ページの本文へ

茨城WEB特集

  1. NHK水戸
  2. 茨城WEB特集
  3. 医師の働き方改革で茨城は?総合守谷第一病院は小児夜間受け入れ停止 こども病院では負担増懸念

医師の働き方改革で茨城は?総合守谷第一病院は小児夜間受け入れ停止 こども病院では負担増懸念

2024年問題 現場は今 その3「医療」
  • 2024年04月25日

時間外労働に規制を設ける「医師の働き方改革」。
茨城県は10万人あたりの医師数が全国でもワースト2位になるなど医師不足が課題となっています。小児医療ではすでに影響も出始めています。現場を取材しました。
(水戸放送局 記者 丸山彩季)

NHKプラスで配信 5/2(木) 午後7:00 まで

夜間救急の停止“苦渋の決断”

総合守谷第一病院

守谷市の総合守谷第一病院です。

小児科には4人の医師がおり、これまで取手市の病院と交代で当直体制を組んで、夜間の小児救急にも対応してきましたが、中には子育て中の医師もいて負担もあったということです。

子育て中の女性医師

子育て中の女性医師
体力としては全然問題ないんですけど、気持ち的にいろいろ余裕がないというか…。水曜日の夜は家に帰れなくて、次に子どもがいるのは木曜の夜みたいなことがありました。

医師の働き方改革に対応するため、病院では午後11時以降の受け入れを停止。
常総地域では夜間に小児救急を受け入れることのできる病院はなくなることになりました。

小児科医
オールナイトだったのが午後11時から小児科は受けない。それ以降は歩いて来られる方も救急車で搬送される方もすべて土浦協同病院ないしはつくば市の病院に受診していただくことになりました。

「夜間救急停止」なぜ?

今回の働き方改革では、健康確保のための措置として勤務と勤務の間に休息時間をとる「インターバル規制」が設けられました。

例えば、この病院の場合、当直勤務をしたあとは再び勤務するまで18時間の休みが必要になります。当直を続けると日中働ける医師が足りなくなり、診療体制を維持することが難しくなる恐れがあったのです。

総合守谷第一病院 遠藤優枝病院長

病院長に話を聞きました。夜間の受け入れを継続できないか検討を続けてきましたが、苦渋の決断だったといいます。

遠藤優枝 病院長
働き方改革それ自体は本当に医師の健康を守るために大事なことではあるんですけれども医師の数が少なくてそれを提供するには、やはりかなり難しい状況ですので、残念ながらこういう選択をしたということになります。

病院としては新たな医師の確保も検討していますが簡単にはいかず、県全体での調整が必要だと話しています。

遠藤優枝 病院長
夜勤も出来て日中もしっかり働いてくれる医師の常勤の確保も難しい状況ですね。県全体でどう体制づくりをするのか考えていかないといけないかなと思います。

地域の中核的な病院への影響は?

働き方改革の影響で医療提供体制の縮小や見直しをする地域が出てきていることから、地域の中核的な病院の負担が増す懸念もあります。 

県立こども病院

高度な小児医療などを担う中核病院の一つ、水戸市にある県立こども病院です。
小児医療の最後のとりでとして、重篤な患者を24時間体制で受け入れています。 

昨年度に受け入れた救急患者数は6600人を超え、鹿行地域や日立など遠方からの救急搬送を受けるケースも出てきているということです。

第8次茨城県保健医療計画

こうしたなか、県は医療に関する基本方針「保健医療計画」を見直しました。働き方改革による環境の変化などに対応するため大きな方針転換を行っています。

3つのエリアに広域化

これまでの計画では県内を8つのエリアにわけて患者を休日や夜間に受け入れる体制をとっていました。こども病院の場合は、水戸市を含む青色のエリアです。

新たな計画ではこの体制を維持しつつ、さらに3つの広域化したエリアを設定。
こども病院など拠点となる病院が従来のエリア外からも患者を受け入れるなど、病院間での連携を強化することで、医療提供体制を維持しようとしています。

県立こども病院 新井順一病院長

新井順一病院長は、今後、働き方改革で地域の医療機関の受け入れ体制が縮小すれば、さらに患者数が増加する可能性があると考えています。

新井順一 病院長
地域によっては小児科医がかなり不足してしまって、小児の救急医療にほころびが出てくるところが発生しておりますのでそういったところは広域化をさらにせざるをえないのかもしれませんけど、受け入れきれなかった場合に当院のほうに依頼が来るようなことも想定はしておりますし
現実、少しずつそういう傾向があると思います。

当直の医師

ただ、当直業務は重篤な患者への緊急の対応だけでなく入院患者への診察など多岐にわたります。

当直の医師
調子の悪い患者さんがいたらコールがあれば見に行きますし、ICUなどであらかじめ調子が悪い患者さんがいるときには呼ばれる前から病棟で待機して診察や治療を行います。

新井病院長は、安心できる医療環境を維持したいと考える一方、厳しい実態にも理解を示して欲しいと話しています。

新井順一 病院長
患者さん家族が安心して子育てできるようにということで従来の小児、周産期救急を今まで通り維持していけるかどうかというところが非常に重要なことだと考えておりまして、医師の働き方改革でそういったことがうまくいかなかったことにならないようにしていくことが重要だと考えております。こういう医師の働き方改革で医療について言えばこういった状況であることを理解していただければありがたいです。

対策の動きは

県は各地域の中核的な病院にしわ寄せが集中しないように対策をとるという方針を打ち出しています。

例えば▼地域の開業医との役割分担を見直す、とか、▼小児医療へのアクセスが難しい地域向けにはオンラインで診療を受けられるようにすることなどをあげています。

ただ、具体策はこれからだということです。このほか、将来に向けた若手医師の確保など、検討課題は山積しています。

私たちにできること

茨城県医師会によりますと、水戸市や笠間市などで救急医療を提供する5つの病院で、自家用車などで受診した救急患者のうち実際に入院が必要だったのは10%から20%にとどまったということです。

県は救急車要請の必要があるかや、すぐに医療機関を受診するべきか判断に迷った際には、まずは茨城救急電話相談「#8000」に相談してほしいとしています。

 

NHKプラス配信終了後はこちら👇

  • 丸山彩季(記者)

    水戸放送局

    丸山彩季(記者)

    2018年入局。熊本局を経て2023年からつくば支局。

ページトップに戻る