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ウクライナ避難家族 宮崎で生きる

ディレクターズリポート
  • 2023年03月03日

ロシアによるウクライナ侵攻から1年。宮崎市で避難生活を送っているヴォロキティナさん一家の今をお伝えします。父・ディミトロさんは去年から宮崎市内の企業で働き始めています。その様子を取材しました。

勤務先は廃棄物収集処理会社

朝7時。ディミトロさんは滞在先のホテルから会社へ向かいます。車の免許など持ってないため、毎日3kmの距離を自転車で通います。

勤めているのは宮崎市内にある廃棄物の収集や処理を行う会社。任されているのは、回収した産業廃棄物の解体や分別です。ゴミを金属や木材などに細かく分けていく、根気のいる作業です。

職場で頼りにされるディミトロさん

去年6月、ディミトロさんは妻の友人を頼り、1週間以上をかけ、家族5人で宮崎へと避難してきました。ウクライナでは18歳から60歳の男性の出国が制限されていますが、子どもが3人以上いる場合は、例外的に出国が認められるそうです。

ここで働き始めたのは来日から4ヶ月後。言葉に不安はありましたが、少しでも家族の生活費を稼ぎたいと紹介してもらいました。しかし会社にとっても外国人の採用は初めて。不安もあったといいます。上司の兒玉さんは「言葉も通じないのに…と思っていたが、賢いというか器用だし何でもできる。なぜこんなに(作業が)速く丁寧にできるのか教えてもらいたい。今ではみんなが頼りにしている。」と語ります。

昼休み。ディミトロさんは毎日、同僚たちとご飯を共にしています。パワーの源は毎日食べているチャーハン弁当。今は、滞在先のホテルが毎日、提供してくれます。箸の使い方は職場で学んだそう。

ウクライナでは建築の仕事もしていたディミトロさん。同僚との遊びも、パワーでは負けません。

最近ハマっている手押し相撲
翻訳アプリを使用して会話を楽しむ

何気ないやりとりにも同僚たちの心配りがありました。ウクライナのことはあまり聞かず「おいしいご飯屋の紹介」など、前向きなことばかりを話すようにしているそうです。

周囲の支えもあり、職場にも馴染んできたディミトロさん。仕事の腕が評価され、今月からの昇給も決まったディミトロさん、笑顔がひたむきに働く姿が印象的でした。

剣道をはじめた長男

一方、家族も宮崎で新たな一歩を踏み出しています。長男のラドミル君は、去年11月から地域のスポーツクラブで剣道を習うようになりました。元々、運動は苦手でしたが、初めて見た剣道に興味を持ち、自分から習い始めました。

厳しい稽古にも頑張ってついていくラドミル君ですが…どうしても苦手なのが、正座です。

このクラブでは、ウクライナ人でも特別扱いは無しです!

今ではすっかりメンバーとも仲良しに。 

戦況のニュースは職場で確認する

父親のディミトロさんを取材したのは2月24日。ロシアの軍事侵攻から1年の節目の日でした。休憩のたびに、スマホートフォンをチェックしています。 戦況は気になりますが、子どもが不安になるからとニュースはここで見るようにしています。

映し出されていたのは、自宅のある東部・ハルキウ州が爆撃されたというニュース。

母親のタマラさんは、ふるさとを離れたくないと今でも現地に残っています。

いまの心境を聞いてみると、しばらく考えて、黙って首を振りました。

家族のために

避難生活も9カ月。ふるさとへの思いを抱えながらここ宮崎で前を向くディミトロさん一家です。

ディミトロさんは言います。「家族のために働くよ。必要な物は買ってあげたいし苦労もさせたくない。仕事から帰ると子供たちは笑ったり遊んだり。みんなが思い思いに過ごしている。それを見れるだけで幸せなんだ。」

ディレクター取材後記

 家族の中ではもう一人、宮崎市内の中学校に通っている長女のイェヴァさんは、軍事侵攻が始まる前までダンスを習っていたそうです。宮崎でもまた始めたいと教室を探しています。突然ふるさとを追われ、知らない土地で暮らさなければならない大変さは想像することさえできません。それでも、家族のために働くディミトロさんの姿に、父親としての強さを感じましたし、周りで支える宮崎の人たちの温かさも感じる事ができました。これからも取材を続けたいと思います。

  • 牛田幸宏

    宮崎局 ディレクター

    牛田幸宏

    宮崎県木城町出身
    同じ父親として、家族を守るディミトロさんの強さと優しさを尊敬しています。

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