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2024年問題 茨城県内でも相次ぐ路線バス減便 影響は

2024年問題 現場は今 その2「バス」
  • 2024年04月21日

 

私たちの通勤や通学にかかせない「バス」ですが、4月から時間外労働の規制が強化されたことや、運転手が不足していることを理由に、減便や運行を終了するなど、茨城県内でも影響が広がっています。
(水戸放送局 記者 藤原陸人)

【頼りにしていたバスが運行終了】

取手駅と関東鉄道常総線の戸頭駅を結んでいたバスが、4月1日から運行を終了しました。関東鉄道が1日に4便運行していたこのバスの停留所をみると、時刻表はなくなり、3月いっぱいで運行を終了したことを知らせていました。

運行が終了したバスの停留所

このバスを利用していたのが阿部義康さん(80)です。阿部さんは私が初めて取材に訪れるまでバスの運行が終わったことを知らなかったということです。

 

運行を終えたバスを利用していた阿部義康さん

阿部義康さん
納得しないような気もします。撤退、撤退ばっかりさみしいよね。

車を持っていない阿部さんは、糖尿病などの検査のため、およそ2.5キロ離れた病院に、定期的にバスで通ってきました。今後、どうやって病院に通うか頭を悩ませています。

阿部義康さん
病院に行くことや買い物もバスを使えば行ける。そのバスがあればね。そういうこともなくなるから不便にはなります。やっぱり、安心感がなくなります。

4月から強化された運転手などの時間外労働の規制。こうした「2024年問題」や運転手不足を理由に、茨城県内でもバスの減便や路線の廃止が相次いでいます。

平日では、県南などで展開する関東鉄道のバスはあわせて303便減り、県北などを走る茨城交通もあわせて517便減っています。

【バス減便による影響 自治体の動きは】

バスの減便や運行の終了による影響をどう食い止めるか。
つくばみらい市ではコミュニティ-バスを活用して対応しようとしています。

 

つくばみらい市のコュニティーバス「みらい号」

JR土浦駅からつくばエクスプレスのみどりの駅を経由し、関東鉄道常総線の水海道駅に至るバス路線です。走る距離は27キロ余りに及び、運行する関東鉄道にとって、運転手の労働時間が長くなることなどが課題となっていました。
ただ、路線沿いの常総市内には総合病院の「きぬ医師会病院」があります。市内に総合病院がない、つくばみらい市は、病院へのアクセスの確保は重要だと考えていました。

 

3月末まで走っていた路線バスのルート

このため、4月から関東鉄道はみどりの駅から水海道駅までの区間を廃止。そのかわりに、つくばみらい市が新たに「きぬ医師会病院」を通るコミュニティーバスのルートを新設したのです。

 

つくばみらい市が新設したコミュニティーバスのルート図

コミュニティーバスはバス会社に運行を委託するものの、赤字部分はつくばみらい市が補填します。
つくばみらい市では、市内のほかの路線の本数を調整することで運転手を増やすことなく、新しい路線を運行する方針です。

 

つくばみらい市都市計画課 岩上仁也 主事

つくばみらい市都市計画課 岩上仁也 主事
つくばみらい市としては、きぬ医師会病院へ通院可能なルートを設定したい。関東鉄道は運転手の拘束時間がかなり長くなっていることがネックになっていた。今回は路線バスをコミュニティーバスで補填する形になったが、地域の方々の買い物、通院、日常で利用する『足』を残すことができたことは、双方良かったことではないか。

【利用者過去最多でも・・・減便するコミュニティーバス】

ただ、そのコミュニティーバスが「2024年問題」の影響を受けるケースもあります。
つくば市ではバス会社に委託して運行する「つくバス」というコミュニティーバスが市内10のルートで運行しています。市内に点在する研究機関や学校、住宅街などを結び、 2023年度は過去最高の113万人が利用しました。しかし、この「つくバス」も、運転手不足を理由に4月から減便に追い込まれました。これまで1日317便あったのが、平日は、274便、土日・祝日は213便にそれぞれ減便せざるを得なくなりました。

減便となった「つくバス」

「つくバス」の利用者
結構減りました。1時間に1本しか走っていないとか、2時間に1本とか走っていないときもあって、どうすればいいんだろう。

「つくバス」の利用者
運転手さんが増えてくれればうれしいですが、まぁ、しかたないのかなと思います。

【減便の背景に運転手不足】

減便や運行を終了しなければならない原因に、バスの運転手が不足していることがあげられます。
茨城県バス協会によりますと、加盟する乗り合いバス会社の運転手はコロナ前の2019年度には
2481人いましたが、2年前の2022年度には2184人となっています。
県内のバス会社のうち、関東鉄道は高卒の新卒者を対象に普通自動車免許と大型二種免許を取るための費用を全額負担したり、手取額が増えるような新たな賃金制度を導入するなどしました。また、茨城交通も転職する運転手への準備金を支給したり、入社するときの引っ越しの費用を負担するなど運転手の確保に努めています。時間外労働の規制が強化されたため路線を維持するためには本来であればこれまでより多くの運転手が必要になるわけですが、集まらないということです。

【車中心の生活の一部 バスに変えられませんか】

地域交通のあり方に詳しい専門家は「2024年問題」によるバスの減便は、「バス会社だけの問題ではない」と指摘しています。

東洋大学国際地域学科 岡村敏之教授

東洋大学国際地域学科 岡村敏之教授
現状、使う人も少なくなっている。ニーズがあっても使う人が少なくなるとこれは維持することができない。「2024年問題」の “ボール”はバス会社や行政にあるように見えるんですけど、実際には利用者や市民にある。車中心の生活の一部をいったんは振り返って、見直してみることがわれわれにできること。われわれが移動している5%を車からバスに変える。上手に使っていくだけで、バスの利用者も増え、維持はできるということをぜひ、認識してほしい。

岡村教授は「行政も路線をただ維持するだけではなくて、使ってもらうように働きかける、そして、われわれ利用者も日々の生活を振り返ってもらって、バスを利用するほうが実は便利なところがないか
ぜひ検討してほしい」とも話していました。

バス会社だけでなくわれわれ利用者も自分のこととしてこの問題を考えていく必要があると感じます。

  • 藤原陸人

    水戸放送局 記者

    藤原陸人

    東京都出身。2020年入局。
    仙台局からおととしの夏に水戸局に着任し、去年の夏からつくば支局。県南地域を担当するほか、スポーツの取材にも取り組む。
    荒川沖駅に行くときなどに路線バスを利用していて、日々の生活には欠かせません。

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