記者会見・インタビュー
2011年6月13日に行われた、NHKスペシャル「未解決事件」の記者会見。
実在する読売新聞の記者を演じた上川隆也さんが、ドラマや事件についての想いなどを語りました。
すべてが本当であるということですね。どのディティールをとって見ても「真実」から作り上げたドラマである。その重みはワンカットワンカット感じながら演じておりました。同時に、事件発生から27年たった今、お伝えできることが新たにあるという驚き、それを役者としてお伝えできるという喜びというようなことも感じながら演じさせていただきました。とにかく見ごたえのある作品になっていると思いますので、しかも予定していた時間より随分と増量されてお得サイズになっていますので(笑)、どうぞ最後まで楽しんでいただければと思います。どうぞよろしくお願い致します。上川隆也
    interview
実際の「グリコ・森永事件」への印象や思い出と、具体的に演じる喜びについて教えてください。
あくまで一般人の域を出ていなかった当時の僕にとっては「どえらい事件」であったと同時に、目が離せない事件だったと記憶しています。劇中で加藤記者が告白しているように1つ1つの挑戦状にとってみても、言葉は悪いですが、「読み応え」があるんですよね。ですから当時も、「この事件は次にどういう風な展開を見せるんだろう」という思いにかられたことも覚えていますし、自分自身今までにない目で新聞を眺めていた、そんな日々だったと思います。
自分が事件をあくまで一般市民として目の当たりにしてきたからこそ、こうして今役者になって、演技していること生業としている今、自分がその事件の中に入って追体験できるということはある種役者の特権でしょうし、NHKさんだからこそできる"突っ込んだ"新事実の開示についても、表現として適切かはわかりませんが、誰よりもそれを先に知ることができる、そういった面白みを、脚本を読む段階から体感できましたし、また自分の演技を通じてそれを視聴者にお見せすることができるというのは役者冥利につきますし、とにかく常に興奮しながら現場に臨んでいました。
一番最初に台本を読まれたときに感じたことは?
関西弁なんだ…(笑い)。
加藤記者が関西弁で話されているのを忠実に再現していますので、すべてのセリフが関西弁。ここまでコテコテに関西弁で演じたのは実は僕自身初めてのことでしたので、そこは楽しみでもあったし、1つのハードルだったように思います。
また、報道されていく事件の裏側、報道の内部での葛藤・衝突といったものが、いかにも生々しくて、本当に人と人が汗を流し、口角泡を飛ばしながら、競い合いながら一つの記事を作り上げていく過程や、結果みたいなものをまさに目の当たりにできたんですね。そんな脚本だったものですから、読んでいて高揚しましたし、このドラマに今後どのようなドキュメンタリーが付け加えられて、この作品の全体像となっていくのか。僕もその全貌はまだ知りませんので(笑い)、それすらも楽しみである、そんな脚本でした。
事件を描きながら、人間ドラマ的な要素が魅力的だと思うのですが、
夜回りのシーンとか、毎日新聞の記者との競争などありますが、特に印象に残ったシーンはどこですか?
まさに今おっしゃたことに要約されてしまうのかな、と思います。
加藤さんをはじめ、記者の皆さんは事件と戦いながら、横並びでも戦っているんですよね。その本来の姿を、このドラマでは赤裸々に描いていますし、オブラートにも包んでいないんですね。我々演じる読売の記者たちが、とあるミステイクからいわゆる記者クラブのボックスを閉鎖されてしまったときの、他社の記者の冷やかな目。扉に釘を打ちつけなければならないシーンでの他社の反応などは、とてもリアルだと思うんですね。そこは甘っちょろい感傷などが介入する場ではなかった…。
それから、記事を「すっぱ抜かれた」ときの心情や反応。また、横並びで戦っているライバルは同時に戦友でもある。そういった、人間ドラマとして欠かしてはいけない大切な一面もこのドラマではご覧いただけると思いますし、人同士の「融和」がそこにかしこに息づいているドラマだと思います。
(実際の)加藤記者と、事前にどれくらい会われて、役作りにどれくらい活かされましたか?
また、事件記者を職業として選びたいと思われますか?
大阪で、実際に事件に使われた場所の1つである河川敷の倉庫でロケをした際に、本物の加藤さんにお会いしたのですが、実際にお会いできたのはその1回だけだったんですね。加藤さんは、事件記者というお仕事の過酷さについて、決して多くを語る方ではなく、話に尾ひれをつけて話をする方でもないので、トツトツと自分のしてきたことを話して下さったのですが、そうしたお話の一端からでも十分その苛酷さを伺いしることができましたし、とんでもない(笑い)お仕事だと思いました。
特に参考にしたことと言えば、加藤さんは27年経ってもいまだにグリコ・森永事件を追い続けていらっしゃる。そこまでモチベーションを維持することは生半可ではないと思うんですね。実際にその生半可ではない部分、実際に加藤さんにお会いすることがなければ伺いしることができなかったであろう、事件に対する「熱」みたいなものは受け取れた気がするんです。
僕は演じたといってもせいぜい何週間かの間しかこの作品に向き合うことしかできない。であれば、とにかく加藤さんが27年間向き合ってこられた「熱量」を一部分だけでも表現できれば、と思いました。実際加藤さんとお会いして、その熱量は頂いたと思います。
あと加藤さんが記事を書く際に、鉛筆をくるくると回すという癖は、実際にお聞きして演技に取り入れさせていただきました。ディティールとしては…。
事件記者という職業はどうですか?
帰れないんですよ、おうちに(笑い)。
その一点だけでも頭が下がる思いですし、僕にはとても無理だ、と思いました。