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揺れる川南町 新中学校なぜ白紙に?採決一票差[記者が詳しく]

  • 2023年06月14日

宮崎県川南町で検討されていた新しい中学校の建設計画。
町では少子化に伴い7年前から2つの中学校を統合するための検討が進められていて、去年、町の中心部に57億円余りをかけて新しい中学校を建設する計画が決まっていました。
しかし、今月13日の町議会で、建設計画を廃止する議案が賛成6・反対5で可決され、計画は白紙に戻ることになりました。
一部の住民が賛成と反対に分かれ、混乱する事態となっている今回の問題。
記者が詳しく解説します。

なぜ新しい中学校の建設計画?

川南町で起こっている中学校新設と統廃合について、町を二分するような問題に発展している背景には児童・生徒数の減少があります。

町では、小学校や中学校の児童生徒が減少を続けており、35年前には2800人余りいた児童・生徒は、来年(2024年)には半数以下の1100人余りとなり、今後も減少が続くとされています。
そこで議論にあがったのが、町に2つある唐瀬原中学校と国光原中学校の統廃合です。

川南町の児童・生徒数の推移

建設の具体的な計画は?

2校とも最も古い校舎は、建設から50年から60年ほど経っています。
町では将来を見据えて、2016年からこの統廃合の議論を始めていました。案として検討したのは3つで、2年前に試算したそれぞれの費用は以下のとおりです。

①町の北側にある唐瀬原中学校に統合(5億円余り)
②町の南側にある国光原中学校に統合(およそ7億円)
③2つの中学校の中間あたりとなる、町の中心部に新たな中学校を建設(36億円余り)

費用で見ると③の新たな学校を建設するのが最も高くなります。 ただ、町の審議会で有識者らがこの3つの案を検討した結果、町の中心部に建設すれば生徒が人との関わりなどを通じて豊かな感性を育める、統合した後の地理的な不公平感が生じない、などの理由で「新たな中学校の建設が妥当」という結論に至りました。

新中学校・住民の意見は?

2年前の保護者や町民へのアンケート調査でも、①の「唐瀬原中学校を改修し統合」が約20%、②の「国光原中学校を改修し統合」が8%余り、③の「新しい中学校を整備」が63%余り、という結果でした。

そこで、町は3年後の開校を目指して、町の中心部に、新しい中学校を建設することにしました。

しかし、先日行われた町長選挙の結果で方針が大きく変わることになります。
町長選挙の最大の争点が、この新しい中学校建設の是非でした。そして、アフターコロナ対策に重点を置くなどと訴え、新しい中学校の建設の撤回を公約に掲げていた今の東町長が当選しました。

得票数は東高士現町長が4080票。当時町長だった日高昭彦氏が3748票。僅差とはなりましたが、選挙の結果を見ると、民意は「建設に反対」ということになります。

白紙の理由は高額な費用

東町長が白紙に戻すとした最大の理由は高額な費用にあります。
実は物価高騰の影響などを背景に新中学校の建設にかかる費用は、2年前の試算より20億円近く膨らみ、およそ57億5000万円と見込まれています。
これは町の1年間の予算の半分ほどにあたる金額です。

採決のあと取材に応じた東町長は「物価高などで苦しんでいる人たちの支援にお金を使うべきだと考えている。これまで建設を推進してきた人たちにも理解を得られるよう説明を尽くしていきたい」と話していました。

建設白紙・住民の受け止めは?

今回の採決について、賛成・反対それぞれの受けとめを聞いてみました。

建設賛成派・杉本綾子さん

多くの方が何年もかけて議論して計画してきたことがなぜ変わるのか?
詳しい内容を調べて答えてくれないので、反対派のなんでダメなのか理由なども聞かされてない。私たちの声は拾ってもらえないのではないかと不安しかないです。

建設反対派・中嶋武光さん

なぜあの狭い場所に中学校を作るのか?というのが最初の疑問だったんです。教育の場というのは広い場所で行われるべきだと思います。コロナやウクライナ情勢などで物価高騰が続く中、さらに費用は膨大になるのではないかと懸念しています。

 専門家は?

この事態について、地方行政の専門家・宮崎公立大学の前学長・有馬晋作さんは次のように話しています。

有馬晋作さん

中学校をどこに位置付けるか、優先順位をどうするかがポイントとなります。
教育を重視する町になるのであれば優先順位は上がるかもしれませんし、総合的に考えて中学校の改修や新築などを決めていくことになると思います。

中学校はどうなる?

議会のあと東町長は次のように話しています。

東 高士 町長

中学校は今2校あります。このまま2校でいくのか、統合するのか、町民とよく話をしていきたいと思います。今後、タウンミーティングを町内で毎月していくので、その中で今回の件も説明し、理解を求めていきたい。

180度の方針転換で混乱を生んでいるこの問題。今後、丁寧な説明や対応が求められることになります。

  • 福島 雅博

    宮崎局・記者

    福島 雅博

    都城周辺や選挙取材を担当

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