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茨城 水戸と小澤征爾さん 音楽を身近に親しまれた世界的指揮者

NHK水戸の貴重な映像から振り返る
  • 2024年02月21日

 

指揮者の小澤征爾さんが亡くなったことを受けて、世界中で悼む声が相次いでいます。小澤さんは、茨城・水戸の人たちにとって音楽を身近にしてくれた大きな存在でした。
小澤さんと、茨城との深い関わりを、関係者の証言と、NHK水戸のアーカイブスから振り返ります。
(NHK水戸 記者 清水嘉寛)

動画はこちらから

小澤征爾さんが館長と専属の室内管弦楽団の総監督を務めてきた水戸芸術館。

2月10日、献花台が設けられ、訪れた人が手を合わせていました。

「世界のオザワ」水戸に現る

水戸芸術館は、水戸市中心部の小学校の跡地に1990年に開館。

小澤さんは、専属の室内管弦楽団の音楽顧問に就任し、水戸芸術館のコンサートホールで、度々定期演奏会を行いました。

小澤さんが率いる水戸室内管弦楽団はヨーロッパでも公演しました。

2001年にパリで行われた公演の際には、現地のNHK記者が取材し、「約1400人が豊かな音色を堪能した」と伝えています。

小澤さんは、当時、水戸市でのインタビューで指揮者になったきっかけについて次のように話したこともありました。

小澤征爾さん 2005年のインタビュー
中学生の時、毎週土曜日にピアノを習って真面目にやっていて、音楽家になろうと思っていたんだけど、ラグビーも大好きで先発選手だったの。公式戦でやられちゃったんです。踏まれて、両方の人さし指を(骨を)折っちゃって。全然ピアノできなくなって、音楽辞めるかどうかって話になったときに、豊増昇先生が、日本人に指揮者があまりいないから、やってみたらどうかと言われてやったんです。

ホルン奏者が語る 指揮者としてのすごさ

40年来の親交がある、水戸室内管弦楽団の楽団員代表で、ホルン奏者の猶井正幸さん。

小澤さんのアイコンタクトをめぐるエピソードについて話してくれました。

猶井正幸さん 水戸室内管弦楽団の楽団員代表・ホルン奏者
僕は、実は臆病者で、小澤さんの目を見るのが怖かったのですが、小澤さんは必ずアイコンタクトをするんです。目が合わなかったらよく捕まるんですよ。そこで、小澤さんに「きみ、こうしたらいいんじゃないかな」と言われる。「こうしなさい」とは言わないんです、いつも提案みたいな形で。

猶井正幸さん 水戸室内管弦楽団の楽団員代表・ホルン奏者
その目を見ることでメンバーも小澤さんもどれだけ近づいていくのかっていうことを実感した。「これがオーケストラか」っていう。高圧的じゃなくて、いつも「だよね?」と。表情とか、小澤さんの人となりが全部混ざりあって、音楽の音符の裏側のことまで、僕たちに見てもらおうとするんです。「こんな世界があるんだ」というのを何回も経験しましたね。


「水戸の人たちに芸術を身近なものに」

小澤さんは、2013年には水戸芸術館の館長と水戸室内管弦楽団の総監督に就任。

小澤征爾さん 2013年水戸芸術館館長就任の記者会見で
芸術ということばは日本語で書くと難しく聞こえてしまう。
この芸術館があることによって、水戸の人たちになるべく、そうならないように、身近な音楽とか芝居にしてもらいたい。

その言葉通り、小澤さんは、音楽を身近に感じてもらうための数々の取り組みを進めてきました。

2004年から毎年開かれた子どもたちのための音楽会。

水戸市の茨城県立武道館に約2200人の小中学生が集まりました。
この音楽会は水戸室内管弦楽団の恒例行事となり、去年、18回目が行われています。

さらに、こんなことも。

2005年、水戸室内管弦楽団の演奏を千波湖の湖畔の大型スクリーンで約4000人が楽しみました。

演奏が終わると、サプライズで小澤さんたちが登場。

小澤さんが観客に挨拶し、楽団のメンバーがその場で演奏を披露しました。観客たちは大喜びでした。

水戸の人々に親しまれ

たびたび水戸市を訪れた小澤さんは、地元の人たちに親しまれました。
当時、こんな取材も。

水戸芸術館のすぐそばに小澤さんがたびたび訪れたそば店がありました。NHK水戸の取材スタッフがたずねると、注文の電話がかかってきました。とりそばを5人前、芸術館の楽屋に届けてほしいというのです。

店の主人がそばを大事に運んで、無事に出前が終了。

芸術館近くの居酒屋にも演奏会のあと、楽団のメンバーと一緒によく訪れていました。

居酒屋店主 黒澤千里さん
懐が深く、誰とでも仲良くなれる人でした。強いお酒が好きでした。店にいるときは小澤さんはメンバーを大切にしていて、皆でリラックスした様子でした。

その人柄もあわせて、茨城の人たちに一流の芸術を身近なものにしてくれた小澤さん。

水戸室内管弦楽団の楽団員代表、猶井さんは、死去の知らせを受け、小澤さんの自宅を訪れ、対面したということです。

猶井正幸さん 水戸室内管弦楽団の楽団員代表・ホルン奏者
すごく安らかにいかれたようで、お顔を見ていてもすごく穏やかな顔で、すごくきれいなお顔でした。本当に涙が止まらなくて、最後のお別れですから小澤さんに誓うような感じで、「あとは任せてください」と心の中で言いました。

 

猶井正幸さん 水戸室内管弦楽団の楽団員代表・ホルン奏者
小澤さんの遺志を継いでいくつもりなので、いかに若い人たちに伝えていくか。僕らはそれを経験させてもらってすごく良い思いをさせてもらったので、若い人たちも経験してもらいたい。

  • 清水嘉寛

    水戸放送局 記者

    清水嘉寛

    地方紙の新聞記者を経て令和4年入局。 ロシア人指揮者のゲルギエフとウィーンフィルの来日公演に魅了され、 ピアニストは辻井伸行さん、フジコ・ヘミングさんが好きです。 水戸でクラシック好きな方に出会うたび、室内管弦楽団が この町に根付いていることを実感します。

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