大会最年少のゴールを記録。すでにこのころから将来は日本代表として世界一になるという夢を抱いていました。

中学2年生の時の平林選手
平林選手

代表は1つの夢です。日本を世界一に僕の手で導いていきたい

現在は松本山雅のブラインドサッカーチームでプレーする平林選手。2022年に若干15歳で日本代表デビューを果たし、すぐに最年少得点記録を更新しました。日本代表のキャプテン、川村怜選手も年がひとまわりも離れた若武者に大きな期待を寄せています。

川村怜選手
川村選手

すでに世界的なプレーヤーになっていますし、マークもきつくなってきています。そんな状況でも相手のさらに上を行って、ゴールを決められる存在になってほしい

静かなドリブル

高校生にして世界トップレベルの得点力を発揮できる秘密は何なのか。その1つはたぐいまれなるドリブルのセンスです。金属が入ったボールの音を頼りにプレーするブラインドサッカーでは、極力音を抑えることが相手のマークを外す近道です。

静かなドリブルが得意

平林選手は柔らかく、回数の少ないボールタッチで“静かなドリブル”を得意にしています。

平林選手

ボールは体の一部だと思っているので、足にすっと吸い付くように意識しています。足と一緒にボールが前を走っているというイメージなので、タッチ数が多くなくてもうまくドリブルできます

中川英治監督

小柄ながら切れ味の鋭さを特徴とする平林選手。チームを率いる中川英治監督も、その巧みなドリブルを高く評価しています。

中川監督

彼の強みであるドリブルのスピードは世界でもピカイチです。自分が1番輝くプレーを、存分に発揮してもらいたい

必殺技のトーキック

高いシュートテクニックを誇る平林選手の最大の武器が、つま先でボールを蹴る“トーキック”です。サッカーのシュートでは、足の甲や内側の部分を使うのが一般的ですが、平林選手はコントロールが難しいとされるつま先でも、狙ったコースにシュートを打つことができます。

つま先で蹴る“トーキック”
平林選手

ボールの芯をたたかないと、なかなかいいシュートが打てないので、ポイントをしっかりしぼって、ミートできるようにしています

世界選手権のタイ戦

トーキックの最大のメリットはキックのモーションが小さいため、相手の予測しないタイミングで打てること。世界選手権のタイとの一戦でも決勝点は平林選手のトーキックから生まれました。

平林選手

タイ戦のゴールは自分の形をうまく出せました。相手陣内に左サイドから進入し、右足のトーキックでゴールの右下隅に決めるのは自分が1番得意とするところ

信州の若き点取り屋がメダル獲得に挑む

いよいよ迎えたパリパラリンピックイヤー。平林選手は大会までに自身が課題としているスタミナ不足を克服し、目標とする日本のメダル獲得に貢献したいと意気込んでいます。

平林選手

このメンバーで金メダルをとりたいという思いはすごくあるので、そのためならどんなつらいことにも耐えられると思っています。支えてくれる人たちの存在や、自分が競技に費やしてきた時間も考えると、結果を残す義務があると思っています

  • 松下周平

    長野放送局

    松下周平

    遊軍で主にスポーツを担当。3年前の東京パラリンピックでは主に陸上を現地で取材。

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