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NHK×日テレ 本音トーク「これからの、テレビとジェンダー」<前編> Vol.34

きょう10月11日は世界中の女の子たちに平等で、より幅広い機会を確保しようと国連が定めた「国際ガールズ・デー」。この日にあわせてNHKと日本テレビ(以下、日テレ)が局の垣根をこえ、「ジェンダーとテレビ」についてオンラインで対談しました。ゲストはタレントのりゅうちぇるさん!若い世代のインフルエンサーで “自分らしく生きる”ことを大切にしています。

NHKは「#BeyondGender ジェンダーをこえて」、日テレは「Talk Gender もっと話そう、ジェンダーのこと」を掲げて、それぞれジェンダーの課題と解決の手がかりとなる情報を積極的に発信しています。

ジェンダー・ギャップを埋めるためにテレビにできることは何か。両局の制作者たちが番組の舞台裏や思いを交えて話し合ったオンライン座談会の内容をお伝えします。<中編はこちら><後編はこちら>

(編成局展開戦略推進部 #BeyondGenderプロジェクト班)

NHKと日テレ “ジェンダー” 発信の取り組み

小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター(以下、小西(日テレ『news every.』キャ スター)

NHK×日テレ スペシャルトークセッション『これからの、テレビとジェンダー』進行を務めます、日本テレビ報道局解説委員小西美穂です。スペシャルゲストのりゅうちぇるさん、よろしくお願いします。

りゅうちぇるさん(以下、りゅうちぇる)

よろしくお願いします。なんかまだ日テレなのかNHKなのかよくわかっていないんですけど。普段ライバルですよね?視聴率とかすごく競っているイメージだから、なんかきょうは“仲良しこよし”できて楽しいですね

小西(日テレ『news every.』キャスター)

私たちも楽しみなんです。この座談会の様子が配信されるきょう10月11日は、国連が世界中の女の子たちを力づけようと制定した「国際ガールズ・デー」なんです。りゅうちぇるさん、知っていました?

りゅうちぇる

「国際女性デー」は知っていたんですが、「国際ガールズ・デー」もあるんですね。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

そうなんです。今回この「国際ガールズ・デー」に合わせてNHKと日本テレビのテレビ制作者がジェンダーや女性をめぐる表現について普段どんなことを考えて番組を作っているのか、そしてこれからどんなふうに良くしていけるのか、一緒に楽しく考えようということなんです。

りゅうちぇる

僕わりとNHKも日テレもめっちゃ出ているんです。日テレさんとNHKさんにすごく僕好かれているんです。夢のようです(全員・笑)。

(NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)
小西(日テレ『news every.』キャスター)

実はですね、今回この画期的な試みが実現したのにはいろんな経緯があるんです。まずNHKでは去年秋から「#BeyondGenderジェンダーをこえて」プロジェクトを開始したんですよね。

野崎瑛理子・NHK制作局ディレクター (以下、野崎(NHKディレクター)

はい。NHKを背負ってご説明させて頂きます。「#BeyondGender」というのは報道番組や教育番組など、さまざまなジャンルの番組が連携しているプロジェクトです。具体的には、女性や男性の人権を含む男女共同参画や、性の多様性、性教育などジェンダーをめぐるさまざまな課題やその解決の手がかりとなる情報を発信しています。

また今NHKが全局で取り組んでいる「NHK・SDGsキャンペーン」とも連動しています。来月11月は集中月間です。福岡局、新潟局などNHKの地域放送局を含めてジェンダーをテーマにした番組を積極的に放送していく予定です。

(NHK「#BeyondGender最新番組情報」より)
小西(日テレ『news every.』キャスター)

そして日本テレビに参りましょう。日本テレビでも今年2月に有志メンバーでジェンダー・チームが発足したんですよね。

長谷部真矢さん・日テレ報道局プロデューサー(以下、長谷部(日テレ プロデューサー)

今年は何かとジェンダーに関する問題がニュースで扱われることが非常に多くて、 みなさんの意識も高まった時だと思います。そんな中で私たち日本テレビでも報道局を中心にジェンダー関連のことに興味がある人たちが有志で集まってジェンダー・チームを立ち上げました。メンバーが報道局中心なんですけど、アナウンサーだったり他の部署も横断的に集まって活動しています。活動内容としては勉強会を開いたり情報共有とか取材したりオンエアに繋げたりと幅広くやっています。

この秋から「Talk Gender(トーク・ジェンダー)もっと話そう、ジェンダーのこと」というスローガンを掲げ、これからもっと積極的に発信していきたいと思っています。

(日本テレビ ジェンダー・チームのみなさん)
小西(日テレ『news every.』キャスター)

私もこのジェンダー・チームに参加しています。こんなふうにジェンダーで(NHK、日テレ)それぞれが活動しているんです。

りゅうちぇる

わりと最近そういう社会の流れになってきたのかなと思うんですけれど、やっぱり世代によってバラバラだったり地域によってバラバラだったり。この認識みたいなものは若干差があるなって思うんです。そんな中で大きいメディアがこういうふうに取り組みをしていくと、より広がりやすいし、すごくすてきな試み、活動だなと思います。

小西(日テレ『news every.』キャスター

ありがとうございます。でも長谷部さん、NHKに比べると日本テレビはまだまだ始まったばかりですよね。

長谷部(日テレ プロデューサー)

そうですね。本当に試みとして歩き始めたばかりで。この会をもうけさせていただくきっかけになったのもNHKさんのまねをしたくてというか、お手本としてどんなことをしているのか教えていただきたくて訪ねていったことがきっかけで。その中で意気投合して「ぜひ一緒にやろう」というふうになったので、今回たくさん学ばせていただけたらと思っています。野崎さん、松田さんも番組ももちろん作っていますし取材もたくさんされているので、そういったことを聞けたらなと思ってとても楽しみにしています。

野崎(NHKディレクター)

恐れ多いです。よろしくお願いいたします。

松田伸子・NHK報道局記者(以下、松田(NHK記者)

私たちも探り探りやっているので、ぜひ一緒に考えていきたいと思います。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

きょうのディスカッションを通じて、私たちテレビというメディアが未来の世代を担う女の子たち、男の子たち、性別に関わらず あらゆる方々にも希望と可能性を届けていけるように、いい気づきをたくさんシェアしたいと思います。

どう思う? “ジェンダーとテレビ” みなさんの声

(NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)
小西(日テレ『news every.』キャスター)

この座談会に先立ちまして、NHK「#BeyondGender」プロジェクトでは「どう思う?“ジェンダーとテレビ”」と題してアンケートを実施しました。どんな声が届いたのか見ていきましょう。

20代 女性 滋賀県

違和感があるのは「女社長」とか、「女子高生YouTuber」のように、女性の場合だけ「女」という名詞がついているのを見たとき。

10代 女性

コメンテーターの男女割合が男性の方が多い番組が多く、女性目線として少しずれていると感じることが多々ある。(最近だと「生理と貧困」の問題)

20代 男性

男性が筋肉を見せつけてそれを美ボディともてはやすメディアの姿勢が非常に差別的だと感じます。

30代 男性

いろいろな性を知ることが必要と思います。もっといろいろな性のトーク番組を増やしてほしいです。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

こうした声、いかがですか?

りゅうちぇる

それこそ お友達どうしとかではわりと話しやすいことって多いじゃないですか。すごく筋肉のある男性を、友達だからこそ 2人の関係性をわかっているからこそ「かっこいいね」とか褒め合うこともある。それを大きいメディアを通じて言ってしまうと、「あ、こうやって人に普段から言っていいんだ」みたいな感じに、知らず知らずの植え付けみたいなものが生まれてくるのかなと思う。やっぱり そういうところは意識してテレビという大きいメディアは発信していかないといけないんだろうなとすごく思いますね。

松田(NHK記者)

コメンテーターが男性が多いというご指摘、本当にそうだなと思っていて、意識して直そうとしているんですけれど、まだまだだなというところがあります。しかも10代の女性の方がこのご意見をくださったと思うと、やはり しっかり取り組んでいかなくてはいけないなと思います。

大井秀一・日テレ『news zero』総合デスク(以下、大井(日テレ『news zero』総合デ スク)

いただいたコメントの中で「『女性社長』とか『女子高校生』みたいな何か特定の職業とか役割で女性が付いていることをことさら取り上げているんじゃないか」というのは結構グサッときましたね。近いところで言うと、ちょっと前だったら理系の女性「リケジョ」と言って取り上げていたこととか。別に女性が理系であることが珍しいわけではないですし、何かを取り立てて性別によって不必要に取り上げることというのは「ああ、やっちゃったな」と思うことはありますね。

生理の貧困 取材で見えてきた実態

小西(日テレ『news every.』キャスター)

たくさん興味深い声をいただいて制作者として耳が痛いなと思うことも多かったわけですが、まずは私たちメディアの主な役割である「伝える」という視点を入り口に「テレビとジェンダー」について考えていきましょう。

NHKの松田さんは報道記者として「生理の貧困」や「緊急避妊薬=アフターピル」など、若い女性の身体や健康に必要な情報を取材して発信してこられましたよね。まず生理の貧困の企画でどんなことを伝えられましたか?

松田(NHK記者)

経済的な理由で生理用品が買えない、買うのが難しいということはこれまであまりマスメディアでは取り上げられてこなかった問題だと思うんですね。そこに着目して実際に困っている当事者の女性とか、どれくらいの人が困っているのかというNPOの調査結果、生理用品を配布する支援をしてきた団体などを取材をして その動きを伝えました。

(左:NHK「WEB特集」より 右:NHK「みんなでプラス」より)
松田(NHK記者)

「生理の貧困」というと経済的に困っている方のことかなっていう印象を持たれるかと思いますが、経済的に苦しい家庭だけでなくて、親が厳しかったり、親が生理を汚いものというような扱いをして子どもに教えていたり、シングルファザーの家庭だったりすると生理がきたこと、初潮を迎えたことを言い出せないということもありました。そこで生理用品にアクセスできないという女性も結構いることがわかりました。

例えば、ネグレクトを受けていた女の子は生理が来たことを言えずに1年以上トイレットペーパーで代用していたというケース。やっと林間学校があったときに学校の先生が気づいて親に言ったというようなケースもありました。さらに生理痛で学校や授業を休んだり遅刻をしてしまったり、生理が原因でいろんな苦労をしている女性が多いということがわかりました。調査ではおよそ半数の女性がそういった困難を抱えていることもわかってきたんです。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

そういう中で特に若い女性に伝えたいことは何でしょう?

松田(NHK記者)

苦しい、つらい、しんどい思いをしてきた女性の方たちにお話を聞かせていただいたのですが、生理用品がなかったり生理痛がつらかったりということを「これはしょうがないことだ」「当たり前のことだから、これくらい我慢しなきゃ」「自分で何とかしなきゃ」と思っている方は多いなと思ったんですね。

そうではなくて、「おかしいことはおかしい、嫌なことは嫌だと思っていいんだよ。それを言ってもいいんだよ」ということを伝えたいなと思います。そして、言ったあなたを私たちはサポートするし、「あなたはサポートされるに値する存在なんだよ」ということに気づいてほしいなと思って、そういったメッセージを伝えたかったです。私たちもその声をしっかり受けとめて、寄り添っていくっていう姿勢を伝えたいなと思いながらやっていました。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

伝えた後に何か手応えはありましたか?

松田(NHK記者)

この報道の後に国、自治体、企業に動きがあったというのがうれしいところでした。学校とか公共施設のトイレに生理用品を無料で置く、すぐ使えるようにトイレの個室などに置くという学校もあったりするんですね。それが今 全国に広がっていまして、全国で600ぐらいの市町村で無料配布などの政策が始まっています。

生理・アフターピル テレビはどう伝える?

小西(日テレ『news every.』キャスター)

報道することで問題解決に向けて少しでも前進するというのは記者にとってはすごくうれしいことですよね。声を拾っていくというのもテレビメディア、テレビ報道の大事な役割の一つです。

りゅうちぇる

僕は5人きょうだいの末っ子で、お姉ちゃんが3人いるんです。すごくありがたい環境だった。3タイプそれぞれの生理痛を小さい頃からお家で見ていたんです。なので僕、ぺこりん(りゅうちぇるさんの妻)と最初おつきあいしたときも、「生理痛はいろんなタイプがあるから、しっかり ぺこりんも ぺこりんの生理痛も理解しよう」という土台作りができていたなって。本当に環境が良かったなと思うんですね。

だけど女きょうだいがあまりいなかったり、あまり性教育に対して親が取り組まれていない、世代的にもそういう家庭も絶対にあると思うんですね。よくナプキンの広告とかでブルーのお水で表現されていたりとかするじゃないですか。だから生理のときの血はブルーだって、青色だって勘違いしている男友達もいたぐらい、本当に女きょうだいの中で育たないとそういうことも生まれる。

だけど誰が悪いかって言ったらその男の子じゃなくて、教育現場もそうなんですけど、大きいメディアでどんどんそういうジャンルの番組とか、取り組みみたいなものをもっともっといろんなところで取り入れていく必要もこれからはあるんじゃないかなと思いましたね。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

りゅうちぇるさんの話を聞いていると、やはり男性も正しく知ることが大事なんだなと思います。アンケートでこんな声もあったんです。

(NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)
30代 女性 千葉県

女性の問題をただ取り上げるだけではなく、それを変えるために男性には何ができるのか、心ある男性へのヒントを投げかけ続けてほしい。

りゅうちぇる

そうですね。たとえば男性が女性と一緒に働いていて、仕事仲間の人にどうやって声をかけたらいいのかとか。女性の心もあるじゃないですか。「すごく心配されたい」とか「ちょっと気づいてもらうだけで、ほっておいてほしい」人もいれば、「心配してほしい」という人もいて。ほんとにタイプによって違う。「生理痛きついよね」と男性に言われても「気持ち悪い」と思う女性だっている。

男性もいろいろ考えすぎてどうやって声をかけたらいいのかとかそういうところも全然わからない。それって人にも聞きづらいし、調べたところで本当に偏った意見が出てきたりしたら大変なので。「いろんな方にいろんなタイプがいるんだよ」ということを、恥ずかしいことじゃないから どんどんいい時間になるために発信していくのもアリだなと思いますね。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

大井さん、『news zero』でも生理の貧困って伝えてましたよね。

大井(日テレ『news zero』総合デスク)

そうですね。まさに伝えたときの悩みとしては、これをやっぱり女性だけの問題にしちゃいけないんだっていうところを一番考えました。普通だったら女性の側からの意見というものを伝えることが多いと思いますが、やはり男性の、うちの出演者、解説担当の人が「生理の貧困」の問題を伝えて。松田さんもおっしゃったとおりで、女性がいろんな立場、教育や社会で活躍するチャンスにも関わるような、そういうのを失いかねない問題なんだというのは女性だけの問題でなくて、男性にとってもすごく悲しいことだったり、大きな損失だったりっていう。本当に男性にとっての“自分ごと”にしてもらうことがすごく大事だなと思って伝えましたね。

アフターピルなんですけど。『news zero』 に嵐の櫻井翔さんも出演されているんですが、実は番組の中でアフターピルが薬局でちゃんと販売できるようになるべきなのかどうかという取材を櫻井翔さんにしていただいて伝えていただいたこともありました。やはりアフターピルの問題も女性だけではなくて、性行為、性交渉というのは男性ももちろん関わることですので、男性も正しく知っておくことが大事ですよね。いかに男性の問題意識として捉えてもらうかということを『news zero』 として本当に悩みながら伝えました。

長谷部(日テレ プロデューサー)

私自身は何か番組で発信したりとかしたことはまだないんですが、2人の小学生の娘がいまして、性教育が始まる前だけど知識は入ってきて、生理用品であればもちろんCMで見たりスーパーで見たり、家では私のものを見たりとか。そうするとやはり「これはなに?」とか「赤ちゃんはどこからくるの?」とか、そういうことをちょっとずつ質問してきてくれて。すごく大切なことだし、そう遠い将来じゃなくて結構近い将来 彼女たちに関係してくることなので説明したいなとは思うんですけど。

学校でこれからどういう性教育を受けるか、学校の方針だったりとか、子どもどうしで多分そういう話をしたときにお友達の保護者がどういう考えであるかとかがつい頭をよぎって。私もいろんなことをオブラートに包んでしまうことがあってよくないなとは思っている、どうしていいかわからないと悩んでいます。

だからメディアみたいな多くの人が触れるところでちょっとそういうハードルを下げて、家庭の中でもうちょっと話題にできるようなきっかけがあると、私だけではなく母親だけでなくて父親だったり周りの男性だったりとかと一緒に話ができるきっかけになっていいなと思う。

先程りゅうちぇるさんがおっしゃっていましたが、本当に生理一つとっても女性みんな違うので。私は私の生理しかわからなくて、娘はどういう生理を迎えるか もちろんわからないので。たくさんの情報をフラットに知り得る機会があったらいいなと思います。

野崎(NHKディレクター)

私は小学生から中学生ぐらいを取材することが多いのですが、子どもたちが言っているのは人間関係が学校か家庭しかない。「なんか おかしいな、嫌だな、困っているな」と思ったこともやはり言えないという。これがずっと課題だなと感じているので、さまざまなメディアで、親とか先生とか いろんな人が正しい情報を伝えて、みんなで「応援してるよ」「君、あなただけじゃないよ」ということを伝えるのはすごく大事だと思いました。

(続きは「NHK×日テレ 本音トーク<中編>」Vol.35をご覧ください。)

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