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サラリーマンとして働くゲイ44歳が、何事も本気になれない自分を変えようとVR空間に飛び込んでみたら…「のど自慢」 に応募していた/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。
「男は結婚して一人前、子どもを持って一人前」。父親からそう言われて育ってきたと語る参加者の1人ダイゴロウさん(44歳/仮名)。中学生の頃に自分がゲイであることを自認したダイゴロウさんは、同級生から「口調が女性っぽい」、「クラスの女性と仲が良くて鼻につく」といじめを受け、何事にも臆病になってしまいました。
本気で何かを成し遂げられる人間になりたい…自分を変えるラストチャンスだと思って“VR空間”に飛び込みました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 中村 貴洋)

プロジェクトエイリアン “分断”が進む社会をVR×エイリアンアバターで解決!? 全く新しいドキュメンタリー番組!

2023年3月23日(木)午後10:45~11:30(NHK総合)
👆 放送から1週間 NHKプラスで見逃し配信

変わるキッカケを探し続けて…たどり着いたのがVR空間

プロジェクトエイリアンの番組映像

NHKの開発番組『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。この番組の存在を知ったとき、ダイゴロウさんはぜひ参加したいと感じたそうです。

ダイゴロウさん

「普段から変われるキッカケが欲しくて…本当に悩んでいたんで。人生44年生きてきてやり遂げたことが無いのが悩みというか、何か決めてやろうとするけどなぜか長続きしなかったんです。だから、自分を変えるためのキッカケ探しをしたいなと。44歳ですし、ラストチャンスだと思って参加しました」

ダイゴロウさんは中学生の頃に自分がゲイであることを自認しました。同級生からは「口調が女性っぽい」、「クラスの女性と仲が良くて鼻につく」といじめを受け、それを機に生きづらさを感じ始めたといいます。

ダイゴロウさん

「いじめられた経験から初対面の人を、敵か味方か、みたいな見方から入るようになってしまいました。それまでは目立ちたがり屋で生徒会長も務めたり、歌が好きで歌手になることも夢見ていたんですけど、本気になって何かをやり遂げることに臆病になってしまい、いつの間にかその夢も諦めていました」

カラオケで歌うダイゴロウさん
(今でも歌うことだけは好きだというダイゴロウさん。幼い頃は歌手を目指していたが、いつの間にかその夢も諦めていた)

自身のセクシャリティと父親への“負い目”

ダイゴロウさんは、これまで、自分らしく生きていく術として、受け入れてくれそうな相手であればできるだけカミングアウトするようにしてきたといいます。父親にもいつかカミングアウトしたいと思ってきましたが、昔父に言われた言葉が妨げになっていました。

ダイゴロウさん

「自分と父の関係は、水と油みたいな関係で、会えばケンカばっかり。今はもう距離を置いているんですが、そんな父でも尊敬できる部分は一つあって。父は仕事で土建業を経営していたんですよね。それはやっぱりスゴいなって素直に思っています」

川沿いを歩くダイゴロウさん
(身内の中で唯一父親にはカミングアウトをできていないというダイゴロウさん)
ダイゴロウさん

「父にはいつかカミングアウトしたいと思っているんですが、受け入れてくれるかが不安で。昔、父に言われた言葉がずっと引っかかっているんです。“結婚してはじめて一人前、子どもができて人間として一人前”だと、ずっと言われてきたんですよね。やっぱ…結婚というプレッシャーをずっと背負ったまま生きてきて。ただ、やっぱり無理なものは無理ですし…そこで人生ってなんなんだろうって思ってしまったんです」

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

今回番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。収録は全部で2回、1回目では相手が何者かわからないなかで距離を縮めてもらい、2回目では自分の素性を他の参加者に開示。先入観なしの交流はダイゴロウさんにとってどう映ったのでしょうか?

ダイゴロウさん

「見た目でのイメージが先行しないので、勝手にイメージを想像しながらコミュニケーションを楽しめました。キャリアウーマンなのかな?って思う人がいたり、どんな過去があったんだろうって考えたり。ただ、自分自身は変わりたいって気持ちで参加したけど、1回目の収録が終わって、今日から変わります!というのは難しかったです。相手の属性もわからないままでしたし、探り探りって感じだったので。でも、それぞれの属性がわかって話すようになってから、いろいろと感じることがありました」

そんな中、ダイゴロウさんにとって、特に“気づき”となったのが、参加者の1人どてさん(31歳)の存在でした。

どてさんのアバターと後ろ姿

身体障害者で車いすユーザーのどてさん。ダイゴロウさんとは対照的で、やりたいと思ったことは何でもチャレンジする精神の持ち主。彼女からの言葉がダイゴロウさんの心を動かし始めました。

ダイゴロウさん

「どてさん(身体障害者/31歳女性)に言われた言葉に引っかかって。“やろうと思ってできないのは、自分が本気でやりたいことではないんじゃないの?”って言われたんです。正直今までも好きなことをやろうと決めてやってきたという自負があったので、どてさんの言葉に対して反発したい気持ちもあったんです。けど…結果的に続かない、できていないってことは、周りからそう見られても、言われても、仕方のないことだなって思いまして。どてさんに言われてはじめて気づいたんですが、自分自身どこかでダメ出しというか、指摘されたい気持ちもあったんだって思ったんです。自分への起爆剤みたいな言葉というか。そういってくれる人が周りにいなかったっていうのも大きかったのかもしれないですけど、その一言に自分自身を見つめ直すことができました」

収録から2週間たって、変化したこと

収録から2週間後、改めてダイゴロウさんにお話を聞いてみると…
ダイゴロウさんは自分自身を見つめ直し、小さな一歩を踏み始めていました。

ダイゴロウさん

「始めから自身の甘えが原因と分かっていたとはいえ、どてさんが障害を抱えてもポジティブに生き、挑戦の人生を送られている事に勇気をもらえましたね。それに触発されて今までできなかった一歩を踏み出すことができました。小さなことですけど、まずは資格を取ろうと思って勉強を始めたんです。今まで勉強本を買っただけで全く手をつけていなかったんですが、ちゃんとやってみようと。万が一VR上でもいいので、再会できたら少しでも成長した姿を見せたいし、報告したいと思いました。」

ダイゴロウさん後ろ姿
ダイゴロウさん

「それと、子どもの頃からずっと好きだった“歌”をもう一度純粋に楽しもうと思いまして。収録後にネットで調べたらちょうどNHKのど自慢の募集があったんですね。歌が好きであることを純粋に楽しんでみようと思ったので、思い切って応募しました。本選に出られるまで挑戦し続けようと思っています。今疎遠になっている父も歌が好きだったので、もしかしたらテレビで見るかもしれないですし。父には大好きな歌を歌っている姿を見てもらって、元気だよってことは報告できればいいなと思っています」

カラオケで歌うダイゴロウさん

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

プロジェクトエイリアン “分断”が進む社会をVR×エイリアンアバターで解決!? 全く新しいドキュメンタリー番組!

2023年3月23日(木)午後10:45~11:30(NHK総合)
👆 放送から1週間 NHKプラスで見逃し配信

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みんなのコメント(2件)

感想
鯛焼き
60代 男性
2023年3月26日
ダイゴロウさんのお話をお聞きし、ユーモアセンスある明るい方との印象を受けました。歌がお上手でビックリしました。イジメの経験談をお聞きし。私の幼少期、ダイゴロウさんのような方がクラスにいらっしゃったら、同様のイジメに加担していたのではないかと思わされました。家庭内や社会全体で考えなくてはいけない(変えていかなくてはいけない)課題だと感じます。資格試験への一歩(チャレンジ)、凄いです。また、あの歌(声)の実力があればNHKのど自慢 本選への出場は叶うと思います。テレビ画面越しにお会いできる日を楽しみにしております。お父様がご視聴していただければいいですね。
提言
かとう
40代 男性
2023年3月24日
たまたまこの人はゲイということでしたが、日本にはどうやって生きていけばよいか悩む「孤独なおじさん」が凄く多いと思うんですよね。
私もそうですが。
そのような人が再び生き甲斐を感じられるようになってゆけばよいと思います。