相次ぐスーパーの閉店で私たちの栄養が大ピンチ!? 日々の食事を見つめ直すチェックシート
“全国でスーパーが次々と閉店し、生鮮食品へのアクセスが困難となる・・・”
そうしたことが食生活の偏り・必要な栄養素の不足につながることが懸念されています。
バランスの良い食事は健康の第一歩。
でも、バランスが良いか悪いかって、どうすれば分かるの?
そんな疑問を解決できるのが、栄養学の専門家が開発した「食品摂取多様性スコア」というチェックシート。やり方はとっても簡単で、10品目のうち1週間で「ほぼ毎日食べたもの」にチェックするだけです。
このシートを使って日々の食事を見つめ直してみませんか?
(クローズアップ現代取材班)
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所要時間は30秒!食品摂取多様性スコアをつけてみよう
1週間の食事を振り返って1から10までの食品の中で、ほぼ毎日食べる場合は「1点」。そうでない場合は「0点」で合計を出します。
「毎日」が単位なので、例えば1日3食の中で、1食でも該当する食品やその食品を使った料理を食べていれば1点です。反対に「2日に1回食べる」「週に1,2回食べる」は「ほとんど食べない」と同じで0点となります。
なお、炭水化物を多く含むごはんやパンといった主食は、毎日食べることを前提としているため、このチェックシートには含まれていません。
理想は7点以上、3点以下は要注意!
1週間の食事を振り返ってみて、あなたの点数は何点でしたか?ここからは栄養学が専門で、同志社女子大学教授の今井具子さんと東京都健康長寿医療センター研究所の横山友里さんに解説して頂きます。
―「合格点」は何点でしょうか?
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横山さん
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体の機能や筋肉・体力の維持には最低でも4点以上、できれば7点以上が理想です。
私が所属する研究所が作成する一般向けの資料では、7点以上を「すばらしい」、4~6点を「もう一息」、3点以下は「要注意/がんばろう」と表現して普及啓発を進めています。
―そもそもですが、なぜ10品目バランスよく食べる必要があるのでしょうか?
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今井さん
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それぞれの品目が含む栄養素には個別の役割があり、互いに助け合って体をつくり、動かしているからです。
例えば炭水化物を多く含む米や小麦などの穀類、いもや油を使った料理ばかり食べていても筋肉を動かすエネルギーは確保できますが、その筋肉は肉や魚介類、大豆・大豆製品が多く含むたんぱく質でできています。そして緑黄色野菜や海藻類、果物が多く含むビタミンやミネラルは炭水化物やたんぱく質を体に利用するために必要な栄養素です。
そういう相互作用があるため、バランスの良い食事が大切なんです。
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横山さん
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バランスの良い食事は、食べる量が減る傾向のある高齢者にとっては特に重要です。私たちの研究チームが65歳以上の男女約1000名を4年間調査した結果では、食品摂取多様性スコアが高い人ほど、握力や歩行速度など日常生活に欠かせない身体機能の低下リスクが抑制されていることが分かりました。
また加齢に伴う筋肉量や筋力の減少、いわゆるフレイル(虚弱)の予防にも7点以上のバランスの良い食事を続けることが有効であることが分かってきています。
一方で私たちの研究チームが実施する調査では平均が2~3点の場合もあり、「食事のバランスには気をつけている」と自負していた人が、実際にスコアをつけてみると7点に及ばないケースもみられています。
高齢者が特に意識すべきはたんぱく質
―10品目の中で特に意識して食べるべき品目はありますか?
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今井さん
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フレイルの予防でいえば、関連が強い栄養素はたんぱく質です。従って高齢者は特にたんぱく質を多く含む肉や魚、大豆製品は意識して食べるようにするとよいと思います。中でも肉は、良質なたんぱく質がバランスよく含まれています。
お年寄りの中には「肉は硬くて食べられない」という人もいますが、そういう場合は総菜として、そぼろや柔らかいハンバーグなどを購入してもいいかもしれません。
―このスコアシートでは「1週間ほとんど食べない」場合も、「2日に1回は食べる」場合も0点となってしまいます。食べる頻度はどう考えればよいでしょうか?
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横山さん
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加点方法を決めるにあたって、予備分析を行っています。その際「ほぼ毎日」と「2日に1回」の双方に1点を与える場合と、「ほぼ毎日」のみ1点を与える場合でほぼ同じ結果となったことから、食生活改善を推進する上でできるだけ簡単な評価方法になるように、最終的に「ほぼ毎日」のみ1点を与える方法が選択されました。
一方でフレイル予防の観点からは、一週間ほとんど食べないよりは2日に1回でも食べるほうがよいという調査報告もあります。
コンビニ弁当も上手に利用!食事の雰囲気づくりも大切
―高齢になると「料理が面倒になる」という声もよく聞きます。何か良い対策はありますか?
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横山さん
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まずは、このスコアシートで自分の一週間の食習慣をチェックし、食べ方のクセを知ることが第一ステップとして重要かと思います。コンビニのお弁当も敬遠することはありません。ポイントは多様な食品が入っている弁当を選ぶするようにすることです。
また、食パンにスライスチーズ、のり、しらすなどの具材、マヨネーズをのせてチーズトーストにしたり、豆腐にきざみのり、ツナやかにかまぼこをのせる、インスタント味噌汁に乾燥わかめをいれる、お総菜のポテトサラダを購入する、魚や肉の缶詰を利用するなど、コンビニでも揃えられる食材で簡単に食品群を増やすことができます。
高齢期は少量でも多様な食品を摂取することが重要になるため、摂取していない食品群を+αでちょい足しする工夫や意識が食習慣の改善の一歩になるかと思います。
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今井さん
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私が調査研究で出会うお年寄り、特にひとり暮らしの方の中には、食べること自体が「面倒だ」「楽しくない」という人も少なくありません。行政やボランティアの方、あるいはそうした親を持つお子さんは、お年寄りと一緒に食事をする機会を是非増やして頂ければと思います。
私のゼミでは、ある地域で行われているひとり暮らしのお年寄りを招くサークルに参加しています。サークルでは学生が作った食事を一緒に食べ、レクリエーションや体操も行います。参加したお年寄りからは「きょうはいつもよりもたくさん食べられた」「食事がおいしく感じられた」という声をいただきます。
楽しく会話をしながらの食事は、栄養素の吸収が良くなるともいわれています。食事をすることに対しての雰囲気やモチベーション作りも「バランスの良い食事」には欠かせない要素だと考えて頂ければと思います。
―貴重なお話、ありがとうございました。
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