親には 話せない…
11月27日(水)放送の「まさか家族が被害に… 身近に潜む性暴力」は、被害を親に打ち明けられずにいる子どもたちの苦悩について伝えます。
国の調査(内閣府・2018年)では、無理やりに性交などされた人の約6割が、「誰にも相談していない」と答えています。また、「相談した」と答えた人のうち、「家族」に打ち明けた人の割合は、「友人・知人」を下回っています。
なぜ被害について家族に打ち明けづらいのか。「当事者の気持ちを、家族や周りにいる人たちに知ってもらえれば」と取材に応じてくれたアヤカさん(仮名)の思いを、記事と動画で届けます。
※この記事では、性暴力の実態を伝えるため、被害の具体的な内容に触れています。フラッシュバックなどの症状のある方はご留意ください。
(クロ現+ディレクター 飛田陽子)
“話さない” のではなく “話せない”。親だからこそ…
“性暴力を受けてから10年以上、被害について一度も両親と直接話したことがない”という、大学生のアヤカさんです。
アヤカさんは、小学生のとき 数年間にわたって、近所に住む同じ小学校の男の子から、一緒に遊んでいるときに体や性器を触れられる被害を繰り返し受けていました。とても苦痛に感じていましたが、相手に「誰にも言うな」と脅されていたため、また、“親に心配をかけてしまうかもしれない”という思いから、家族にも誰にも打ち明けらず、一人で耐えていたといいます。
「子どものときから、親とは仲がよかったのですが、被害のことは言えませんでした。加害者は近所の男の子で、親も含めて家に招くような家族ぐるみの つきあいもありました。だから、私が被害に遭っていることを言ったら、大ごとになってしまうのではないかと気にしていたんです。」
家族が被害について知ったのは、アヤカさんが小学4年生のときでした。一人きりで背負い込んできた苦しみに耐えきれなくなり、アヤカさんは学校に講演に来た いじめ防止団体のスタッフに相談したのです。急きょ、両家族の両親と学校の間で話し合いの場が設けられました。そして、その日以降、被害に遭うことはなくなりました。でも、アヤカさんの心と体はずっと傷ついたままです。10年以上たった今でも、電車などで隣に男性が座ると、緊張して全身がこわばってしまいます。また、恋愛に前向きになることもできず、いつか自分が結婚して出産することさえ想像できません。さらに、つらいのは、これほど長い間 被害の影響に苦しみ続けていることについて、両親と真正面から話すことができずにいることだといいます。
「たまに何も事情を知らない妹が加害者の男の子ことを話題に出すことがあります。すると、両親はそんな子は知らないというように振る舞って、話を濁す(にごす)んです。私に気を遣ってくれているんだと思います。私は私で被害について話せない。お互いの心を平穏に保つためには、何事もなかったようにしているのが一番いいのだと思います」
“話せるようになる日まで 時間をください”
11月11日。アヤカさんは、性暴力のない社会をめざして声をあげる「フラワーデモ」に参加しました。毎月11日、被害に遭った人たちが自らの体験について話をするこの集会に、アヤカさんが参加するのは3回目。この日は、家族に「映画を見に行って来る」と伝え、自宅から離れた会場を訪ねました。そして、自らマイクの前に立ち、被害に遭った人たちの家族や、そのそばにいる人たちに向けて、自分の思いを語りました。
インタビューで、“お互いの心の平穏を保つためには、何事もなかったようにしているのが一番いい”と話していたアヤカさん。この先 被害について家族と話してみようとしたとき、アヤカさんの思いが温かく受けとめられることを、願ってやみません。
まさかの事態に巻き込まれてしまったとき、子どもたちは、親や大人が思うよりもずっとずっと強く、“打ち明けにくさ”を感じているのだと、今回の取材で痛感しました。子どもにとって家族は 一番近い存在であるからこそ、被害を打ち明けたときに、“ショックを受けてしまうのでは…”と心配したり、“どんな反応を返されるのだろう…”と不安になったりしてしまうのではないかと思います。そのことを、心の片隅に置いておくだけでも、いざ子どもが“話したい”と言ってきてくれたときに、その言葉にしっかり耳を傾けることができるのかもしれません。
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