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同性パートナーと子育てをする女性34歳が、自分たちのような家族の姿があることを伝えたくてVR空間に飛び込んでみたら…自分の悩みを話せる場所の大切さに気づいた/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。

参加者の1人で、同性パートナーと子育てをするリラさん(34歳/仮名)。パートナーシップ制度を使って同性パートナーと“家族”になり、精子提供を受けて子どもを出産しました。しかし、女性の親2人子1人の3人家族であることを、周りに打ち明けられないでいると言います。VRでの交流を経て、いったい何を感じ取ったのか、取材しました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 松田 真奈)

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同性パートナーと“家族”になるものの…同性と子育てする悩み

『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。同性パートナーと子育てをするリラさん。結婚から出産、子育てに至るまでの思いを話しました。

リラさん

「自分はいわゆるパンセクシャル(あらゆる性別の人に対して恋愛感情や性的関心を抱く人)で、男性ともつきあってきたんで、男性と結婚するんだろうなとは思ってたんですけど、24歳のときに、今のパートナーとインターネットで知り合いました。私にとって必要な人になってしまったので、性別関係なしにこの人がいいなって思って結婚を意識しました。ただ、私は物心ついたころから子どもが好きで、絶対絶対に産みたいという気持ちがありました。私の思い描いてた理想の家族像では、同性パートナーと一緒に子育てするっていう形ではなかったので、もう完全に想定外で、別れるか別れないかの話はあったんですけど、そのときの葛藤はすごかったです」

リラさん

「でも2人で話し合って、精子提供を受けて子どもを授かることができると知り、29歳のときにパートナーシップ制度があるところに引っ越して、家族になりました。その後、精子提供者を自分で探して、3年前に子どもを産みました。ただ、パートナーが子どもをちゃんとかわいがれるかっていう不安を抱えていました。生まれてからは一切ないみたいなんですけど、『自分は他人だから』みたいな言い方をしてたんです。やっぱり遺伝子的なつながりをどこかで意識してたので、『自分は他人、いつか他人って言われるんじゃないか』っていう恐怖とか、生まれるまではあったみたいです」

今は家族3人で仲むつまじく過ごしていますが、自分たち家族のことをなかなか他人には言えないでいると語ります。

リラさん

「友達は、本当に親しい2人しか知らないです。職場も結婚したことにしてもらって、普通に男性と結婚して、子どもを産んだとみんなには思われてます。保育園は、シングルマザーとして、通わせてます。パートナーはお母さんにも言えてない状態です。家族の話をするときにどうしてもちっちゃなウソを重ねていくことが多くて、そういう場面で、ストレスだったり、罪悪感だったり…。自分の家族を紹介するときに、『何人家族?』って聞かれて『うちは3人』ぐらいのテンションで『うちは同性パートナーで女2人で育ててるんです』って、自然に家族の話ができる環境になればいいなと思っています」

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。リラさんには、プロジェクトエイリアンの世界はどのように映ったのでしょうか?

リラさん

「自分みたいな家族がいることを知ってほしいと思って参加したんですけど、自分の想像を超えた人たちが集まって、すごく刺激になって楽しかったです。同性パートナーと生活しているということを誰かに伝えるのが、自分の中で大きな抵抗があったのですが、最初の方で打ち明けてみると、みんなすごい明るく反応してもらったんでホッとしました。 ここだとウソをつかなくてもいいんだって思えて、家族の話も普通にしたいなと思いました」

家族についてそれぞれ悩みを抱える4人での対話。それぞれと言葉を交わしながらリラさんは自身の“エゴ”を改めて思い出したと語りました。

リラさん

「ご家族から虐待を受けていたというぶりあださんが、『自分には子どもを育てられる自信がない』と話していたときに、出産に当たってすごい葛藤があったことを思い出して。産むのは親のエゴ、私のエゴ。同性パートナーじゃなかったとしたって、子どもを産むのは産みたい人のエゴでしかないっていう結論にたどり着いて。だからもし子どもに『なんで産んだんよ?』みたいなことを言われたら、『それは申し訳ないけど、私が産みたいから産んだ』って。で『あなたは自分で幸せになってね』っていう。手伝いはするから、やっぱり『あなたの幸せは、自分で自分の道を行ってね』って言おうとは思っているんです」

リラさん

「今回参加した4人、虐待を受けて家族と絶縁した人や、宗教2世の人、犯罪を犯した夫との関係に悩む人…。やっぱり生まれてきたのは、みんな絶対勝手に親が産んだので、ここの4人、誰も…自分では性別も環境も選んで生まれてきてないけど、これからどうして生きていくかは、自分で選べると思ったんですよね。なんかそういう“自分の幸せ”にシフトしていった方がいいんじゃないかなって思えました。今回、同性パートナーの自分たちに子どもがいることを、どう思いますか?っていうのを初めて聞けたので、やっぱり話してもいい空間というか、話せる場があるっていうのはいいなと。すごく気持ちが楽になりました」

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

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この記事のコメント投稿フォームから番組への感想やリラさんへのコメントをお待ちしています。

みんなのコメント(1件)

感想
鯛焼き
60代 男性
2023年11月14日
同性パートナーと子育てをする家族の姿があることを知っていましたが、悩みを聞いたのははじめてです。お子様に聞かれた親指と人差し指の話は、ドキッとしました。同性パートナーとの子育ては大変だと思いますが、同性パートナー 女性二人で子育てしていると笑顔で言える時代がきっとくると思います。「リラ」さんご家族の今後を応援しております。