認知症の人の行方不明を防ぐために・・・
去年、認知症やその疑いで行方不明となった人は延べ18,709人となりました。国の推計では認知症の人は2060年まで増加傾向にあり、私たちがこの問題と向き合うことは避けられません。行方不明をふせぐためのポイントを専門家の監修のもとでまとめました。
(「クローズアップ現代」取材班)
安心・安全に外出し続けられるための2つの「備え」を
行方不明は認知症の診断前や、まだまだ一人で外出できる認知症の初期段階で多く発生しています。「行方不明は他人事」「まだ、そんなことは起きない」などと油断せず、少し物忘れが増えてきている段階からの「備え」が肝心です。
ただし「外出は危険」と、家族や周囲が本人の外出を止めるのは逆効果。本人が外に出たい意欲や外出できる力を維持しながら、安心・安全な外出を続けられるような「普段からの備え」と、いざ所在がわからなくなった時に素早く探すための「SOS時の備え」をしておきましょう。
① 普段からの備え
つながりを増やす、認知症であることを周囲に伝える
近所の人や友人、よく立ち寄るお店の人などに普段からあいさつし、日頃から気にかけてもらえるようにしましょう。もはや認知症を隠す時代ではありません。あたたかく見守りあおうという地域の人やお店などが全国どの市町村でも増えています。「認知症があるけれど、よろしく」と本人や家族が伝えることで、見守ってくれる人の輪が広がっていきます。
ヘルプカードを作って、普段から持って外出を
認知症になると、ちょっとしたストレスで道に迷ったり、混乱したりとパニックになりやすく、それが行方不明につながります。買物やATM、外出先でちょっと手助けしてもらえれば、混乱せず無事に一人で家に戻れることが多くあります。本人がやりたいこととちょっと周囲に手助けしてほしいこと、連絡先などをあらかじめ書いて持ち歩く「希望をかなえるヘルプカード」の活用が広がっています。「持たされる」のではなく、普段からの備えとして、まだまだ元気な人が自分でつくって安心・安全な外出を続けています。道に迷った時、カードがあったことで、行方不明を防げた実例も多く報告されています。
使用例やカードのダウンロードなどはこちらから
https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/detail_391_center_1.php ※NHKサイトを離れます
② SOS時の備え
事前に「SOSネットワーク」に登録する
ちょっとした道迷いが起き始めている場合は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に連絡し、「SOSネットワーク」に事前登録しておきましょう。普段から行政の人たちへの相談がしやすくなり、ゆるやかに見守りをしてもらえます。いざ本人の所在がわからなくなった際に通報がスムーズにでき、行政と警察、協力機関など、多くの人たちが連携して早期の発見につながりやすくなります(全国で7割以上の自治体で整備されています)。
行方不明になったら・・・「すぐ通報!」が命を救う
認知症の家族の姿が見えないと思ったら、躊躇せず、なるべく早く警察に通報して下さい。「SOSネットワーク」に登録している場合は、その旨も伝えましょう。警察庁によると、行方不明者の77.5%は受理当日、99.6%が1週間以内に所在確認されています。
みんなでSOS時に備えよう
気になる人を街中で見かけたら、声をかけてあげて下さい。ポイントをまとめました。
「見守り・声かけ訓練」を行っている自治体もあります。お住まいの地域で実施していれば、この機会に参加してみてはいかがでしょうか。
認知症の人たちが安心して外出できる社会を目指して、みんなで備えて「お互い様」の社会を作っていきましょう。
行方不明・身元不明の方について 情報提供をお願いします
番組などで取材した行方不明の方々の情報はこちらです。お心当たりのある方は、ぜひ連絡をお願いいたします。
監修:永田久美子さん
認知症介護研究・研修東京センター副センター長 学生時代から認知症の人と家族を支援する活動と研究を続けてきている。厚労省、経産省等の研究事業の委員も務める。