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NHK×日テレ 本音トーク「これからの、テレビとジェンダー」<後編> Vol.36

ニュース、ドラマ、バラエティ、アニメ…。テレビでのジェンダーの表現や描き方をどうすればいいか。NHK「#BeyondGender」プロジェクトのアンケートに寄せられた みなさんのご意見を交えて、日テレとNHKの制作者たちとりゅうちぇるさん(タレント)が一緒に考え、語り合いました。10月11日の国際ガールズ・デーに合わせて開かれたオンライン座談会の内容をお伝えします。<前編はこちら><中編はこちら>

出演者・制作者の多様性は…

(NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)
小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター(以下、小西(日テレ『news every.』キャスター)

出演者のジェンダーについてアンケートでこんな声がありました。

20代 女性 愛知県

ニュース番組のアナウンサーの組み合わせで、比較的年齢の高い男性と若い女性が多いことに違和感を持っています。男性がリーダー的、女性が補助的役割を担うイメージに縛られていないでしょうか。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

同じような声が本当にさまざまな世代から多数寄せられているんです。ここで日本テレビの大井さんに聞きたいのですけれども『news zero』は出演者の女性の比率が比較的高い番組だと思うのですが、どんなことを考えて番組作りに取り組んでいますか?

大井秀一・日テレ『news zero』総合デスク(以下、大井(日テレ『news zero』総合デ スク

『news zero』のことだけで言うと超ラッキー番組でメインキャスターが有働由美子さんという女性で すごく経験を積まれた方がいらっしゃるんです。加えて、「年上の男性が何かみなさんに教えてあげる」みたいな番組にはしたくないと思っています。

例えば(自分が曜日デスクを務める)水曜日は僕が話を聞いてみたいなとか、こういう人に意見を言ってほしいなという人を集めたら、レギュラー出演者6人中5人が女性だったりとかして。あまり「男性だ、女性だ」だということではなくて、やはりこの人の話を伝えたいなと思うこと、そういう人に出演していただくことがすごく大事だなと制作者としては意識していますし、思っているところです。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

番組出演者の男女比でいうと、海外の英BBCでは「50/50」(フィフティー・フィフティー)という取り組みがあって、番組に出演するキャスターや記者や専門家たちの男女比を50%ずつにすることを目指す取り組みを続けていたりするんですよね。女性の割合を増やすことで多様な意見に光を当てたり、多様な声をすくい上げるという目的があって。それが結果的にはこの内容を豊かにしたり、多様にしたりする効果があるという意見なんです。

野崎瑛理子・NHK制作局ディレクター(以下、野崎(NHKディレクター)

番組の最初のルール作りの場に多様な人が参加していることはすごく大事だと思います。『u&i』でいうと学校向けの教材番組なので、現場の学校の先生や特別支援・障がい者支援の研究者を入れて一緒に作っています。専門家の みなさんの男女比は半々です。先ほど大井デスクがおっしゃられたことと全く一緒で、誰もがありのままでお互いを尊重できるということについて真剣に考えている方々とつながってお願いした結果、いわゆる男女比率が半々になったという感じです。

松田伸子・NHK報道局記者(以下、松田(NHK記者)

すばらしい大井さん、野崎さんのお話を伺った後に私たちニュースの現場でどれぐらいできているのかなって思っていたんですが、番組のゲストが複数のときは男女比を考えますが、まだまだ「専門家に聞きました」というようなときは男性が多いなと思います。変えなくてはいけないということで考えると、(出演者の)男性女性だけじゃなくて「他の性の方はどうなのか」「障害がある方がほとんどいない」「年代も偏っている」など、いろんな偏りが見えてきて、男女だけではない多様性も考えていかなくてはいけないと思います。

りゅうちぇるさん(以下、りゅうちぇる)

やっぱり一番おもしろい番組っていろんな人が出ている番組だと思うんですね。それはニュース番組でも絶対そうです。だから僕は男性なんですけど、年齢差的にすごい大物MCの方と2人でロケしていて、すごく教えてもらっている感じがあまりにも映りすぎるとなんとなくこういう“植え付け”みたいになっちゃうのかなと思います。

それなので僕も僕で「これは違いますよ」とかしっかり自分を持つみたいなのはすごく大切にしています。そういうふうに女性でも男性でも自分を大切にするっていうことができると、なんとなくバランス的に見られるようになるというか。

それはニュース番組でもそうで、人に合わせるというのは時によってすごく大事だとは思うんですが、それを見て「あ、そうしなきゃ」と思っている人も多いから、わりと意識して発言したりというのは “出る側”としてはすごく大事かなと思ったりします。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

「いろんな人が出ている方がおもしろい」という りゅうちぇるさんの意見、すごく参考になりますね。“出ている側”としてもその方が楽しかったりしますか?

りゅうちぇる

絶対そうです。わかりやすくいうと、スーツを着た男性がいっぱい並ばれても、正直「ここまで聞こう」とか思いにくい。大きいメディアは「何か聞きたいな知りたいな」というきっかけ作りがすごく大切だと思うんですね。その中にはいろんな人がいる多様性だったり、全然 今までの番組と違うイラストの使い方、性にとらわれないだったりとか。そういうところで(視聴者が)「あ、なんかこの番組 信頼できる。何かすごくすてき。新しい感じ」とか、番組やその雰囲気をもっと知りたいと思う「きっかけ作り」が本当に大切と思います。

「テレビが変わるには?」みなさんからのヒント

小西(日テレ『news every.』キャスター)

ここからテレビとジェンダーの未来に向けて考えていきます。アンケートの声をいくつかご紹介いたします。

30代 女性 東京都

ジェンダーのバランスや、人種、LGBTQ+を当たり前のように、自然と描いてほしい。

30代 女性

多様性やジェンダーへの配慮が満点の番組をいくつか作るだけでなく、その他ほとんどの番組の赤点ぶりをせめて50-60点くらいにしていただきたい。

40代 男性 北海道

教育の世界でもそうですが、「今までこうだったから」のノリで進めてしまうと少数の意見を排除してしまうことにつながります。

20代 男女以外の性

(テレビが変わるために必要なのは)こうした意見を募るプラットフォームだと思います。基本的なことだと思いますが、視聴者の意見を無視しては よい番組はできないと思います。

20代 男女以外の性

伝える内容に一つ一つ誠実であることが、結果として 誰にとっても見たいテレビになるのかなと思います。私はいわゆる若い世代の人間ですが、テレビを見ることが好きなので、テレビ業界の未来に期待したいです。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

いろんな声をいただきました。最後にテレビ制作者のみなさんが思い描く「これからのテレビとジェンダー」についてお聞きしていきたいと思います。

長谷部真矢さん・日テレ報道局プロデューサー(以下、長谷部(日テレ プロデューサー)

気をつけているつもりでも私の中にもバイアスがあったり “思い込み”は多分強くあって。なのでそれをもちろん表現しないように、そのためにいろんな人の意見を聞くということ、まず私たちが多様性を持つことがとても大事だと思うので意識していきたいと思います。

私は「そらジロー」メンバーのマネージャーもしていることもあって、「にじモ」のキャラクターはLGBTQの当事者がチームのメンバーにいて その声を聞いて誕生したんです。多様性を持っていることやそういうことをすごく特別視したいわけではなくて、先程りゅうちぇるさんもおっしゃっていましたが、「普通なんだ」「自分たちの周りに普通にいるメンバーなんだ」ということを、例えば子どもとか次世代の人たちに当たり前な感覚で表現できたら、それを頑張りたいと思っています。

大井(日テレ『news zero』総合デスク)

最後に紹介していただいた視聴者のみなさんの意見、本当にどれもそのとおりだなと思いました。きょうこれをご覧になってる方は、「ガールズ・デー」だからもしかしたらこういうことに関心のある女性の方の割合が高いのかなと思うんですが、自分も男性ですし、男性がここにめちゃくちゃ関心を持って見て、こういうのを「自分として当たり前のことだよね」と思える世の中にしたいと思いますし、それはテレビができることなんじゃないのかなと。

いろんな人が、不特定多数の人がふとした瞬間に触れる機会があるテレビだからできることはある
のかなと思うので、『news zero』で頑張っていきたいと思います。

野崎さんと一緒に番組とか、同じテーマでやったら何かおもしろいことができるんじゃないかなと思いました。何かやりたいですね。お願いします。

松田(NHK記者)

大井さん、ぜひNHKのニュースともコラボを(全員・笑)。私はやっぱり娘のことも考えてですね、子どもとか若者がこれまでの固定観念に縛られて翼を折られてしまわないようなテレビにしていきたいなと思っていて。りゅうちぇるさんみたいに「好きなものは好き」「嫌なことは嫌」と言ったり、「何かを変えたい」と思った時にすぐ行動できたりするような、その時のための勇気とか言葉を見つけてもらえるような報道をしたいなと思っています。

「生理の貧困」や緊急避妊薬の取材をする中で、当事者の中に「あ、こんなことを人に初めて話しました」「自分の経験を初めて語りました」という人が結構多いんですね。そういうこれまで埋もれてきた声、「心に引っかかってきたけれども(言えなかった)」などの埋もれた声を取材して、集まった共感を蓄積して、しっかりとデータで見えるようにして伝えていきたいなと思います。そうすることで社会が少しは良くなるのかなということがあるんだなと思います。見ていただいている みなさんにNHKのツイッターとかご意見募集のページなどに声を寄せていただいて、一緒に作っていきたいなと思います。

野崎(NHKディレクター)

大井デスクと松田さんに全部言われてしまったので、言うことがございませんが(全員・笑)、専門的に取材をしている部署の方とか、日テレというものすごい人気の民放さんといろんな意味でちゃんと組んで、新しい子ども番組を作ったりとか、作るだけではなくて、それをもとにいろんな世代とか、いろんな違う人どうしで、例えばざっくばらんにいろんなモヤモヤについて考えたりするようなイベントですとか。本当にみんなで一緒に考えていくということをぜひやっていきたいと思っています。ありがとうございました。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

りゅうちぇるさん。NHK×日テレの特別トークセッションのスペシャルゲストとして加わっていただいたんですが、いかがでしたか?

りゅうちぇる

まずこんなすてきな機会に僕なんかが参加させていただけて本当にうれしかったです。僕も今テレビに出ている理由は「こんな生き方があっていいんだ」「こういうパパがいていいんだ」「パパなのにメイクしていいんだ」とか。自分で言うのもなんだけど「かわいくパパでいていいんだ」みたいな。そういう感じで思ってもらえたらうれしいなというか、一つずつそういうみんなが「自分らしく生きる」きっかけ作りになれたらいいなって思う。自分がそうじゃなくても僕みたいなタイプの方と出会ったときに「あ、りゅうちぇるみたいなタイプだ」とかで、「自分自身もりゅうちぇるみたいなタイプ」って言いやすかったりとか。そういう誰かの生きやすいきっかけや理由とかになれたらいいなと思っているんですね。

(NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)
りゅうちぇる

僕、きょう個人的にすごくうれしかったことがあって。きょう(枠の)縁が 男の子でパパなのにピンクなんですよ。こういうことってやっぱり僕がずっと僕でいつづけたから、スタッフさんもなんとなくそれをわかってくれて。「りゅうちぇるでピンク」みたいにしてくれたというのは僕自身こういう小さいことがすごくうれしいんですね。

これをみんなに見てもらって少しずつ少しずつ「あ、これが当たり前でいいんだ」とか、自分の中でずっと思い描いていた固定概念が変わるきっかけになる。そういう人でいたいなと より強く思いました。そして 何かまた一緒にお仕事しましょう。

小西(日テレ『news every.』キャスター)

ありがとうございます!やはりこうして多様なメンバーが集まるというのは同じような集団で集まっているよりもいろんな意見が出て、時には摩擦とかが出るんですけれども、やっぱりそこからクリエイティブなものが生まれるんだなって、本当にきょうのセッションで実感しました。

NHKは「#BeyondGender」そして日本テレビは「Talk Gender」を通じてこれからも女の子も男の子もすべての人が自分らしくいられるための情報をそれぞれに発信していきますので、ぜひ みなさんチェックしてください。

そして りゅうちぇるさんもお声かけいただきましたが、次回またやりたいですよね?どうでしょう みなさん?やりたい人は拍手(全員拍手・笑)。ありがとうございます。 みなさんぜひやりたいと思います。ではまたお会いするその日まで、さようなら!

(その他の「NHK×日テレ 本音トーク」は<前編>Vol.34<中編>Vol.35をご覧ください。)

※NHK×日テレ「これからの、テレビとジェンダー」の動画はYouTube日テレNEWS
https://youtu.be/UHZnx7xBYDAでご覧いただけます。

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みんなのコメント(1件)

かに
40代 男性
2021年10月13日
記事の後半にある、多くの人々の意見を集めることの大切さについては同感です。近頃は、バラエティーだけでなく、報道番組でもスタジオ内の出演者の反応だけを追いかけさせられている印象があるんですよね。ジェンダーについて考えるなら、スタジオ内の出演者よりも、番組の視聴者たちが様々な立場を越えて視聴できるようにすることが先ではないかなと思うのですが。