「遺贈寄付」必要な準備は?注意点は?専門家に聞きました
「人生の最後に社会貢献 遺贈寄付で思いを残したい」。
自分の死後、遺産をどうするか? いま選択する人が増えているのが、「遺贈寄付」です。
子どもなど家族に相続するのではなく、NPOなどの団体に寄付するというもの。
独身で相続人がいない人だけでなく、子どもがいる人の中にも遺贈寄付を選ぶ人がいます。
(「クローズアップ現代」取材班)
増える「遺贈寄付」とは 能登半島地震でも・・・
遺贈寄付とは、亡くなった後に残る財産を相続人以外の団体などに寄付を行うことです。
その件数は右肩上がりに増えていて、令和3年には973件、総額約278億円にのぼっています。
遺贈寄付は、今さまざまなところで活用されています。
能登半島地震の被災地で医療支援活動を続けているNGOも、遺贈寄付があったからこそすぐに活動できたと話します。
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稲葉基高医師
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「私たちの団体では、遺贈寄付をいただく件数が年々増えています。能登半島地震の際にも地震発生から3時間後にはヘリコプターが能登に出発しましたが、そのヘリコプターの維持費や現地に持ち込んだ医療備品なども遺贈寄付で支えられています。災害が起きると多くの寄付をいただきますが、実は普段からお金が必要です。遺贈寄付といった、思いのこもったお金で次の災害に備えることができています。」
実際に「遺贈寄付」を行うには 4つのステップ
それでは、実際に遺贈寄付を行うにはどうすればよいのか?
遺贈寄付の相談事業や普及活動を行う日本承継寄付協会理事長で司法書士の三浦美樹さんにお話をうかがいました。
-「遺贈寄付」にはどんな特徴がありますか?
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三浦美樹さん
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「遺贈寄付には、生前に行う寄付と比べると、亡くなった後に残った財産から寄付をできるため、老後の資産の心配をせずにできるというメリットがあります。また、資産家の人がするものだという印象を持っている人もいるかもしれませんが、寄付額に下限はありません。1万円など少額からでも寄付を残すことができます。」
-「遺贈寄付」を実際に行うにはどうすればよいですか?
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三浦美樹さん
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「遺贈寄付を行うためには、主に4つのステップがあります。
① 相続人と財産を把握する
まずは、ご自身の相続人が誰なのかを把握し、どんな財産があるかを確認しましょう。配偶者は常に相続人となり、子、親、きょうだいの順で相続人となります。相続人がいない場合は、国庫に帰属します。
② 自分の財産の行き先を決める
整理した財産のうち、なにをどれだけどこの団体へ寄付するのかを考えます。自分の思いを見つめ直し、共感する団体を選ぶことで満足度の高い遺贈寄付につなげることができます。不動産や全財産まるごと寄付がしたい場合は、受け付けているかどうか事前に寄付先に相談が必要です。
③ 遺言書を作成
相続人に寄付を頼んでおくことも可能ですが、確実に実行するためには遺言書の作成が有効です。遺言書には公証役場で作成する「公正証書遺言」と、自ら手書きで記す「自筆証書遺言」があります。遺言執行者を選任しておくことでトラブルを防ぐことにも繋がります。遺言書は司法書士や弁護士などの専門家に相談して作成することをおすすめします。
④ 遺言執行者が手続き
ご逝去の連絡を受けた遺言執行者は相続財産の状況を調査し、相続人や寄付先へ連絡をして手続きを行います。」
-家族とのトラブルを防ぐために気をつけるポイントはありますか?
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三浦美樹さん
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「自分の財産ですので遺贈寄付の指定は自由にできますが、子どもなど相続人の「遺留分」という法律で守られた相続財産の最低保証額に配慮した慎重な配分が必要です。兄弟や甥姪には遺留分がありません。詳しくは専門家に相談すると安心です。
遺贈寄付は、次の世代への贈り物としてだれもができる社会貢献であり、人生最後の自己実現の方法でもあります。思いが循環する社会になるのではと思っています。」
寄付先に悩んだら・・・どこに相談できる?
寄付先が決まっている場合は直接問い合わせてみるのもよいでしょう。大きな団体だと、遺贈寄付の窓口があるところもあります。どんな種類の寄付が受け取ってもらえるのか?寄付をしたとしたらどのように使われるのか?事前に確認しておくと安心です。
また、寄付先を選ぶところから相談したい場合は、遺贈寄付の相談事業を行っている団体に問い合わせてみてはどうでしょうか。
■日本承継寄付協会
■全国レガシーギフト協会
■日本財団
■各地のコミュニティー財団や社会福祉協議会(地域によって異なります)
ほかにも、遺言信託を担う信託銀行や、クラウドファンディング企業なども遺贈寄付の相談事業を行っています。ご自身の状況に合わせて選ぶとよいでしょう。
自分の財産の行く末を考え準備しておくことは、自分自身にとっても、残された人達にとっても重要なことです。大切な財産を誰にどう残すのか。一度考えてみてはどうでしょうか。